タイ国JICA海外協力隊事業40周年に寄せて

2021年7月28日

新型コロナウイルスの世界的感染拡大により、2020年3月から4月にかけてJICA海外協力隊の一斉帰国がなされ、その後も隊員の再渡航が難しい状況が続いています。タイについては漸く2020年末に隊員の再渡航が実現されました。全世界を見渡すと、このような状況の中でも、協力隊派遣25周年、30周年、40周年と各国でJICAボランティア事業の歩みが脈々と続いています。そして、そのような国の一つとして、2021年7月にはタイ国JICA海外協力隊派遣40周年を迎えることとなります。

1981年7月28日にハジャイ工業高等専門学校に電子機器隊員が赴任してからこれまでの40年間で活動した隊員は延べ1077名に上ります。彼らの中には、理科教育隊員として活動した学校に就職し、再びタイで生活している方、観光隊員として活動後、タイと日本の伝統文化を結び付けた商品開発を帰国後もオンラインで続けるなど、タイと日本との懸け橋となるような活動を継続する方もいます。また、人身取引保護シェルターで活動した隊員は、帰国後に人身取引の問題を日本の学校の授業で生徒に伝える等、タイでの経験を多くの方に伝えると共に、国際問題や国際協力に関心を持ってもらうよう努めている隊員もいます。タイでの充実した活動と出会った人々との経験や想い出は、その後も数々のドラマを生み、周りの方々も巻き込みながら、多くの隊員経験者やタイの人々のその後の人生を豊かで多様性に満ちたものに変えてきました。

ウィズ・コロナ/ポスト・コロナという、先行きの見通せない困難な時代ですが、人と人の結びつきの大切さは変わることがありません。タイと日本のために現場で活躍したいという想いを抱く方々を数多く送り出してきたJICAボランティア事業ですが、より一層皆様に愛される事業となるように、そして、現場で生まれる多くの感動的なドラマを通して両国の友好が一層深まるように、皆さまと一緒に取り組んでいきたいと思います。

独立行政法人国際協力機構(JICA)
青年海外協力隊事務局長
小林 広幸