【お知らせ】できる限り現場に出向き、日本の開発協力を推し進めていきたい:田中明彦理事長が就任会見

2022年4月14日

「現地の人々に寄り添いながら、日本社会のプレゼンスを世界に示していくことが必要」
4月1日に就任した田中明彦理事長は、就任記者会見でこのように述べ、今後、JICAが取り組む課題やその背景について語りました。

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田中理事長は、今後5年間のJICAの中期目標および中期計画(注1)について、「着実且つ有効に実施することが私の任務だ」と言います。そこに示された課題や重点的な取り組みは、2015年に策定された開発協力大綱に掲げられている質の高い成長や人間の安全保障といった理念に基づくとし、なかでも人間の安全保障の概念は「人間中心の開発」や「誰一人取り残さない」という持続可能な開発目標(SDGs)の考え方に反映されていると述べました。また、JICAにとって経験や強みがある事業を「JICAグローバル・アジェンダ」という形で整理しており、これを通じて、SDGsへの貢献にもつなげていくと表明しました。

国際社会においては、政治的不安定さや開発課題も多いが、とりわけダイナミックに成長するインド太平洋地域を自由で開かれた地域としていくことが、日本のダイナミズムを支えていくという観点から重要であり、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」というビジョンに繋がっていると指摘しました。

その一方で、長期に亘る日本の経済停滞についても指摘し、今後はより知的影響力や人と人とのつながりによる影響力を高める必要があると述べました。日本が近代から現代にかけて成功と失敗を重ねながら取り組んできた開発経験の共有や、環境や防災など、地球規模の課題について、日本と開発途上地域の大学・研究機関などが連携して、新しい科学技術の開発・応用などを進める共同研究(注2)にも注力していく姿勢を示しました。

少子高齢化が進む日本社会のこれからの発展に向け、外国人材を含む多種多様な人々と、共に社会を創っていくことも重要です。このような共創社会の実現に向け、開発途上地域をはじめ国内外に110以上の拠点があり、日本の企業と連携して協力を行い、海外協力隊経験者らのネットワークを持つJICAは大きな役割を果たすことができ、日本の活性化にも貢献できると強調しました。

世界におけるさまざまな危機のなか、脆弱な人々への協力が課題

世界は現在、新型コロナウイルス感染症やロシアによるウクライナ侵攻に伴う複合的な危機に見舞われています。とりわけ開発途上地域の最も脆弱な人々が巨大な打撃を受けているとし、田中理事長は、そうした人々が持続的な開発に向かう道筋をつけるための協力が喫緊の課題だとしました。

新型コロナウイルスの感染拡大により激減した世界との交流が回復していくなか、海外協力隊員やJICA専門家などの派遣についても以前の水準を目指し、特に開発途上国において「日本が戻ってきた」という実感を持ってもらうことがJICAの直近の使命と言葉に力を込めました。

田中理事長は今回2回目の理事長就任となり、前回の理事長在任時(2012年4月~2015年9月)には、3年半の間に57カ国(複数回訪問した国を数えるとのべ91カ国)を訪れました。国内外での各国の首脳級の指導者との会談は、82回を数えます。
「今回も積極的に指導者との関係を深め、『信頼で世界をつなぐ』というJICAのビジョンを実現させていきたい」と今後を見据え、「できる限り現場に出向き、日本の開発協力を推し進め、国内外での発信に努めていきたい」と意欲を示しました。

注1

注2