協力隊の任期が終わってからも続く挑戦。(後編)

2021年11月26日

第13回:鰐渕 元貴さん
(食用作物・稲作栽培、2015年度1次隊、任地:セレレ県セレレ)

20周年企画 隊員OVインタビュー

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【鰐渕 元貴さん プロフィール】
1993年生まれ。奈良県出身。大阪府立大学で農学を専攻し、卒業後同大学院に進学。在学中の2015年から2年間、大学院を休学して青年海外協力隊に参加。ウガンダ東部セレレ県の国立半乾燥資源研究所に配属され、稲作栽培隊員として活動。大学院を修了後、現在は群馬県南牧村の地域おこし協力隊として活動中。

インタビューの前半では、参加のきっかけや任地での生活についてお伺いしましたが、後半では協力隊参加を通じての心境の変化や、現在のキャリアについて聞いてみました。

(JICA)協力隊参加の経験を今、改めて振り返ってみた時に、何か心残りはありますか?もう1度協力隊に参加できるとしたら、やってみたいことはありますか?

(鰐淵さん)協力隊に参加した当時の自分は、大学を卒業したばかりですごく未熟な部分が多かったと思います。もし、もう一度今の状態で協力隊に参加すれば、農業に関しても、それ以外のことに関しても、当時の自分よりは多くのことを伝えられるのではないかと思うのですが、その反面、未熟な状態でウガンダに行って、その当時の自分ができる限りのことをやったからこそ、今の自分に繋がる学びや成長を得られたのだと考えているので、力不足は多くあったと思いますが、これをすればよかったという後悔や心残りは特にないです。協力隊の任期は終了しましたが、協力隊経験を経て成長した一人の人間として、これからもウガンダと関わりながら生きていけたらいいなと思っています。

(JICA)協力隊活動は、その時々のキャリア形成の段階で、参加する人にとって、違った役割を担っているのかもしれませんね。「その時の自分にできる限りのことをやる」というのは簡単ではないと思いますが、それにより協力隊活動を通じて、自分自身も変化、成長を遂げることが出来るのかもしれませんね。活動を終えて、帰国する際はどのような思いがありましたか?参加する前と後とでは、心境の変化などありましたか?

(鰐淵さん)帰国する際は、充実した2年間を過ごせたという満足感や、すごく居心地のよかった任地を離れる寂しさ、これから日本に帰って新しく始まる人生への期待など、様々な感情を抱いていました。協力隊の経験は、様々な意味でその後の人生に多大な影響を与えていると思うのですが、ひとつ大きく変わったのは、帰国後、日本社会のことを客観的な視点で見れるようになったことだと思います。その最たる例が、日本の少子高齢化社会の現状を再発見したことで、これは真逆の社会構造のウガンダで生活をしたからこその実感だと思っています。そういったような思いから、ウガンダでできた繋がりや経験を活かしながら、日本の社会にも貢献できるような仕事ができればいいなと考えるようになりました。

(JICA)ウガンダでの経験を今度は日本の社会に還元したいということですね。現在のキャリアについて教えてください。

(鰐淵さん)大学院を終了後、現在は高齢化率日本一の自治体である群馬県南牧村で、地域おこし協力隊として活動をしていて、今年で任期終了の3年目を迎えます。主な仕事として、一緒に移住してきた妻と一緒に「村の喫茶店もくもく」という喫茶店を営業していて、お店ではウガンダのコーヒーと、村の農産物や自分で栽培した作物を利用した食事のメニューを提供しています。地域おこし協力隊としての任期終了後も、自分たちで独立してお店を運営していく準備を進めていて、ウガンダでの経験と繋がりを長期的に地域の活性化に活かせるようにしていけたらいいなと思っています。

(JICA)「村の喫茶店もくもく」でウガンダのコーヒーも飲めるんですね!今もウガンダ繋がられているんですね。

(鰐淵さん)喫茶店でウガンダのコーヒーを提供しているほか、ウガンダでつながりがあった方たちの支援するグループが作る雑貨を販売しています。チテンジを使ったカラフルな雑貨は、地域のお客さんたちにも好評で、子供からお年寄りまで幅広い世代の方に購入していただいていますが、特に嬉しかったのは、村の小学生や中学生がお店に遊びに来てくれた時に、自分のお小遣いから雑貨を買っていってくれたことで、嬉しそうに雑貨を手に取って、どれを購入するか真剣に検討していた姿は見ていて胸が温かくなりました。

(JICA)遠い群馬県の南牧村とウガンダが繋がっているのは不思議な縁ですが、子供たちやお年寄りなど、普段アフリカと関わりが少ない方たちが自然にウガンダを身近に感じてもらえるのは嬉しいですね。現在活動中の隊員やこれから協力隊を目指す人に向けたメッセージをお願いします。

(鰐淵さん)特にこのコロナ禍の時代に協力隊として活動をすることは、様々な制限や束縛が伴う非常に難しいものであると思います。しかし、必ずしも協力隊の期間中に目覚ましい成果を出す必要はなく、協力隊で得た経験や気づきを、そこからの自分の人生にどのように活かしていくのかが大切なことだと思うので、目先の結果にとらわれすぎず、長い目で考えて自分が最善と思う活動に、挑戦し続けてほしいなと思います。

(JICA)活動の場がウガンダから、群馬県に変わっても、地域の課題解決のために、地域の人と一緒になって活動されている様子は非常に興味深いです。鰐淵さん、インタビューへのご協力ありがとうございました!群馬県でウガンダを身近に感じることのできる「村の喫茶店もくもく」ぜひぜひ皆さんも訪れてみてください。

(注)村の喫茶店もくもく

住所:群馬県甘楽郡南牧村大字小沢1238番
電話番号:080-8492-5469

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村の喫茶店もくもくのメニュー

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喫茶店で販売しているウガンダの雑貨