【ボランティア通信】待機中隊員からの報告

2020年12月18日

Hamjambo?こんにちは。
JICA海外協力隊の松井拓馬です。
私は、タンザニアはモロゴロ州、マングラ村というところにある小学校に派遣され、小学校教育隊員として活動していました。
新型コロナウイルスの影響で3月末に帰国してから、日本国内での活動を続けています。
そこで、今回は私の国内での活動とそこで感じたことを紹介させて頂きたいと思います。
主な活動は、1再派遣に向けての語学訓練、2地元での農業活動、3タンザニアでの体験をもとにした教材づくりです。

1.再派遣に向けての語学訓練について

タンザニアではスワヒリ語が使われています。私もタンザニアで活動をしていた頃は毎日スワヒリ語を使っていたのですが、帰国してからは使う機会がほとんど無くなり不安を感じていました。しかし、それと同時にスワヒリ語をもう一度学び直すチャンスだとも思いました。というのも、タンザニアに派遣されて半年ほどが経ち、スワヒリ語で生活することには慣れたものの、算数の授業を行う際に「多様な言い回し」ができる語彙力が必要であるという壁にぶつかっていたからです。帰国してからは、スワヒリ単語帳を自作し日常生活ではあまり使わなかったが、知っていると便利な単語、より正確な表現ができる単語を、驚きながら学ぶ日々が続きました。それに加えて8月からはJICAからオンラインレッスンが提供されることとなり、訓練所でもお世話になったタンザニア人の講師からマンツーマンの指導を受けることもできました。自分では気づかない文法的な間違いを指摘してもらったり、意味の似ている動詞をタンザニア人はどう使い分けているかなど、本当に丁寧に教えて頂きました。また、改めてスワヒリ語を使っている自分が好きなのだと再確認することができました。
今回のスワヒリ語を学び直す過程で少し考えたことがあります。それは、私の語彙の乏しさは私が村でよく話す人が限られていたことも原因の一つだったのではないかということです。私は配属先が小学校だったので子どもたちや同僚の先生たちとは、長い時間一緒にいて本当に色々な話をしました。それから、大家さんや近所に住む家族ともゆったりとした時間のなかでたくさん会話をしたことを覚えています。その反面、他の人たちとはどうだっただろう、と考えてしまいます。食堂のママやバイクタクシーのお兄さんたち、大工さんたちやお肉屋さんなど、きっとそれぞれの社会や個人で使う単語やニュアンスは違うだろうし、それぞれの社会でしか使わない単語だってあるかもしれません。そうしたことを学ぶためにも、たくさんの人と出会い、話してみたいと思っています!再派遣に向けて精進あるのみです。

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オンラインレッスンの様子

2.地元での農業活動について

私の地元は北海道の十勝地方で、畑作がとても盛んな場所です。そのため、国内での活動を考えた際に一番に農家さんのお手伝いが思い浮かびました。地元の農業協同組合からいくつかの農家さんを紹介して頂き、多種多様な作業に関わることができました。作業を通して、それまで全く知らなかった作物の生産過程を知ることができました。特に印象に残ったのは長芋生産過程でした。長芋は最も手間のかかる農作物の一つです。他の作物に比べて作業工程が多いからです。簡単に説明すると、最初に、長芋がまっすぐ成長するために溝の深い畝を作り、そこに種イモを植える。その後で畝に保温のためのビニールをかけ、一定の間隔で一本一本ポールを立ててその上からツルが巻くためのネットをかける。収穫期になると、ネットを降ろし、ポールを引き抜いて、ビニールを回収し、トラクターを使って掘り取り作業を近所の農家さんも集まって大勢で行う。これらの作業それぞれが本当に体力の使う作業でした。私が普段何気なく食べていた長芋は、本当に多くの人の仕事の結果であることを肌で感じることができたことは何よりの収穫でした。それからもう一つ、約半年間農家さんと一緒に働いて驚いたことがありました。それは農作業の多くの工程が「他者」なしに行うことができないことでした。裏を返せば、一人で行うことのできる作業が思っていたより少ないということです。このことは農家さんがよく言っていた「人があつまらんと仕事にならん。」という言葉に集約されていたのだと思います。日本では機械化が進み、もっと少人数で作業ができるはずだと思い込んでいた私にとってこのことは驚きでした。食料生産は結局、人の手にかかっている点は日本でもタンザニアでも同じなのかもしれません。

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長芋収穫の様子

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配属先の小学校の畑づくりの様子

3.タンザニアでの体験をもとにした教材づくりについて

今回の教材づくりは大学在学中にお世話になった先生から、「アフリカ」の文化や生活の実際について学べる具体的な事象を紹介してもらえないだろうかと依頼されてことから始まりました。
「アフリカ」と言っても私が生活していたのは、タンザニアにあるマングラ村という農村のみ。そのため、マングラ村の生活をできるだけ細かく想像できる方法は何かと考えました。そこで作成したのは「マングラ村の物価表」でした。村で手に入るものやそれにかかる値段を食料品、外食、交通費、ライフライン、衣類、衛生用品、文房具などの項目ごとに並べたものです。私はこの物価表を様々な状況設定をした上で使うと良いと考えています。例えば教科書でもよく目にする、「1日1.9ドル未満で生活している貧困の状態」に当てはめて考えてみると良いかもしれません。日本で1日1.9ドル未満の生活することを浮かべてしまうと「ギリギリおにぎりを2つ買える感じかな?」といった計算で終わってしまうことがあるかもしれません。しかし、マングラ村での生活の実際はそれとは大きく異なります。表を見て頂けるとわかるのですが(この文章の下の方に付けています)、1.9ドルで買えるものは意外と多くあることがわかると思います。そのため、村に住むお母さんたちは家計をやりくりして生活を成り立たせています。しかし、そこに急な出費(給食費の支払いの連絡がきた、都会に住む親せきが体調を崩したので急に行くことになった、子どもが病気にかかってしまった、など。これらは全て私が村で生活している時に起こったことです。)の設定を加えると状況は一変すると思います。前述したような出費があった場合に生活は急に苦しくなってしまいます。マングラ村ではそうした形で貧困が立ち現れていました。このように、日本に住んでいると想像することが難しいマングラ村の生活の様子を物価表から読み取ってほしいと思っています。
ただ、忘れてはならないのは、村人たちが急な出費に対してそれぞれのやり方で対処しようとする「しなやかさ」を持っているという点です。今月はお金が足りなさそうだからと言って、日曜市で布を売るという小さなビジネスを始めるお母さんがいたり、私がほとんど毎日行っていた食堂のお母さんは10食分を前払いしてくれないかと言っていました。最初は驚いてしまいましたが、よく考えてみると良いアイデアだと思いました。私はほとんど毎日行っているわけだし、毎回の会計も必要なくなる。ちなみにタンザニアの農村では小さなお店にはおつりがないことが多いため、村での会計は時間と労力がかかります。そのため、お母さんのアイデアは村の実情に適した素敵なアイデアだったのです。このような、村に住む人が持つ生活の知恵も伝えていけたら良いなと思っています。
ちなみに日本では、中学校で社会科の地理的分野の授業で「世界の諸地域」という単元の「アフリカ州」という項目で学ぶことになっています。また、公民的分野でも「よりよい社会を目指して」という単元のなかで、持続可能な社会の形成のために、貧困削減や経済の発展といった諸課題をアフリカの現状から学ぶことがあります。そのため、今回作成した「マングラ村の物価表」は上記の単元で使うことができる一つの資料だと考えています。
私がもう一度タンザニアで活動できるチャンスがあるのかはわかりません…。
しかし、タンザニアでの出会いや経験を生かせるように努力し続けたいと思います!!

Ninawashukuru watu wote ambao nimekukutana katika Tanzania.
Asante sana!