【ボランティア通信】大好きなタンザニアが示してくれた道-行政の専門家を目指して

2022年5月12日

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角 正美
任期:2017年10月~2019年10月
職種:コミュニティ開発
配属先:ムフィンディ県庁イフワギ郡事務所
任地:イリンガ州ムフィンディ県イフワギ郡
出身:大阪府

10年越しの想いを胸にタンザニアへ

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編み物教室の講師と生徒

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任地イリンガ州の美しい茶畑

高校1年生の時にアフリカで働くことを夢見て10年、「現地で今何が求められていて、自分に何ができるのかこの目で確かめたい」と思い、3年間務めた公務員を辞め、タンザニアへ赴任することを決めました。私の任地は標高が高いため非常に寒く、紅茶の名産地でもあります。自身の任地に初めて訪れたとき、あまりの美しさと念願のタンザニアで活動できることに感動で心が躍ったことをいまでも覚えています。

郡事務所に配属された私は、「地元住民の収入向上」と「地域活性化」を目指し、活動することになりました。しかし、新規の隊員だったため、前任者がおらず、具体的にすることは何も決まっていません。まずは自分の足で歩き、住民の話を聞き、何が課題でどのような資源があるのか調査するところから始まります。大学時代から学んでいたスワヒリ語と行政職員の経験を駆使し、郡内の4つの村を駆け回りました。そうした中で、100以上の住民グループの情報を収集し、養鶏や養蜂等の活動支援や県の助成金申請の補助を行うことができたのです。また編み物の技術を持った村の女性たちと協力し、女性の就業支援のために編み物教室の新規開講と市場開拓も行いました。私自身、村の人々から学ぶことの方が多かったですが、彼女たちが技術を身に着けたことで、「自分たちでも新たなことにチャレンジできると自信が持てたよ」と言ってもらえた時はとても嬉しかったです。

JICAプロジェクトとの出会い

赴任前は地方公務員として働いていたこともあり、タンザニアの地方行政の実態に強い関心がありました。そのため、できる限り同僚と会議に参加し、村の開発計画がいかに進むのか観察するようにしました。また、JICAの技術協力プロジェクト(注)との出会いは自身に大きな影響を与えてくれたのです。

タンザニアには政府が地方分権化の一環で進めている独自の参加型計画策定手法があります。2001年から全自治体への導入を進めており、JICAプロジェクトはその手法の改善をすすめていたのです。私の任地は対象地域ではありませんでしたが、同じ職種の協力隊員とパイロット郡の訪問や行政官を対象とした研修に参加する中、改めて地方行政のあり方が住民の生活に大きな影響を与えることを実感しました。

特に、診療所が建設途中のまま進まない地域もあれば、住民自ら協力して学校や道を建設する地域もあるなど、自治体間のパフォーマンスの違いに衝撃を受け、「なぜこのような差が生まれるのか」を学問的に探求したいと考えるようになりました。さらに長年タンザニアでプロジェクトに携わっていらっしゃるJICA専門員の方に度々活動や進路相談にのっていただく中、「住民参加型開発の実践的な視点と行財政制度の大きな視点を持った人材」の必要性をうかがい、自分自身が今後進みたい方向が更に明確になったのです。

地方行政の専門家を目指し大学院へ

帰国後、国立大学の法学研究科に進学し、行政学を専門とされる先生のもとで勉強を開始しました。コロナ禍での大学院生活であり、人との交流が制限されるなど壁もありましたが、その分オンラインツールを活用し、他大学の研究者の方々との読書会や研究会にも参加しました。自身の研究内容としては、地方自治体が安定的かつ持続的に公共サービスの供給を行うためのメカニズムを知りたいとの思いから、現在は自治体が突発的な危機に対応するための財源である「財政調整基金」の格差要因を分析しています。3月に修士課程を終え、本年、2022年4月より博士課程の1年目になりますが、有難いことにJICAの帰国隊員奨学金事業を通じて給付型の奨学金もいただけることになり、タンザニアで活動した2年間が今の自分自身を支えてくれていると実感しています。将来は「実務と学問の架け橋」として、日本国内はもちろんアフリカ諸国の地方行政の現場へ還元できるよう、これからも研究に励み専門性を磨いてまいります。