シリア難民を含む13万人の住民に裨益する下水処理施設(トルコ・ハタイ)

2022年12月14日

トルコ南東部において在トルコ日本大使館の主催によるプレス向けツアーが開催され、11月15日には、円借款事業「地方自治体インフラ改善事業」において完工されたハタイの下水処理施設を視察しました。

本記事では、プレスツアーの一部の様子をお伝えします。

ハタイ-シリア難民も暮らす国境の都市-

2011年から続くシリア内戦以降、隣国に位置するトルコにはシリアからの難民が多く暮らしており、2021年時点で一時保護の登録者数は約373万人に上ります。トルコの総人口は2021年時点で約8,468万人であり、トルコの人口と比して約4%に相当するシリア難民が、現在トルコ国内で生活しています。特に、シリア難民はトルコとシリアの国境付近のトルコ南東部の都市に多く居住しており、同地域では上下水道や廃棄物処理といった生活に必要なインフラ整備が十分に間に合わない状況に陥っています。特に、数年間の間に人口が急増した都市では、必要なインフラ整備に十分な予算の獲得が難しい状況があります。

JICAは、シリア難民を多く受け入れている地域においてインフラ整備を担う地方自治体を支援するため、トルコの政府系金融機関であるイルラー銀行を通じて、円借款事業「地方自治体インフラ改善事業」を実施してきました。本事業対象地の一つであるハタイは、東部と南部をシリアとの国境に囲まれている都市です。特にハタイのクルクハン市では人口の急増が生じており、2014年に約71,000人だった人口は、2019年には約130,000人まで増加しました。人口増加による衛生環境の低下等に対応するため、JICAはクルクハン下水処理施設の建設を支援しました。今回のプレスツアーでは、2018年12月に完工したクルクハン下水処理施設に鈴木量博駐トルコ大使が訪問し、施設の視察を行いました。

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クルクハン下水処理施設

13万人の住民の生活を支える下水処理施設

当日は天気にも恵まれ、冒頭挨拶では、鈴木量博駐トルコ大使に加え、ハタイにおける下水処理施設の実施機関であるハタイ水道公社(HATSU)ムハンメド・イクバル・ポラット総裁、及びイルラ-銀行アダナ支局ムザファー・アクギュネル局長、JICAトルコ事務所田中優子所長らより、シリア難民が全人口の約30%以上を占めるクルクハンにおいて、インフラの整備が急務となっていること、及び本事業がハタイの生活基盤を支える重要な役割を果たしている点について、発言がありました。

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冒頭挨拶における集合写真(左からアクギュネ局長、田中所長、鈴木大使、ポラット総裁)

施設の視察の際には、ハタイ水道公社より、集積された下水が時間をかけて施設内で処理されることによって、最終的にはきれいな状態で川に排出される仕組みについて、各設備の役割とともに説明しました。鈴木量博駐トルコ大使は、施設の概要や各設備に関する説明に興味深く耳を傾け、日本の支援によって建設されたクルクハン下水処理施設が、ハタイに住む人々の生活を支えている点に関心を示されました。

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用水路の視察

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処理後の排水の様子