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【新型コロナに挑むJICA帰国研修員:日本での学びを活かし、各国で大活躍!】第5回 ネパール・ブータン:国境を越えオンラインで知見を共有 ネットワークを活用して危機を乗り越える

2020年5月29日

帰国研修員同士の絆とネットワークが、危機を乗り越える力になっています。日本での学びを活かし、それぞれの国で新型コロナウイルス対策に奮闘する研修員を紹介するこのシリーズ第5回は、ネパールとブータンの研修員がオンラインセミナーを開催し、新型コロナ対策についてぞれぞれの知見を共有して学び合う姿を追います。両国の帰国研修員同窓会にとって今回のようなオンラインセミナーの開催は初の試み。さて、その成果はあったのでしょうか。

【画像】

ネパールとブータンの帰国研修員らが開催したオンラインセミナーの画面

両国から政府高官や帰国研修員など110名が参加

ネパール、ブータンともに感染拡大はある程度抑えられているものの(注)、予断は許さない状況のなか、帰国研修員たちは必要な知識や、有効な対策を共有しようと、4月末に今回のオンラインセミナーが実施されました。両国の政府高官をはじめ、帰国研修員やその家族もあわせて約110名が参加。2時間30分にわたり、新型コロナウイルスに関する現状や両国政府で実施中の有効な対策、さらに今後の経済への影響などについて議論され、相互に学び合う場となりました。

(注)両国政府によると、5月28日現在、新型コロナウイルス感染者数はネパールが1,042名(死亡者5名)、ブータンが同31名(同0名)。

「JICAの研修で、さまざまな診断技術だけでなく政策や意思決定について学び、そこで得た知識や技術が今まさに新型コロナウイルスの対策にとても役に立っています。このセミナーを通じて得たさらなる知識を、両国の参加者自身が今後の生活や仕事で活かしてほしいです」

ネパール保健・人口省伝染病管理対策課のバス・デブ・パンディさん

オンラインセミナーでの発表者の一人、ネパール保健・人口省伝染病管理対策課のトップを務めるバス・デブ・パンディさんはこのように述べます。

1995年に長崎大学で「熱帯医学研究」に関するJICAの研修に参加。2000年に再来日し同大学で博士号を取得、2001年から2003年には同大学の客員研究員を務めました。その後、日本で学んだことを活かしてネパールの国立熱帯・感染症病院の院長として保健分野の政策決定などにも貢献してきました。

現在、新型コロナウイルス対策のガイドライン作成、国内の医療機関や研究機関、自治体との調整、さらにはWHOとの連携なども一手に担うパンディさん。セミナーでは、ネパールでの現状に加えて、必要な機材も人材も限られた状況のなか、政府がどのようにして新型コロナウイルスへ対応しているかなどについても話しました。

今回のオンラインセミナー開催にあたって、ネパール帰国研修員同窓会のラム・チャンドラ・ブサール会長は、「ウイルスに対する正しい知識を共有するだけでなく、セミナー参加者やその家族が新型コロナについて考える場を提供し、意識を向上させることも今回のオンラインセンナー開催の目的です。地域の人々、家族、そして自分自身の命を守ることが最も重要。このセミナーでの知見の共有が、それぞれの地域や国において、この危機を一日でも早く乗り越えていくことにつながると信じています」と述べます。

医療廃棄物の処理に研修の学びを活かす

オンラインセミナーでブータンにおける新型コロナウイルスへの対応、社会への影響などを説明する帰国研修員同窓会のヤンチェン・ハモ副会長

ブータン帰国研修員同窓会のヤンチェン・ハモ副会長は、オンラインセミナーで、ブータンの新型コロナウイルスへの対応などを説明しました。参加したブータンの研修員からは「有効なコロナ対応は世界中どこでも共通と思われ、他国の経験がブータンで活かせると感じた」といった声もあがりました。

ブータンでも新型コロナウイルス対策の最前線で数々の研修員が活躍しています。その中の一人、保健省でプログラムアナリストを務めるペム・ザムさんは、院内感染防止と医療廃棄物の処理に向けて日々、奮闘しています。2016年にJICA東京が実施した「医療関連感染管理指導者養成」研修に参加し、帰国後、研修での学びを活かし、ブータンにおける感染症や医療廃棄物の取り扱いに関するガイドライン作成を手掛けました。今、このガイドラインが重要な役割を果たしています。

ブータン保健省プログラムアナリストのペム・ザムさん(右)と、JICAブータン事務所の渡部晃三所長

新型コロナウイルスの感染拡大防止に向け、ブータンでは、すべての帰国者が3週間の施設隔離を義務付けられました。それに伴い、隔離施設からの廃棄物が1日500キログラムも発生。その対応に追われるなか、ブータンで初めての焼却炉の導入に向け、資金の獲得や場所の選定、許可の取得などに取り組むペム・ザムさん。「ブータンの新型コロナウイルス対策に研修の成果が活かされています」と語ります。

JICAが実施するさまざまな研修に、ネパールからはこれまで6,000名以上、ブータンからは2,000名以上が参加しました。新型コロナウイルスの感染拡大という世界的な危機に直面するなか、帰国研修員たちは日本で得た知識や技術をそれぞれの国の現場で活用しています。さらに、日本での研修がきっかけとなって形成されたネットワークが国という単位を超えて、この困難をともに力強く乗り越えていく原動力になっています。

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昨年12月にネパールで開催されたJICA南アジア地域帰国研修員同窓会の会合には、インド、バングラデシュ、ブータン、モルジブの帰国研修員が参加。南アジア地域の共通課題である「防災」をテーマに活発な議論が行われました。帰国研修員のネットワークは地域の課題解決に向け、大きな力になっています