【ボランティア通信】協力隊活動が私に与えてくれた転機-保健医療分野への道

2021年11月15日

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2019年9月リンディの海岸にて撮影

本田 裕菜
任期:2019年4月~2020年3月
職種:コミュニティ開発
配属先:ムトワラ県庁マゴメニ郡事務所、(2019年12月より)ムクランガ県庁
任地:ムトワラ州ムトワラ県、プワニ州ムクランガ県
出身:神奈川県

協力隊活動の転機

協力隊員として最初に派遣されたムトワラでは、住民グループを対象に現金収入向上のお手伝いをしていました。派遣されてから数か月が経ち、いよいよ本格的な活動に取り掛かろうとしていた頃、地域情勢の悪化によりムトワラを急に離れなければいけなくなりました。せっかくムトワラの住民たちと仲良くなれたのにと落ち込んでいたのですが、ここで人生の転機が訪れました。実は派遣前にタンザニアのことを調べていた時、若年妊娠という社会問題があることを知り関心を持っていましたが、それまで実際の活動には組み込めずにいました。そのことを知っていたタンザニア事務所の担当者の方が、若年妊娠予防を含んだ学校保健の要請を探し「新しい任地では学校保健の活動をしてみない?」と提案してくれました。それまで私は保健分野に関連した活動をしていなかったので不安ではありましたが、思い切って挑戦してみることにしました。

私の学校保健活動

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栄養の授業中。栄養素表に食材を貼る生徒たち(2020年2月)

次の活動先ムクランガは、タンザニア一番の商業都市であるダルエスサラームの郊外にあります。タンザニアではそもそも保健の授業自体ありませんし、ムクランガ県でも毎年15人位は妊娠が原因で退学している中学生がいると聞きました。そこで中学生を対象に若年妊娠の予防や体の二次性徴、HIVなどの性感染症、生理などの性教育や栄養についてといった保健の授業をしました。若年妊娠には貧困の負の連鎖があると言われています。若い女子生徒が望まぬ妊娠をすると、タンザニアの法律で学校に通えなくなります。すると十分な教育を受けることが出来ずに良い仕事にも就けず、孤立化し、シングルマザーとして所得が低い中で子育てをしなければなりません。こうして貧困に陥りやすいため問題視されており、私は教育によって予防したいと考えていました。

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女子生徒に対して生理についての授業中(2020年3月)

そういった問題に取り組んでいる中で私が一番ショックを受けたことがあります。タンザニアでは、ナプキンを買えない貧しい家庭の女子生徒が生理の間は学校に来れず、授業についていけなくなり退学してしまうケースが多いと聞きました。そこで私は布切れを使って布ナプキンを授業で作ろうと計画しましたが、現地の人たちにこう言われました。「布ナプキンを作ったとしても、そもそもそれを洗う水自体が汚いから衛生的ではない。まず綺麗な水がなければ、安全に布ナプキンを使えないし学校にも行けないんだ」と。これがすごく衝撃的でした。貧困はあらゆる面で影響し、一筋縄では解決できないと自分の無力さを痛感しました。また、タンザニアにいる間、同僚や近所の人など身近な人の死や病気に直面することが多々ありました。「あの人たちが、適切な医療を受けることが出来ていたら…。」と何回も悲しい思いをし、タンザニアの医療事情を知ることで、初めてその大切さに気付きました。

日本での活動と気づき

新型コロナウィルスの感染が世界的にも広がり2020年3月に急遽日本に一時退避することになりました。日本での待機中は、タンザニアの生徒に向けて動画作成などの活動を細々と続けていました。また幸いにも日本でもNPOを通して性教育に関わることが出来たので、オンラインで中高生への授業に参加したり、性の悩み相談への回答をさせて頂いたりしました。

NPOでの活動中、日本でも若年妊娠の問題があり、望まない妊娠の多さ、若者の中絶のあまりの多さ、性教育の遅れに気づき大変ショックを受けました。「日本って進んでいるように見えて、タンザニアとあまり変わらないんだな」と。ただその一方、日本の病院に行った際、「日本の医療技術は素晴らしい!」なんて感動もしました。コロナで一時帰国したおかげで、この2年の間にタンザニア・日本の医療や性教育を比較できたのは、ある意味ラッキーだったかもしれません。

こうして協力隊の活動中出会った保健活動をしていくうちに、だんだんと「プロとして性教育に関わりたい」「地域の人たちの健康づくりに役立ちたい」と思う気持ちが強くなりました。協力隊の任期終了後、一念発起して看護学校に通い始めました。元々社会学を学び、卒業後は営業の仕事をしていた私が医療の道に進むことになるなんて、想像できませんでした。協力隊活動の2年間のおかげで新しい人生の道が拓けました。今度は看護職の立場として、いつかアフリカに戻れたらと考えています。