未来をより良くするためには、まず世界を知ることから:「JICA国際協力中学生・高校生エッセイコンテスト2022」表彰式開催

2023年3月7日

次世代を担う中学生・高校生が、開発途上国の現状や国際協力の必要性について理解を深め、自分たち一人ひとりに何ができるのか、どのように行動するべきかを考えるJICA国際協力中学生・高校生エッセイコンテスト。「世界とつながる私たち~未来のための小さな一歩~」をテーマに募集した今年度のエッセイコンテストは、総数43,880作品(中学生の部19,832作品、高校生の部24,048作品)の応募があり、ロシアのウクライナ軍事侵攻をふまえ「平和」を考える作品やSDGsに関する自身の取り組みを取り上げた作品が多く寄せられました。2月18日に、2018年度以来4年ぶりに対面で開催された表彰式には、きらきらと目を輝かせた上位入賞者(最優秀賞、優秀賞、審査員特別賞、国際協力特別賞)が全国各地から参加しました。

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(左)中学生の部受賞者(右)高校生の部受賞者の集合写真

世界や人との「新しいつながり」を

JICAの田中明彦理事長は、受賞者への挨拶で、受賞作品がJICAの理念「信頼で世界をつなぐ」につながっており、期待と嬉しさを胸に感じるとの言葉を述べました。さらに、戦争や新型コロナウイルス感染症のパンデミックによってばらばらになっている世界において、壊れたつながりを修復するだけでなく新たなつながりを発見し強めていく必要がある、とのメッセージを受賞者へ贈りました。

4年ぶりの対面開催の表彰式に「涙が出そう!」と喜びの言葉を述べる中学生の部最終審査員長を務めた尾木直樹さん

2016年度より本コンテストの中学生の部最終審査員長を務めている教育評論家で法政大学名誉教授の尾木直樹さんは、「マスクをしていても目から分かる。強い力を感じる。」と対面だからこそ感じる受賞者の熱い思いを述べました。また、ウクライナ・ロシア間の戦争や今年の4月1日より施行されるこども基本法に触れつつ、「戦争のリアルを目の当たりにする今の時代を生き抜いている若者をリスペクトする。今回の応募作品を読んで若者は間違っていないと確信できた」と、受賞者や若者への期待を伝えました。

高校生の部最終審査員長を務めた星野知子さんは、「賞を受賞したということに自信を持ってほしい。人生楽しんで頑張って!」と語りました

高校生の部の最終審査員長である女優でエッセイストの星野知子さんは、「人とどうやってつながっていくのか、その思いや模索をどう文章にして、人の心を動かすのか。こういった人として必要なことが受賞作品には表れていた」と講評しました。その上で、「受賞者の皆さんは、すでに人として必要な力を持っている。だから、自信をもってこの先も進んでいってほしい。生きていってほしい。」と思いのこもったエールを受賞者へ贈りました。

小さいけど、確実な一歩

受賞者を代表し、中学生の部、高校生の部で、それぞれ独立行政法人国際協力機構理事長賞を受賞した土井咲子さん(東大和市立第二中学校・3年)、ンバ真陽佳さん(同志社国際高等学校・2年)が受賞の言葉を述べました。

受賞者・保護者の前で堂々と決意を語る土井咲子さん

「西の原爆ドーム、東の変電所」と称され、戦争の悲惨さや恐怖を後世に伝える旧日立航空変電所が残る町で生まれ育った土井さんは、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、平和を自分事としてとらえ意見を発信するべく、変電所から得た平和への願いと行動をエッセイに綴りました。平和を守るための行動の一つとして、今年3月に変電所で行うプロジェクションマッピングについて紹介し、「世界から見たらすごく小さな活動だけれど、それでも平和を考える一人として自分のできる精一杯の小さな活動を続けていきたい」と決意を語りました。

アフリカの赤道ギニア共和国で幼少期の10年間を過ごしたンバさんは、日本とアフリカの相互理解の乏しさを肌で感じてから、世界の課題解決のためには、一対一の人としてかかわり、真の相互理解を目指す必要性があると考え、エッセイでは、相互理解のための活動としてSDGsを通じたワークショップについて綴りました。「お互いを身近に感じ、理解することが、戦争のないボーダレスな世界の第一歩となる」と力強いメッセージを残しました。

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オンラインで表彰式に参加したンバさん。今回の受賞に「私のアイデアを披露する機会を与えてくださり、本当にありがとうございました」と感謝の言葉を述べました

座談会・ワークショップを開催!

表彰式後、受賞者から世界の第一線で活躍されている審査員・来賓の方々へ質問をする座談会や、国際理解のためのワークショップを実施しました。

座談会では、受賞者のこれまでの活動の中で生まれた疑問や、中学生・高校生という進路に思い悩む世代だからこその質問など、思い思いの言葉が投げかけられていました。「中学生に農業教育を普及するためには何をしたらよいのか」という高校生の受賞者からの質問に対して、尾木さんは、「まず、あなたがなぜ農業に興味を持ったのか、自身の経験を伝えてあげてほしい。そうすれば、あなたの輝いた思いに魅了される子がいると思う」と、教員として44年間教壇に立ち続けた尾木さんだからこその返答がありました。

受賞者との座談会では尾木さんを始めとした審査員・来賓の方々へ積極的に質問をしていました。

ワークショップでは、中高生を混ぜて6グループに分け、エクアドルの先住民インディヘナの家族(祖父母・親・子ども)に各々がなったことを想像し、生活の現状から見える課題を考え・共有し、解決策を模索しました。あるグループでは、「課題は、教育と労働のカテゴリーに分けられる。その中で、課題がグラデーションのようにつながっている。例えば、教育を受けられないから安定した職に就けない。そうすると収入が得られず貧困に陥る。貧困に陥れば子供の自由は確保できない。この連鎖を断ち切るためには、第2世代であるお父さん、お母さんの教育の機会を確保すれば、後世が貧困から脱却できるのではないか」との意見が出ました。

長い1日でしたが、受賞者は疲れた様子も見せずに、むしろ同じ思いを持った仲間と出会えた喜びを見せながら、名残惜しそうに帰路につく姿が印象的でした。受賞者同士がつながった瞬間でもあり、今後の活躍が楽しみです。

自身の中に燻る世界への思いと向き合い、考え、言語化し、人生の目標を明確にするきっかけとなる国際協力中学生・高校生エッセイコンテスト。2023年度の募集は、2023年3月頃募集テーマ公開、2023年6月頃募集開始を予定しています。