協力隊経験は人生を深める旅。この旅をしないのはもったいない。(後編)

2021年9月6日

第4回:室根 由寛さん(村落開発普及員、2008年度2次隊、任地:ムバレ県)

20周年企画 隊員OVインタビュー

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【室根 由寛さん プロフィール】
2008年、村落開発普及員としてウガンダの青年海外協力隊に現職参加制度を利用して参加。日本福祉大学にて国際開発学の修士課程を履修後、JICAパプアニューギニア事務所、JICAマラウイ事務所を経て、現在はJICAモンゴル事務所にて企画調査員(ボランティア事業)に従事。青年海外協力隊事業に従事する傍ら、自らもボランティアとして活動を続けている。直近では2019年台風19号で被災した長野県長沼地区で災害ボランティア活動に参加して被災地を支援した。今後もJICA海外協力隊事業に携わりながら、自らも“ボランティア”として被災地支援等の活動を続けていきたい。

インタビュー前半では室根さんに参加したきっかけやウガンダの印象などをお伺いしましたが、後半では協力隊参加での心境の変化やその後のキャリアなどについてお伺いしました。

(JICA)協力隊経験の中で、心残りはありますか?また協力隊に参加したら、やってみたいことはありますか?

(室根さん)心残りだらけです。協力隊時代の自分は開発学を理解していませんでしたので(派遣終了後、開発に関心を持つようになり、大学院に進学。その後、国際開発学修士号を取得)、できれば修士号を取得した後にフィールドワーカーとして活動してみたかったです。大学院で論文にまとめている参加型開発手法(PRODEFIモデル)を取り入れて、再度、地域社会の現金収入向上活動について、地域の長たちと話し合ってみたいと思います

(JICA)協力隊に参加する前と後とでは、心境の変化などありましたか?協力隊の経験はその後のキャリアをどのように変えましたか?

(室根さん)帰国する際は活動中に任地で知り合った友人(ジャネット)との涙、涙のお別れでした。わかり易く言えば、ウルルン滞在記を体験したように思います。協力隊に参加したことで、アフリカへの興味関心が高まり、修士号を取得するために、現地調査でマラウイにいくなど、大きな変化がありました。協力隊に参加する前は自分が大学院の論文調査のためにマラウイに行くなど考えにも及びませんでした。青年海外協力隊には現職参加制度を利用して参加させてもらいましたので、任期終了後、職場復帰したのですが、開発への思いが抑えられなくなり、大学院への進学後、JICA海外協力隊事業のVCとしてキャリアを進めています。(PNG、マラウイ、モンゴル)
その間にも、2020年台風19号で被災した長野県帆保地区でJOCAメンバーと被災地支援ボランティア活動に従事し、その後、TOKYO2020オリパラ大会組織委員会にて勤務をして、現職(ボランティア調整員)に至ります。

(JICA)現隊員やこれから協力隊を目指す人に向けたメッセージをお願いします。

(室根さん)人生を大きな「旅」として捉えている自分から、皆様へ
こんな時代ですから、「軽々しく旅行してください」とはいいづらいのですが、しかるべき時がきたらぜひ、旅に出てほしいと思います。なぜなら、わたしはどんな旅にも、もたらしてくれる何かがあると考えます。
個人的な考えの中で旅にはいくつかの種類に分けることができると考えています。
それらを分類すると1)自分探し、2)出会い、3)冒険に分けることができます。そしてわたしはJICA海外協力隊事業への参加によってこれら1)~3)を体験として得ることができました。
協力隊への参加を旅と表現するのであれば、これに勝る旅はわたしはしりません。
その根拠として思いつく点を書いてみます。1)自分探し:自分の知らない一面に気づくことができました。自分の思っている以上に好奇心があり、その気持ちの赴くままに進むことで時には失敗もしますが、得ることができたものも多くあると感じています。人生において自分への"気づき"は旅の中で感じることが多いのではと思います。2)出会い:ウガンダの人たちに寄り添い、共に暮らす中で忘れることができない出会いをいくつも知ることができました。さらに言えば協力隊時代の出会いはウガンダの人に限らず、多くの仲間ももたらしてくれました。10年以上経った今でも頻繁に連絡を取り合いながら当時の思い出を語る仲間を持つことができたことはこの事業に参加したおかげです。当時の苦楽をわかちあった同体験があるからこそ強い絆を感じています。最後に3)冒険:人は冒険の中に身を置くことで成長できると考えます。知らない土地にいき、食べたことのないものを食べて、はじめて聞く言葉を覚える、こうした冒険の要素が体験できるのも、協力隊事業ならではと考えます。

2年という限られた時間の中でしたが、協力隊へ参加した経験が、自分を大きく成長させる機会になったことは間違いありません。わたしの人生の旅の先輩として尊敬している沢木耕太郎先生は「旅も人生も深めるなら1人がいい」と述べています。わたしも同意見で、先生の言う通り向き合うべきは自分自身なのかもしれません。協力隊事業への参加は一人旅とは言えないのかもしれませんが、人生を深める旅になると信じています。
最後に、現在、協力隊として派遣されている人は己の考えを持ち、逞しく活動をしてほしいと思います。そしてこれから協力隊参加を検討している人に向けては、この旅の"きっぷ"は思わぬ場所へ導いてくれるはずです。ぜひ期待と好奇心を抱いて、飛び乗ってほしいと思います。

(JICA)隊員を終えてからも尚、青年海外協力隊事業に携わる道を選ばれたていらっしゃる室根さん。ぜひ今後もJICA海外協力隊の魅力を多くの人に伝え、また国は違えども、任国で活動するJICA海外協力隊員をこれからも陰で支えていただけたらと思います。ご協力ありがとうございました。

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配属先FDNCの様子:アメリカ、イギリス、ドイツのボランティアと協働生活をしていました。フェンス修理から、農村調査に至るまで様々な活動をおこないました。

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近隣地域でネリカ米の普及活動に取り組みました。その中でもBushilusa村は思い出のある村です。失敗続きのネリカ米でしたが、水田作りから田植えまで村の皆様と協力して実施しました。
(注)ネリカ米(New Rice for Africa:NERICA)とは、高収量のアジアイネと病気や雑草に強いアフリカ稲を交配することによって出来上がった品種の総称です。JICAでは1996年以降、専門家や協力隊員の派遣などを通じて、品種開発・普及を支援しています。