幸福の連鎖へ-DJA教育環境改善プロジェクト-

2022年11月30日

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後ろに写っているのが小学校唯一の教室

隊員氏名:太田 健司
隊次:2021年度1次隊
職種:小学校教育
任地;ルウェロ県ンデジェ
出身県:東京都

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教室の中はこんな感じ。こんな環境でも、子ども達は一生懸命勉強しています。

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完成した図書館の前で、教科書を手に嬉しそうな子ども達

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新しい文房具にもニッコリ

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完成した図書館(左)

「こんな環境で勉強している子達がいるなんて…」

そう衝撃を受けたのが去年の12月。10ヶ月以上にわたったDivine Junior Academy(DJA)の教育環境改善プロジェクトが、11月15日に完了した。このプロジェクトは、貧しい農村部にある学校の生徒たちのために、学校に図書館を建設し、本や文房具などを寄付するものだ。

DJAは、戦争やエイズなどで夫を失ったシングルマザーとその子どもたちのための学校で、とても低い学費で運営されている。この学校がなければ、この地域の子供達は「貧しい、学校に通えない、進学や就職ができない、貧しい」という「貧困の連鎖」の中を回り続けることになっていただろう。ただ学費が低い分、この学校には教材もしっかりとした教室もない。強い雨が降ればもう授業はできない。教科書もないので、授業は先生の経験頼りだ。

またこの地域では、英語が大きな課題の一つだ。ウガンダの公用語は英語だから、学校や就職の試験は英語で行われる。しかしこの地域のような農村部では、民族語による会話がほとんど。学校に通えたとしても「英語ができない、試験を突破できない、進学や就職ができない、貧しい、生まれた地域に住むしかない、英語ができない」という、別の「貧困の連鎖」に飲み込まれてしまうのだ。

今回、こんな環境にあったDJAに図書館と教科書を届けることができた。今まで先生方の経験だけに頼って行われていた授業が教科書に基づいて行われるようになれば、教育の質の向上につながるはずだ。それに先生がいないときにも、図書館に来れば教科書を使って自分で勉強することができる。

日本から寄付していただいた英語の本や筆記用具なども、図書館に備えることができた。これがあれば、英語の本を読むことを通して自然に英語力を身につけられる。物語から道徳や心情を学ぶこともできるだろう。伝記から将来の夢を見つけられるかもしれない。また筆記用具を備えられたことで、ペンやノートがないから勉強できないという「貧しさによる学習機会喪失」を防ぐことができる。加えて日本から届いたきれいなノートやペン、可愛い形の消しゴムなどは、勉強に向かう意欲も高めてくれるだろう。

正直、苦労も多かった。建設業者が期日を守ってくれなかったり、学校代表者から約束と違う要求をされたりもした。だが図書館が完成し、本や文房具を届けた時の子どもたちの嬉しそうな顔は、こうした苦労をすべて忘れさせてくれる程キラキラと輝いて見えた。

加えて、このプロジェクトを通して多くのことを学ぶことができた。十分な環境の整っていない学校の存在、「貧困の連鎖」の実情、発展途上国支援の難しさや苦労、子どもたちが喜ぶ顔を見られた時の嬉しさ。このプロジェクトに挑戦しなければ、こうした学びは得られなかっただろう。帰国後はこのプロジェクトを通して得られた学びを、日本の子どもたちに伝えていきたい。

DJAの子どもたちはこの図書館や教材を使って学び、貧困の連鎖を断ち切る。このプロジェクトの話を聞いて世界に関心をもった日本の子どもたちは、きっといつかどこかで、誰かの力になってくれる。その行動が、次の笑顔と協力を創る。こうして「貧困の連鎖」が「幸福の連鎖」へと変わっていく。今回のプロジェクトが、「幸福の連鎖」のきっかけになったらうれしいと思う。