タイ国「東南アジア地域 低炭素・レジリエントな社会構築・推進能力強化」プロジェクトが終了

2020年11月17日

2017年9月より実施してきた技術協力プロジェクト・タイ国「東南アジア地域 低炭素・レジリエントな社会構築・推進能力強化」が3年間の協力期間を10月7日をもって完了し、プロジェクトを総括する長期専門家として2018年9月から2020年10月まで派遣されていた福田幸司氏による最終報告会が11月10日に開催されました。

本プロジェクトは、タイ温室効果ガス管理機構(TGO)をカウンターパートとして2010年から2年間、2013年から3年間実施した技術協力プロジェクトの第3フェーズに位置付けられるものです。第3フェーズは、TGOをカウンターパートとして前フェーズに設立された「気候変動国際技術研修センター(CITC)」を通じて、ASEAN地域全体の気候変動に関する計画策定・実施能力強化を目指す三角協力型のユニークなアプローチを採用し、東南アジア各国の政策担当者や気候変動政策・行動に従事するステークホルダーを対象に、緩和、適応、気候ファイナンスなど多岐に渡る分野の研修・能力強化の実施を支援しました。また、第3フェーズという技術協力の最終局面として、CITCの「地域のワンストップ研修センター」としての自立発展の道筋を強化してきました。
本プロジェクト期間中、ASEAN域内のナレッジハブとしてのCITCの事業方向性を再認識し、そのための対外パートナーシップを戦略的に検討・構築しました。また、パリ協定の実施を目指す各国の具体的アクションを念頭に置いた緩和、気候ファイナンス(資金アクセスを念頭に置いた案件コンセプト策定)研修では、緑の気候基金(GCF)や案件組成過程に精通する国際リソースパーソンらにより各国の文脈に沿って細かな指導やコンサルテーションが行われ、27件の気候変動対策コンセプト案やアクションプラン案が研修受講者によって作成されました。研修終了後、これらの成果をベースに、参加国が具体的な施策の実現をめざし検討が継続されているものもあります。参加者が研修で得た知識を活用し案件コンセプトの具体化を目指すなど、よりアウトプット・アウトカムを重視した研修のアプローチの試みとその評価枠組みの検討を行ったことも本プロジェクトの活動成果の1つです。
また、協力期間中、COVID-19の影響により対面での活動の実施が難しい状況となりましたが、バーチャル環境に早期に適応し、ASEAN関係者の集う能力強化研修や地域会合を実現させ、JICA事業による活動のバーチャル化と費用対効果の向上の先行的な事例を提供しました。

こうした活動軌跡・成果の一部は、東南アジア地域における気候変動分野の南南協力・三角協力の好事例として高く評価され、国連南南協力室(UNOSSC)にて刊行物化される予定です。

パリ協定における国毎の目標(NDC)が実施期間を迎え、東南アジア地域においても持続可能な開発に連動した気候変動対策の効果的な実施が求められます。今後も地域ハブとしてのCITCが東南アジア各国の相互学習・対話・協力を促進させ、地域全体の気候アクションの実現の加速に資することが期待されます。

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研修の様子。研修では細かな指導やコンサルテーションが行われた。

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研修の様子。研修では細かな指導やコンサルテーションが行われた。

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CITCメンバーと福田専門家(右から5人目)

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ベトナムとの対話イベントを2回実施。対外パートナーシップを戦略的に検討・構築した。