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【スポーツが未来をひらく! Vol.4】 4月6日は「開発と平和のためのスポーツ国際デー」:スポーツで女性の地位向上や平和構築を進める

2020年4月2日

4月6日は「開発と平和のためのスポーツ国際デー」。国連は、スポーツが開発や平和を促し、寛容や相互理解を育むことに着目し、近代オリンピックが初めて開催された1896年4月6日を記念してこの日を定めました。

JICAは今、そのようなスポーツの力を活用したさまざまな支援に取り組んでいます。タンザニアでは女性選手のための陸上競技会「LADIES FIRST」の開催を続け、女性の地位向上を後押しし。南スーダンではスポーツを活用して平和構築といった課題に向き合い、「体育技術の向上」だけではない、途上国の発展を支える「スポーツの力」が発揮されています。

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タンザニアで開催された第3回「LADIES FIRST」の4×100メートルリレーのゴール直後に、南スーダンの国旗を掲げ、健闘をたたえ合う南スーダンチームとタンザニア選手(左から2人目)

タンザニアと南スーダンでのスポーツを通じた支援が相乗効果を生み出す

タンザニアで昨年12月に開催された第3回「LADIES FIRST」には、初めて南スーダンの女性選手たちが参加しました。LADIES FIRSTは、JICAとタンザニア情報・文化・芸術・スポーツ省が2017年から毎年開催。「スポーツは男性がするもの」という固定観念などにより陸上競技大会への出場機会が限定的な女性選手たちに活躍の場をつくっています。

今回、南スーダンからLADIES FIRSTに参加したのは、JICAが南スーダン文化・青年・スポーツ省と2016年から実施するスポーツイベント「国民結束の日(National Unity Day)」で選出された女性陸上選手たち。このイベントは、2011年の独立後も不安定な治安環境が続く南スーダンで、部族や地域の違いを越えてスポーツで融和し、国としての一体感を醸成していこうという「スポーツを通じた平和構築」の取り組みです。

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南スーダンで開催されているスポーツイベント「国民結束の日」では、陸上のほか、バレーボールやサッカーなども種目に含まれ、熱戦が繰り広げられます

LADIES FIRST の100m×4のリレー種目では、タンザニアと南スーダンのチームが先頭を競い合い、1秒半あまりの僅差でタンザニアが優勝。南スーダンの選手たちがLADIES FIRSTに参加できるよう調整に奮闘したJICA伊藤美和職員は、そのときの様子を次のように振り返ります。

健闘を称え合うタンザニアと南スーダンの選手

「リレー種目で南スーダンは惜しくも2位でしたが、レース後、異なる背景を持つであろう選手たちが一緒に南スーダンの国旗をまとい、優勝したタンザニア選手とともに健闘を称え合う姿に、彼女たちが国の代表という意識を強く持っていることを感じ、胸が熱くなりました」

10000m決勝で競い合うタンザニアの選手たち

また、LADIES FIRSTの発案者でもある元マラソン選手で五輪出場の経験もあるジュマ・イカンガーさん(JICAタンザニア事務所広報大使)は、「タンザニアの選手だけではここまで競り合うような結果がでなかったでしょう。良い意味でのライバル関係や近隣国の女性アスリート同士としての仲間意識が生まれていたように感じます」と語りました。

タンザニアと南スーダンの女性選手たちは共に切磋琢磨することで、スポーツを通じ、自分たちの可能性や、国の代表としての一体感や誇りを肌で感じる瞬間となりました。

ジェンダー平等に向けた課題を共有

LADIES FIRSTでは、第1回大会からジェンダー平等への啓発活動として、若年妊娠問題を考えるドラマの上演や、女性の地位向上に向けたワークショップなども開催されています。

女性の地位向上に向けたワークショップに参加する女性選手たち

ワークショップで、両国の女性選手たちからは、「女の子がまずは学校にいけるようにしないといけない。そしてスポーツを続けるように促すことが必要」といった声もあがったほか、「ジェンダーの問題について一緒に考えることができた。南スーダンとタンザニアの文化的な違いによるジェンダー差別に関して、理解を深められたのが良かった」など、地域の課題を共有しました。このような議論を自分たちが中心になって行い、解決策を検討する、という機会も初めての選手が多く、「女性も社会を変えるリーダーになり得る」ことを体感するきっかけにもなりました。

伊藤職員は「ワークショップでは、LADIES FIRSTに複数回参加している選手が初めて参加する後輩選手たちに、説明を補足し議論を進行するなど、リーダーシップを発揮。LADES FIRSTの参加によって選手たちが成長し、女性の意識変化を実感できたシーンでした」と述べます。

LADES FIRSTを観戦した女子中学生、「女性は強くあるべき」と実感

女性であることに対するポジティブなメッセージは、LADES FIRSTを観戦した女子生徒たちにも伝わっています。

競技の様子を撮影する女子生徒

JICAが学校運営を支援しているタンザニアの「さくら女子中学校」の生徒たちは、トラックを駆け抜け、活躍する女子選手たちの姿に、「女性だって走ることができるし、何かを成し遂げる可能性がある」「女子はスポーツに参加することで計り知れない機会を発見できる」「女性は強くあるべき。そしてなんでもできると自分を信じるべき」といった感想を述べ、女性に生まれたことを否定するのではなく、自分たちへの大きな可能性を感じていました。

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さくら中学の女子生徒とJICAタンザニア事務所スタッフ(中央が伊藤職員)

スポーツの持つ力が、途上国の課題解決に貢献するという認識が高まるなか、JICAは、これからも「スポーツを通じた開発協力」を進めていきます。