天皇皇后両陛下が帰国したJICA海外協力隊(青年海外協力隊、日系社会青年海外協力隊)と御懇談

2022年11月11日

 JICA海外協力隊帰国隊員の代表が11月4日、皇居(御所)において天皇皇后両陛下に御懇談の栄を賜り、任国での活動をご報告致しました。帰国隊員と両陛下との御懇談は、1965年に青年海外協力隊が発足した当初から今日に至るまで続いています。

 今回帰国したJICA海外協力隊員は、新型コロナウイルス感染症の世界的な感染拡大の影響を受け、日本への一時帰国を余儀なくされました。しかし、日本での待機期間中に、オンラインでの支援活動や能力強化を行い、これらをまた現地に戻った際の活動に活かすなど、コロナ禍を乗り越えて派遣国での活動を終えました。

 当日、両陛下にお目にかかったのはアジア、アフリカ、中南米の国々に派遣されていた青年海外協力隊2人と日系社会青年海外協力隊1人です。御懇談に先立ち、JICA本部(東京都千代田区)で田中明彦理事長と面談しました。

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前列左から高林さん、田中JICA理事長、浅井さん、
後列左から 大塚理事長室長、大石さん、内田青年海外協力隊事務局次長

【困難な状況をチャンスに変える!ラオスと日本の懸け橋に!】

 高林未稀さん(ラオス派遣、職種:コミュニティ開発、30歳、東京都出身)は、首都ビエンチャンから北に飛行機で約1時間に位置するルアンパバーン県の農業事務所に初代の隊員として配属され、対象地区の農民支援に取り組みました。主な活動は、①農民グループの能力強化、②有機農産物の販売促進、③販路開拓でした。コロナ感染症蔓延の影響により、現地の経済活動が制限され、高林さんも長期帰国となったものの、日本国内で日本企業についての情報収集や人脈づくりなどの活動の結果、ラオスに進出している日本企業による農産品の栽培支援と買い取りを実現しました。 困難な状況を逆手にとって柔軟に対応し、農民の意欲や能力向上のみならず、農産品の輸出等の成果をもたらしました。

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首都避難中、日本に輸出するバタフライピー(※)農園視察の様子
(※):チョウマメ(蝶豆)、青い花で日本では天然着色料として使われている。

【地域の未来を創る活動を現地の方々と共に、そして、日本へ!】

 大石祐助さん(ルワンダ派遣、職種:マーケティング、28歳、神奈川県出身)は、首都キガリから約60km離れた東部県ルワマガナ郡にて、中小規模事業者や起業家に対して、経営やマーケティングの指導を行いました。大石さん自ら問題解決の一助となるべく、経営およびマーケティングに関する冊子(手引書)を作成し、地域の店主や事業者リーダー等に配布・教示しました。他にも、地域住民に対し、マネーリテラシー向上のためのワークショップを行い、地域の未来を創るための活動に尽力しました。また、日本の多くの人にJICA海外協力隊やルワンダのことを知ってもらうため、広報活動にも力を注ぎ、出版社のWEBメディアや自身のブログ等を活用し、積極的に情報発信を行いました。

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炭屋のオーナーに販促用のチラシをもって打合せ、帳簿を確認しアドバイスを行っている様子。

【時差と距離を乗り越え築いた信頼!新しいオンライン授業の提案!】

 浅井里美さん(ドミニカ共和国派遣、職種:日本語教育、42歳、岐阜県出身)は、首都サントドミンゴ地区の日系人協会に配属され、移住者子弟(主に四世:6歳~18歳)に日本語や日本文化の授業を行いました。日系人協会日本語学校は首都を含め4箇所存在し、地方校も巡回して授業を展開しました。コロナ感染症蔓延の影響により一時帰国となりましたが、その間も日本から遠隔での授業を実施しました。時差により日本の深夜時間帯での授業が続きましたが粘り強く対応し、授業を継続することで日系社会に大きく貢献しました。2021年3月の再赴任後は、コロナ情勢を見つつオンライン授業から始め、徐々に各校での対面式授業を開始しました。

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首都サントドミンゴ校の3年生・4年生の授業風景。生徒は全員日系の子どもたち。 地方の学校は生徒が少なく、全学年共同の複式授業を小学校や公民館で実施していた。

 御懇談後、参加者からは、「両陛下とも、終始にこやかに興味深く報告を聞いてくださった。お優しいお言葉やお心遣いに感動した。」「協力隊に行くきっかけや行って良かったことなどについて、全員にご質問いただいた。」「現地の活動に関心を寄せてくださり、幅広くご質問いただいた。」などの感想をいただきました。また、御懇談終了後、天皇陛下より、一人ずつ、御言葉をいただきました。

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