所長あいさつ

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2011年アラブの春以降、中東地域はそれまでとは異なる地政学で動き始めたと感じています。その中心となるのがシリアでの紛争でした。民衆が立ち上がった民主化運動で、政権は容易く変わるのではないかという時期もありましたが、結局、反体制派と体制派の紛争、ISILの誕生、暴力的な支配が長引き、シリア国外に逃れた難民は約570万人、国内においても約620万人(いずれも2018年12月現在、UNOCHA作成 Humanitarian Needs Overview 2019より)が未だに故郷に帰れない状況が続いています。現在は国土の多くはアサド政権支配下となり、戦闘は以前より落ち着いた状況となりましたが、これからの復興は長い道のりだと思います。シリアを取り巻く近隣国と欧米諸国とのパワーゲームも引き続き続いており、今度どのような形でこの国が進んでいくのか、注視していく必要があります。

JICAは2011年以前、水資源、電力、経済・産業振興分野で大きく貢献し、シリア国民にもよく知られた援助機関でした。水資源分野では国内の7つの流域のうち、ダマスカス周辺部等の2流域で水資源管理システムを構築し、また、無償資金協力により特にダマスカス市内及び近郊の送配水施設を建設しました。電力分野では、本邦企業の建設した火力発電所(計5か所)の総発電量は、合計2,380MWで、2010年のシリア全国の発電設備量(8,200MW)約30%を占めていました。うち、JICAは円借款で3か所(1,230MW、1,274.27億円)の建設を支援しました。

2011年4月に、安全上の理由から邦人関係者は退避しましたが、ダマスカスではナショナルスタッフが現場の砦としてJICA事業の灯を消さないよう奮闘しています。ヨルダンに移転したシリア事務所邦人職員は、遠隔で彼らを支えながら、ヨルダン、レバノンを行き来しつつ、復興ステージを見据えた支援も念頭に置いて、現環境下で可能な支援を日々模索/実施しています。また、シリア国内ではなく、ヨルダンやトルコと言った近隣国においても、避難してきたシリア難民も含めたホストコミュニティに対する色々な支援を行っていますし、シリア難民を日本に留学生として招き、将来の復興を担う人材になっていただく留学プログラムも3年目を迎えました。

これからも困難な日々がしばらく続いていくと思われますが、我々自身も希望を捨てずに、シリアの人々に寄り添って、未来を考えていきたいと思います。ご支援のほど、お願いいたします。

JICAシリア事務所長
宮原 千絵