第16回JICA「理事長賞」オンライン表彰式を開催

2020年11月11日

10月15日、「第16回JICA理事長賞」の表彰式を開催しました。この賞は、開発途上地域の経済・社会の発展や人々の福祉・教育の向上などに寄与するとともに、日本の国際協力の評価を高めるなど、他の模範となるような著しい功績を収めた団体、あるいは専門家などの個人の功績を称え、表彰しているものです。

今年は、48の団体と個人(21団体、27人)が受賞。新型コロナウイルス感染予防対策のため、表彰式はオンラインでの開催となりました。

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オンラインで開催された理事長賞の表彰式で挨拶する北岡理事長

「JICA、そして日本の国際協力が世界で高く評価され、信頼されるのは、皆さまの功績によるものです」

表彰式の冒頭、北岡伸一JICA理事長はJICAのビジョン「信頼で世界をつなぐ」を紹介するとともに、受賞者に向けて深い感謝の意を表しました。また、専門家やコンサルタント等として国際協力に長年従事され大きな功績をあげた方々や、世界各地で猛威を振るう新型コロナウイルスの感染拡大防止に尽力された方々、近年深刻さを増す災害への対応で活躍された方々、日本国内で途上国の人々の研修等に長年ご協力いただいた方々を紹介するとともに、その功績に敬意を表する旨を述べました。

また、日本の国際協力の柱である『人間の安全保障』、つまり『全ての人が尊厳をもって生きる権利がある』という考えは、コロナ禍において、これまで以上に重要であり、その実現のためにも保健医療システムの強化に優先的に取り組んでいく、と人間の安全保障の実現への決意を強調しました。

バングラデシュにおける看護の質の向上へ多大な貢献

48名の受賞者紹介に続き、受賞者を代表して、南裕子さん、馬場卓也さん、国立感染症研究所を代表して所長の脇田隆字さんがスピーチを行いました。

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バングラデシュの看護サービス人材プロジェクトに関わってきた南さん

南さんはバングラデシュでの技術協力プロジェクト「看護サービス人材プロジェクト」に当初から携わり、看護サービスの質向上に貢献しました。

2013年のプロジェクト準備期間当時、バングラデシュのハシナ首相と面会した際、首相の看護師育成の重要性や社会における女性の地位向上に対する強い決意を感じ、「本プロジェクトの重要性と未来性を確信した」と言います。

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ダッカ医科大学附属病院を訪問し本邦研修に参加した看護実習指導者へ声をかける南さん(右)

また、2019年に現地を訪問した時は、政府関係者の看護サービスの質向上に対する姿勢、現場の看護師や教員の意識の高さに感銘を受け、「本プロジェクトは大変成果を上げている」と語りました。

「このプロジェクトに対するJICAのさらなるサポートを期待し、私もできる限り協力をさせていただきたいと願っています」と、今後の決意を示しました。

20年以上にわたり基礎教育分野のJICA事業に貢献

馬場さんは、2001年に着任以来、ザンビアへの大学院生ボランティア派遣のプログラム化など、多くの方と協力して先駆的な取り組みを進めたほか、JICA留学生の受入拡大を推進しました。

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馬場さんは、広島大学大学院国際協力研究科の教授室からオンラインでの表彰式に参加

この道に入るきっかけとなった青年海外協力隊としてフィリピンで活動した際、赴任先の校長先生から、「国際協力では協力相手を思うことが必要」と学んだといいます。また、「校長先生には今でも恩を感じています。この校長先生に直接恩を返すことはできませんでしたが、そのような時、『恩送り』という表現を聞き、国際協力の中で一人でも多くの関係者に恩を送りたいと考えてきました」と国際協力への志を語りました。

ザンビア人研修員の模擬授業を指導する馬場さん(右)

現在、広島大学で教鞭をとる馬場さんは、「大学の機能の教育・研究・社会貢献を適切に融合することが、国際協力で最も重要であり、長期的に結果の出ない問題を繰り返し考えることが重要である」と述べました。新型コロナウイルスの拡大により自国主義がさらに蔓延するなか、「国際協力においては人との繋がりが重要であり、人のために働き、協力することが世界平和につながっていく」と語りました。

ベトナムでの新型コロナウイルス感染の抑え込みへ貢献

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オンラインで開催された表彰式に参加した国立感染症研究所の脇田所長(前列中央)

国立感染症研究所は、2005年よりベトナムで、高危険度病原体の検査を行う実験室の整備に対する助言と技術協力を実施し、ベトナム国立衛生疫学研究所を中心とした検査機関の全国ネットワークの構築と、バイオセーフティ及び診断技術の能力強化に貢献しました。

国立感染症研究所は多くの開発途上地域からJICA研修員も受け入れています。脇田所長は「講師となった職員は、その担当が終わった後も、帰国した研修生と重要なネットワークを築き、お互いがそれぞれの分野で成果を上げています」と語りました。

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ベトナムの国立衛生疫学研究所で、重症熱性血小板減少症候群ウイルスに関する指導をする国立感染症研究所の専門家(写真奥)

また、新型コロナウイルスの拡大の中、国立感染症研究所はウイルスの診断・予防・治療法の開発、ワクチンの開発、感染症に関する情報の収集、解析などを通して、日本国内及び世界での新型コロナウイルス拡大の抑え込みに大きく貢献しています。「国内の対応のみならず、世界の国々から尊敬されるよう、引き続き尽力していきます」と関係各位への感謝と共に、今後の決意を示しました。