シニア海外ボランティアとしての2度の活動から学んだこと。(後編)

2021年10月22日

第9回:川並 浩司さん
(体育、2012年度3次隊 2018年度2次隊、任地:ワキソ県キラ、カンパラ)

20周年企画 隊員OVインタビュー

【画像】

【川並 浩司さん プロフィール】
神戸市立中学校体育教員として36年勤務し退職。退職後にネパールでのボランティア活動に参加。その後、シニア海外ボランティアに応募し合格。2013年1月よりワキソ県キラのシモニPTCで2年間活動。2018年10月から2020年3月までカンパラのチブリPTCで活動。現在は神戸市公立中学校で活動中。

いざ活動を始めようとしたら、1クラス60名でサッカーボール1個!という環境だったという川並さん。後半は活動の苦労話や思い出話をインタビューしました。

(JICA)活動の環境が整っていないと、何から始めたらよいのか、途方にくれてしまうと思いますが…どのように乗り越えたんですか?

(川並さん)まずは、現地の実態を知るために近隣の小学校の授業を見学に行きましたが、どこも状況は同じでした。これがウガンダの現実なんだと気づき、教員養成学校の学生が小学校の先生になった時に、体育の授業を頑張ってもらうためには「多人数で施設や用具が全くないという状況でも体育の授業はできる!」ということを教えなくては、と思いました。そこで、学生たちが「体育は楽しい、自分も体育の授業をやってみたい」と思うような指導をすることを一番の目標にしました。しかし、実際には「どのような運動をどのような形で指導すればよいのか」…本当に悩みました。

(JICA)環境が整っていない中で、楽しいと思ってもらえる授業…さぞかし苦労が尽きなかったのではないでしょうか。そんな苦労の中でも、ウガンダでの隊員活動や生活で楽しかったことや嬉しかったことなど一番の思い出はなんでしたか?

(川並さん)2014年最初に派遣されたとき、ウガンダの小学校教員養成学校(PTCと略されます)でハンドボール大会が初めて実施されることになり、所属先のPTCも参加することになりました。しかし、所属先の先生たちは誰もハンドボールを知らない!というので、急遽指導を依頼され実施したことです。
練習を始めるにあたり、まずは近くの林から切り出した木材でゴールポストを作り、ゴールネットは不要になったモスキートネット(蚊帳)を活用し、手作りでハンドボールコート作りました。色々と苦労しましたが、所属先の学校が第1回ウガンダ小学校教員養成学校ハンドボール大会で見事優勝することができました。

(JICA)ハンドボールを知らなかった生徒たちを優勝に導くとは!生徒たちにとっても忘れられない思い出になったことと思いますし、新しいことに挑戦する楽しみを分かってくれたんではないでしょうか。3年半の活動の後、コロナのために緊急帰国となってしまいましたが、心残りなことも多かったのではないでしょうか?

(川並さん)2020年3月に緊急帰国する時点で、PTCでは小学生の発達段階(学年)に応じた適切な体育指導法を学習していたところでした。本当なら、あと半年、私の任期が残っている時期でしたし、学生たちがようやく理解しつつあったところだったので、実技体験を通してもう少し実践的な指導方法を習得させたかったです。

(JICA)活動を終えて、帰国する際はどのような思いがありましたか?参加する前と後とでは、心境の変化などありましたか?

(川並さん)ウガンダの活動では思うようにできなかったことが多々ありましたが、生活や活動のすべてを通して異文化の中で生きていく難しさとそれを乗り越えていく楽しさを同時に体験できたと思います。これまではあまり深く物事を考えずに動くほうでしたが、色々な場面で物事を一方向からだけではなく色々な方向から見つめ考え、そして行動するようになったと思います。
特に小学校教員の養成に携わったので、「良い教師とは」また「人を育てるとは」どういうことかを深く考えるようになりました。またウガンダの生活を通して日本を見ると、決して文化や科学が発達していることが幸せであるとは言えないことも多々あると思うようになりました。

(JICA)日本での経験も豊富な川並さんも、ウガンダという異なる環境では、新たな発見や気づきがあったんですね。これから協力隊を目指す人や、現在、隊員として活動されている人に向けたメッセージをお願いします。

(川並さん)まず一歩を踏み出しましょう。
上手く行ったこと(成功)は自信になります。
上手くいかなかったこと(失敗)は工夫と努力によって成功と自己成長への材料となります。
協力隊への受験・派遣前国内研修・現地活動・帰国後の活動など体験することのすべてが自分の成長につながります。

(JICA)川並さんインタビューへのご協力ありがとうございました。
任国での経験は成功も失敗も自己の成長に繋がる…日本で36年もの教員生活を経験されている川並さんのこの言葉には非常に重みを感じます。
普段とは異なる環境に身をゆだねて、活動する協力隊活動では、今まで見えなかったものが見えてきたり、違った視点で見ることが出来るようになったり、自然と世界が広がるのかもしれません。参加を迷われている方は、まずは一歩を踏み出してみませんか?

【画像】

学校の職員と一緒にハンドボールゴール制作

【画像】

第1回ウガンダ小学校教員養成学校ハンドボール大会優勝のシモニPTCチーム