【ボランティア通信】途上国の教育開発への思いは続く-生徒たちの思い・先生たちの言葉を受け止めて

2022年8月10日

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浦 達将
派遣期間:2018年7月~2020年3月
職種:数学教育
配属先:フカ中等学校
任地:キリマンジャロ州シハ県サンヤジュウ
出身:岡山県

数学教育-楽しく学べる環境づくり

途上国の教育開発に関わりたい。大学生の時に思い描いた夢がありました。大学院修了後、得意の数学を活かせる職種で私が派遣された学校は全校生徒数が約300人。派遣時に出合った先輩・後輩隊員の中では一番小規模な学校でした。中等学校1年生を相手に、文字式や一次方程式を教えるところから始まりました。

初めは、「あ、この説明でわかってくれるのか」と意気揚々としていましたが、すぐに現実と向き合うことに。私の赴任校に限らず、タンザニアでは今でも、教員を恐れる生徒はたくさんいます。またシラバスの関係上、教員も少し急いで授業をしないといけない分量があり、一度の説明で生徒が理解してくれないと授業の雰囲気が悪くなる傾向があります。その結果、一番いい授業スタイルのため、生徒たちはわかったふりをする習慣がついていました。私の生徒たちも例外ではなかったので、まずは私の授業は安心して受けていい雰囲気作りから始めました。その後の授業スタイルとしては「とにかく数学に興味を持ってもらう」ことを意識し、学生時代に培った数学の知識を十二分に還元しました。また、近隣の小学校隊員の協力を仰ぎ、小学生を相手に中等生が教師役になってもらうイベントも実施していました。単に算数を教えるのではなく、算数を絡めたゲームの進行役として手伝ってもらいました。

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楽しく学べるよう奮闘した数学の授業

元々「教える」ことで自身の数学の理解度を深めてもらいたいという考えがありましたが、実施後ある生徒から「数学の先生になりたい」という声を聞き、思わぬ副産物が生まれたと実感しました。活動の集大成をどうしようかと残り3か月を切るタイミングで準備していた矢先、新型コロナウイルスの影響で帰国せざるを得なくなりました。

新たな可能性を感じた活動-教員の業務改善をきっかけに

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配属先の校長先生と

隊員活動中は数学教育に限らず多方面で活動を行っており、住民を巻き込んだイベントの実施計画や教師向けに、ITを駆使した業務の手助けなどもしていました。特に反響が大きかったのが、教員の業務改善の一環として行ったプログラミングを少し取り入れたスプレッドシートの作成です。生徒の成績記録を電子データで保存し、個人や行政への提出用に成績表を作っていました。業務量が大幅に減ったと教員方から喜ばれ、その時に日本に戻ってもITを使った仕事をしたいと思い始めました。計算力は生徒だけでなく一定数の教員も十分身に着いていなかったことを帰国後に思い出し、計算力向上アプリや過去問解説アプリの作成を独学で試みました。タンザニア人の元同僚や知り合い向けにリリースをし、高評価を得たことでさらに自信が付き、日本のIT会社へ一度就職して力を付けたいと思うようになりました。

当時、タンザニア人の先生たちから「画期的なものを作ってくれた」という言葉を聞いて私は単純に嬉しかったです。しかし協力隊関係者の意見を伺ったり私自身冷静になってみたりした結果、彼らは単に新しいものを目にしたため無邪気に喜んでくれていたのでは、と今は考えてしまいます。それでも彼らが反応してくれたこと自体が今の私に繋がっていると思っていますので、真意がどうであれ感謝しています。

現在の進路と今後

現在は東京でIT会社に勤めています。これも先の経験から、私の得意な分野を活かせそうな職種を選びました。会社での業務を行う傍ら、独学で様々なIT知識・技術を吸収しています。いずれはタンザニアでなくてもアフリカ地域に戻り、教育現場とITをかけ合わせる仕事をしたいとの思いがあります。しかし正直な所、私がITを駆使できる保証はありませんし、もっと別の形で途上国の教育に携われるのではと思うこともあります。そのため現在は様々な人の意見を伺っており、どの方法が私にとってベストなのかを探っている最中です。先日も私が気づかなかった方面からの教育支援のアイデアも頂き、日々知識を取り入れています。またいつか戻って仕事をしてみたい。そう思えるのは、約2年間の活動が充実していたからだと思っています。