所長あいさつ

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中国の西、アフガニスタンの北に位置し、世界の屋根と言われるパミール高原が国土の3分の1を占めるタジキスタンは、壮大な自然と様々な民族が織りなす歴史と文化を有する大変美しい国です。最高峰はサーマン朝のイスマイル・ソモニ(サーマーニー)の名を冠した「イスマイル・ソモニ峰」(標高7,495m)で、高山に堆積する氷河の雪融け水により、水資源が豊富な一方で、地滑り、土石流、落石、洪水等の自然災害が発生する原因にもなっています。

タジキスタンは、1991年のソビエト連邦からの独立以降、1992年から1997年までの旧ソ連諸国で唯一の内戦を経験しましたが、現在、国内を見渡す限り、その痕跡は全く感じられません。特に首都ドゥシャンベの発展ぶりは目覚ましく、新しいホテルやショッピングモールなどが続々と建設されています。

他方、2000年以降は年平均6~7%の経済成長を達成しているものの、未だに旧ソ連諸国内で最低レベルの経済水準に甘んじています。特に地方部では綿花の栽培などに偏重した計画経済から市場原理に基づく多様な経済への転換を図っている時期であり、人口増加に伴う若年層の雇用不足などから、ロシアなどの国外への労働移民は後を絶たず、GDPの3分の1に匹敵するほどの送金額に頼る経済構造から抜け出せていません。また、タジキスタンと長い国境を接するアフガニスタンの治安が未だに安定していないことが、大きなポテンシャルを持つ南アジアとの経済的な関係を強化できない要因となっています。

内戦終結後の2000年代の急速な経済回復を経て成長軌道に乗ったタジキスタンですが、現在でも市場経済の深化に向けた行政制度の改革や産業開発、ソ連時代に建設され老朽化したインフラの更新・維持管理、教育や保健医療など社会セクターの改善が引き続き課題となっています。タジキスタン政府はSDGsとも整合させた2030年までの国家開発戦略(NDS2030)を策定し、外国投資誘致や中小企業・起業家支援による民間セクター開発を通じた雇用創出に力を入れています。

JICAはタジキスタンに対して、独立後間もない1993年から協力を開始し、2006年に拠点を開設してタジキスタン政府の取り組みを支援してきました。2018年に策定した新たな対タジキスタン協力戦略の中では、NDS2030とSDGsの実現に貢献するため、従来からの協力に加えて、起業家育成・中小企業振興を通じた民間ビジネス活性化支援や、「守られかつ開かれた」国境の管理強化への協力を新たな方向性として掲げています。

1992年に日本との外交関係を樹立したタジキスタンですが、現在までに進出した日本企業がJV1社のみ、観光客を含む日本人の年間来訪者数が2016年度に延べ1,000名に達したばかりと、日本との関係は大いに発展する余地があるフロンティアです。2020年に発生した新型コロナウイルスの影響は甚大ですが、収束後にはタジキスタンを後押しする意味でも、引き続き日本からの来訪者や新たな日本企業の進出をJICAとしても積極的にサポートしていく所存です。

是非、皆様にタジキスタンにお越し頂き、手つかずの自然や多様な歴史や文化の息づくタジキスタンの魅力に触れて頂きたいと思います。

本ウェブサイトでは、タジキスタンにおけるJICAの協力方針や事業について紹介しておりますので、是非ご覧頂き、タジキスタンの開発について、共に考え、行動するきっかけとして頂けましたら幸いです。

2020年10月
JICAタジキスタン事務所長 高坂 宗夫