【タイJICA海外協力隊派遣40周年記念OV+配属先リレーメッセージ】vol.5 葭村 雄二 隊員

2021年9月15日

今回メッセージをくれたのは、葭村 雄二 隊員です。

氏名:葭村 雄二
隊次:2016年度3次隊
配属先名:金属材料技術研究センター(MTEC)
職種:化学・応用化学
派遣期間:2017年1月10日~2019年10月9日

タイ国JICA海外協力隊40周年に寄せて「日タイ科学技術協力を側面から支援」

私は、日タイの地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS)事業に参加(2010年-2016年)していましたが、その縁もあり同事業に参加したMTECでのSV活動機会に恵まれました。活動内容は、同事業の成果の一つである新しいバイオディーゼル(H-FAME)の実用化に向けた諸活動や若手研究者等の人材育成等でした。MTECの皆さんとは旧知の仲という恵まれた環境で、スムーズに活動できました。
H-FAMEに関しては、タイ政府のB10プロジェクトに参加し、その成果、タイでのバイオディーゼル品質規格改定に貢献できました。ただ、現行のピックアップトラック車輌(EURO4仕様)ではH-FAMEの高品質な特徴が発揮されにくく、未だH-FAMEの実用化には至っていません。人材育成関連では、MTEC研究者や大学院生の論文作成指導や博士学位審査等を行いました。皆さん優秀でした。また、JICAの第三国研修にも参加し、バイオ燃料関連でASEANの皆さんとも交流できました。

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タイ国エネルギー省代替エネルギー効率化局(DEDE)主催のB10(注)プロジェクトパブリックセミナーにて@NSTDA(2019)
(注)石油系軽油にバイオディーゼルを10vol%混合した混合燃料

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新規バイオディーゼル(H-FAME)のポスタープレゼン風景 カウンターパートのDr.Nuwongさんと(2019)

この間、カウンターパートのDr.Nuwongさんには、昼夜を問わず、大変お世話になりました。また、同期の隊員にも交流の輪を広げていただきました。本SV活動を始めとした長年に渉る諸活動では、JICAタイ事務所の皆様に大変お世話になりました。深く感謝いたします。
タイには、ASEANの雄として、今後も科学技術関連情報の発信基地としての活躍を期待しています。私はSV活動に引き継き、MTEC(現在はENTEC)でタイ日、タイASEAN等の科学技術協力を側面から支援予定です。微力ですが。

葭村さんの元配属先、金属材料技術研究センターからも、葭村さんの印象をおしえていただきました。

協働を超えた17年の友情

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2009年1月20日に行われたNEDOプロジェクトにかかる初期のすりあわせ

2004年11月24~25日にバンコクで開催された日タイ連携ワークショップで、産業技術総合研究所(AIST)の葭村雄二先生を知ったのは、単なるワークショップの場だったというより、私の「人生を変えた瞬間」といえるでしょう。

彼のやさしい指導のおかげで、私はバイオディーゼルの学術面と、日本式の仕事の仕方の両面で鍛えられていき、それは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、東アジア・アセアン経済研究所(ERIA)、新エネルギー財団(NEF)、科学技術振興機構(JST)、特に国際協力機構(JICA)といった日本のパートナーを巻き込んだ、地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)での「非食糧系バイオマスの輸送用燃料化基盤技術(2010-2015)」という共同プロジェクトへとつながりました。
この5年間のプロジェクトは、革新的なバイオディーゼルの技術の向上をもたらし、2016年から2019年の省エネ推進基金の下での、バイオディーゼルの混合量の増加に関する国家プロジェクトにもつながりました。葭村先生は、The National Science and Technology Development Agency(NSTDA)の要請により、2017年1月10日から2019年10月9日の間、JICAシニアボランティアとしてそのプロジェクトに参加しています。

葭村先生は、JICAシニアボランティア期間中の2017年に、マハー・チャクリー・シリントーン王女殿下と佐渡島志郎駐タイ日本国大使(当時)を迎える機会を得ました。

彼の貢献は、2019年5月15日に行われたバイオディーゼル規格の、混合量の上限を7%から10%に引き上げるという見直しに国家的な影響を与え、それは後の2020年10月1日に、ディーゼルの品質規格がB10になったことへとつながっています。

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2017年3月29日、マハー・チャクリー・シリントーン王女殿下にJSTとJICAのバイオディーゼルプロジェクトの進捗報告を行う

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2017年7月3日、佐渡島志郎駐タイ日本国大使(当時)の訪問を受けて

17年間の共同作業を通じて、葭村先生は、私の家族の一員となり、仕事でもレジャーでもよく一緒に出かけました。私自身、彼の仕事ぶりだけでなく、他の習慣からも多くの知恵を学び、友情を深めています。タイにおけるJICAボランティア事業40周年を迎えるにあたり、過去40年間の素晴らしいプログラムを提供してくださった日本政府に心から感謝の意を表し、今後何年にもわたって日本とタイのパートナーシップが強化されることを期待しています。

ヌウォン・チョラクープ
マテリアルサイエンス・エンジニアリング博士
国家科学技術開発庁(NSTDA)国家エネルギー技術センター(ENTEC)
再生可能エネルギー・エネルギー効率研究チームリーダー