笑って、泣いて、たくさん助けられた。ウガンダで過ごした1年9ヶ月(後編)

2022年1月24日

第19回:網代 健人さん
(体育、2018年度1次隊、任地:カプチョルワ県セベイ)

20周年企画 隊員OVインタビュー

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【網代 健人さんプロフィール】
大学にて、中学校教諭一種免許及び高等学校教諭一種免許(保健体育)を取得、大学卒業後にJICA海外協力隊としてウガンダに派遣される。(2018年7月)カプチョルワ県で体育教員として1年9ヶ月活動。2020年3月コロナ禍での緊急帰国となった。帰国後は、長野県にて農家として活動。日本滞在中に任期終了を迎え、現在は、群馬県の種苗会社に勤務している。

(JICA)まずは体育を遊びではなく、教科として認識してもらうところから始まった網代さんの活動でしたが、任国と日本の文化、習慣の違いというのも感じることが多かったのではないかと思います。活動中に、何か日本との違いを感じたこと、それにまつわるエピソードなどありますか?

(網代さん)印象的なのは、小学校でみんなで食べた給食です。活動していた小学校では、日本の運動会のようなものはなく、得意な子だけが参加するスポーツイベントが毎年行われていました。参加できない運動が不得意な子供達には、プレイヤーとしての参加権利はありませんでした。そこで、現地の先生に提案し、日本の運動会を真似たものを実施しました。全員が競技に参加できるように工夫がされたものです。この運動会自体は、非常に盛り上がり、練習期間も含め、現地の先生方からも高い評価をいただきました。

(JICA)得意な子も不得意な子も参加できる、みんなが楽しめる運動会、聞いてるだけで楽しそうです。子供たちからしたら、初めての経験、何が起こるかわからない期待感も加わり、本当に楽しいイベントだったでしょうね。子供たちの反応はどうでしたか?

(網代さん)とにかく子供たちは楽しそうでした。運動会だけでなく、運動会終了後に、みんなでご飯を食べたんですが、この「みんなでご飯」という時間は絶対に作りたかったんです。というのも、この小学校ではみんな揃ってお昼ご飯を食べる、いわゆる給食の時間はなかったのです。給食費を払える家庭は少なく、給食を食べることが出来る児童は全体の1%ぐらいでした。子供達は、お昼になると家に帰りご飯を食べて授業時間に合わせて戻ってきたり、最悪、食べずに戻ってきたりします。小学校生活で1度くらいクラスメイトと一緒にみんなで同じご飯を食べて欲しいとの願いを込めて、この日は給食を用意しました。この時に見た彼らのなんとも楽しそうな表情は、今でも忘れられません。

(JICA)初めての運動会。そしてみんなで一緒に食べるお昼ご飯。日本では当たり前のことなのかもしれませんが、任地の子供たちには忘れられない思い出になったことでしょう。みんなの笑顔が目に浮かびます。網代さんの場合、コロナの感染が拡大し、急遽、日本に緊急帰国することになってしまいましたが、心残りは何でしたか?

(網代さん)心残りはやはり、コロナで急な帰国となってしまったので、現地での授業の引き継ぎ、部活の引き継ぎといった部分をしっかりとできなかったことです。任期も延長し、半年任期が残っていたので、活動を資料ベースで落とし込み、現地に残そうと考えていたので、途中で帰ることになり、自己満足になってしまったなと帰国してからも、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

(JICA)自分が不完全燃焼というより、配属先の方への引継ぎなど、任国の方のことを一番に考えるからこそ、配属先の方に対して申し訳なく思うんですよね。それは自己満足ではないと思います。もし、また協力隊に参加できるとしたら、やってみたいことはありますか?

(網代さん)やってみたいことは、発信と交流を軸に、日本人も現地の人も世界をもっとリアルに感じることのできる場を作りたいです。少し抽象的ですが、物理的な距離による“知らない”という現実を改善していくことが世界中の人が幸せになるための一歩だと思ってます。世界中の協力隊員の活動を第三者として視察し発信する“旅人隊員”なんていう枠があればぜひまた参加したいです。

(JICA)旅人隊員!面白いですね。きっとこのインタビューを読まれた方も、網代さんの隊員時代を想像して、ウガンダに旅した気分になってくれるんではないでしょうか?協力隊に参加して心境の変化はありましたか?そして、現在はどのようなキャリアを歩まれていますか?

(網代さん)協力隊に参加したことで、人生の視野はとても広がりました。新卒で参加したということもありますが、社会にはこんなにたくさんの仕事があって、大人になってからも学ぶ人がたくさんいるんだなと知りました。

現在は、群馬県の種苗会社の海外営業部で勤務しています。専門とは、違った分野での挑戦になりますが、与えられた場所と環境で自分のベストを尽くすことで見えてくるものがあるという経験を協力隊でしたことがとても役に立っています。

(JICA)協力隊に参加する前には想像もしていなかった世界が広がったんですね。一歩踏み出してみないと見えない景色があるんですね。協力隊への参加を迷っている人や、協力隊を目指している人に向けたメッセージをお願いします。

(網代さん)協力隊に参加する人には、様々な人がいます。仕事をやめて参加する人、結婚してから参加する人、新卒で参加する人、シニアで参加する人、2年間という時間は思ったよりも長いですし、決断には勇気がいるかもしれません。それでも、私はあの時の自分の気持ちに素直になってよかったなと今思えてます。一人の経験者としてお伝えできるのであれば、とってもおすすめです。今も世界中のどこかで皆さんのことを待ってる人がいるかもしれません。応援してます!!

(JICA)網代さんありがとうございました!新卒で協力隊に参加し、日本との違いに悩みながらも、ウガンダの良さを感じながら活動されていた様子伝わってきました。網代さんの任地は高地に位置しウガンダのオリンピック選手もトレーニングを行う地域であったとのこと。オリンピックに参加された選手との交流もあったそうです!生徒たちも東京オリンピックで日本をさらに身近に感じたのではないでしょうか。

網代さんにご協力いただきました「3分で学ぶ世界」ハフポスト「体育を知らないアフリカの子どもたちと、元熱血高校球児が出会ったら。」のリンクはこちら!ウガンダの体育教育の現状が3分でわかりますので、ぜひご覧ください!

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運動会の後の給食タイム

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キプロティッチ選手(東京オリンピック出場選手)とJICA主催のロードレス大会にて