全力で取り組んだ経験がゆっくりと人生に効いてくる(前編)

2021年12月9日

第14回:長谷川 昌貴さん
(PCインストラクター、2010年度3次隊、任地:カンパラ)

20周年企画 隊員OVインタビュー

【画像】

【長谷川 昌貴さん プロフィール】
1976年生まれ。大学にて環境情報学を専攻。2003年から北京市にて中国進出支援コンサルタント業務に従事。2007年から太陽光発電用シリコン製造会社勤務。2011年から2年間、休職制度を利用し協力隊に参加。ウガンダのナカワ職業訓練校(以下、NVTI)にてPCインストラクターとして活動。現在は山形県鶴岡市にあるバイオ素材開発のスタートアップ企業にて内部監査として業務に従事。

(JICA)長谷川さんは、現在、バイオ素材開発のスタートアップにてお仕事をされているとのことですが、協力隊参加前にすでにコンサルタントとして、海外での業務を経験されているという経歴をお持ちなんですね。、青年海外協力隊員を経てコンサルタントを目指される方は多いですが、長谷川さんは逆にコンサルタントから青年海外協力隊に参加されているという珍しいケースだと思いますが、まずは参加されたきっかけを教えてください。

(長谷川さん)協力隊への参加は、国際NGO団体への継続的な寄付をしていたことがきっかけです。社会人になってから、アフリカ等で活動する国際NGO団体に寄付をし始めたのですが、毎月団体から届くレターを読むうちに、現地への興味が大きくなり、現地でボランティア活動に従事したいと思うようになりました。実現可能な方法を調べたところ、アフリカ等でボランティア活動をするにあたってはいくつか選択肢がありましたが、今後のキャリアなどを考えた結果、休職制度が利用できる青年海外協力隊が最良の選択であると思い、参加に至りました。

(JICA)勤務先の企業を休職して参加できる休職制度など、制度面が充実している点で、協力隊の派遣形態は、長谷川さんのキャリアプランに合っていたということなんですね。アフリカにはすでに興味を持たれていたようですが、ウガンダに派遣が決まった際のウガンダの印象はいかがでしたか?

(長谷川さん)当時、既にインターネットで様々な状況を容易に得ることができたことに加えOVからの情報や海外での就労経験等もあったため、比較的事前にイメージをしやすいということがありました。派遣前のイメージとしては、第1に、道路、水道、電気などのインフラが未整備であるということ、第2に、時間を含むマネジメントが弱いということがありました。第3に、ウガンダの人々の気質として、奥ゆかしく日本人に似ている部分がある、というイメージでした。

(JICA)実際に派遣されてみて、肌で感じたウガンダはいかがでしたか?環境情報学がご専攻ということですが、通信事情等日本や先進国とは異なることを派遣前は想像していたのではと思いますが…

(長谷川さん)インフラについては、停電、断水が定期的に発生するという、ほぼ予想どおりの環境でしたが、道路事情は思ったより悪い印象でした。カンパラでも一本裏道に入ると、未舗装で穴だらけの道がそれなりにあったので最初の頃は驚きました。通信については、当時WiMAXのサービスが開始されたタイミングということもありネット環境に大きな不便は感じることはありませんでした。マネジメント全般については、ウガンダ全体で見るとではまだまだ多くの改善の余地があったと思いますが、職場のナカワ職業訓練校(以下、NVTI)に関しては、JICAが長い間入っていたこともあり高いレベルでのマネジメントが実施されていました。そのため、大きな違和感なく業務にあたることができたと思います。ウガンダの人々の気質については、派遣前のイメージ通りで控えめの性格の人が多いように思いました。

(JICA)通信事情などは不便は感じられなかったということですが、配属先では、どのような活動をされていましたか?

(長谷川さん)私の職種はPCインストラクターで、職業訓練校にてICT(Information and Communications Technology,情報通信技術)クラスの担当をしていました。配属先のNVTIは、全国の職業訓練校の中核を担う組織であり、講師向けの教育機能もありました。そのため、若年層の生徒向けのクラスの他に、職業訓練校の講師向けクラスも受け持っていました。カリキュラムは、ハードウェアの基礎的な理解、プログラミング、Microsoft Officeスイートの利用法などが含まれました。また他に、ICTクラスの担当以外には、IT機器やネットワーク機器の管理やメンテナンスを実施していました。

(JICA)PCインストラクターという職種でも、ソフトウエアだけでなく、ハードウエアやネットワーク、メンテナンスまで担当されていたとは、とても幅広い活動範囲ですね。そんな幅広い活動中で、何か印象に残っているエピソードはありますか?

(長谷川さん)今でも強く印象に残っているのは、仕事に熱心な職場の同僚と学業に打ち込む生徒たちの姿です。また、配属先の人たちは私の活動を積極的にサポートしてくれました。そのため、充実した活動を継続して行うことが出来たと思っております。

NVTIでは、長期に渡ってJICA専門家が活動をされており、協力隊員の派遣は私が初代でありました。NVTIでJICAといえば、専門家のイメージが強かったため、NVTIのボランティアに対する期待値もかなり高かったと思われます。そのため、当初はかなりプレッシャーを強く感じましたが、周りの人たちの協力もあって非常に活動水準の高いレベルで業務を執り行うことができたと思っております。

(JICA)決して恵まれているとは言えない環境の中で、学業に打ち込む生徒の姿などは、いろいろと考えさせられますよね。少しでも新しいこと、他の先生からでは学べないことを、長谷川さんの学生さんたちも長谷川さんからたくさん学んだのではないでしょうか。協力隊の活動を終えた現在、もし、もう1度協力隊員として活動できるとしたら、やってみたいことはありますか?

(長谷川さん)活動当時から、職業訓練校の課題として、卒業生の受け皿が十分ではないということを感じておりました。製造業等が十分に発展していないため、職業訓練校後も進路が限られているという課題があるように見受けられました。また、協力隊として派遣されている2年間の活動だけでは、その後、生徒たち卒業生らがどのように活躍しているかをきちんと見届けられていないということも気になっていました。もし、もう1度協力隊に参加できるのであれば、職業訓練校と産業の人材マッチングの課題解決の分野に携わってみたいです。

(JICA)大学や専門学校を卒業しても、就職できない若者が多くいるのがウガンダの課題の一つですよね。産業人材育成が課題の一つではありますが、その人材を活用できる産業の支援も重要ですよね。JICAでもウガンダを含むアフリカ19か国で、ビジネスプランコンテストを実施したり、アフリカのスタートアップの支援もしていますが、NVTIの学生さんのような若い層の目標にもなるとよいのですね。

職業訓練校で活動された長谷川さんに前半ではそこでの活動や課題についてうかがいましたが、後半では、活動を終えた時の長谷川さんの思いやその後のキャリアについてお聞きしました。(後半につづく)

【画像】

配属先のナカワ職業訓練校

【画像】

電子科の授業