ウガンダ北部地域の復興経験をソマリアの再建に:ソマリア政府高官をウガンダに招へい

2022年3月3日

ソマリアでは1991年以降長らく紛争が続いていましたが、2012年の連邦政府樹立以降、国際社会の支援を受けながら自らの手で平和構築・国家建設を進めてきました。一方、長年の紛争により疲弊した地方行政やコミュニティの再構築が必要とされています。
そうしたなか、2022年1月31日から2月4日までの期間、JICAはウガンダ政府と協力し、ソマリアと同じように紛争で大きな被害を受けたウガンダ北部アチョリ地域における復興の経験を共有し、ソマリアでの国造り・地方行政やコミュニティ再建に役立ててもらうことを目的として、ソマリアの連邦政府及び地方州政府の行政官を計9名、ウガンダに招へいしました。本プログラムは、JICAがこれまで紛争後の復興支援を行ってきたウガンダ北部アチョリ地域の地方自治体やそのコミュニティなどを視察することを通じて、「開発途上国が相互の連携を深めながら、技術協力や経済協力を行いつつ、自立発展に向けて行う相互の協力」である南南協力を促進しました。

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Nwoya県から発表された内容の一部(左は内戦時代にあった国内避難民が居住するキャンプ、右は現在のインフラが整った様子。)

アチョリ地域の地方自治体とソマリア行政官との間の意見交換では、これまでの復興に至る計画策定や実施、地方自治体とコミュニティとの連携、インフラ整備の重要性、土地問題の解決方法、ドナーからの支援などについて、質疑応答を含め熱心に経験が共有されました。「復興のプロセスはすぐに成果が出るものではなく、時間をかけて取り組む必要がある」と、実際に復興を経験したウガンダの地方自治体関係者ならではの話は、説得力がありソマリア行政官の関心を惹いていました。また、「共に良いアフリカを創っていこう。これを機にソマリアと新しい関係を築いていき、ぜひいつかソマリアに訪問したい」として、行く先々の自治体がソマリア参加者と積極的に連絡先を交換するなど、JICAを仲介にしてウガンダとソマリアとの今後の新たな相互交流にもつながる、実りのある経験共有の場となりました。

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ソマリア参加者の訪問にコミュニティの住民からダンスで歓迎を受ける。

「決して経済的にはまだ裕福とは言えないだろうが、コミュニティが生き生きと輝いて幸せそうにしているのが印象的でした」とソマリア行政官の一人は語ります。訪問したコミュニティでは、伝統的な踊りでコミュニティによる盛大な歓迎を受けました。また、その後の意見交換でもコミュニティにいる多くの女性がコミュニティセンターを活用した活動について積極的に発言する様子を見て、コミュニティ再生の大切さについて身をもって体感していた様子でした。

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地域の住民に様々な情報を伝えるコミュニティラジオにおいて、ソマリアの内務省次官が急遽出演

JICAのウガンダ北部地域に対する協力は、反政府武装勢力である「神の抵抗軍(LRA)」と政府軍との武力紛争が停止し、紛争に伴い北部地域から避難していた国内避難民の帰還が本格化した2009年に開始したものです。以降、JICAは道路等インフラの整備、帰還先のコミュニティの再生、地方政府の能力強化支援などを通じて、国内避難民の帰還と生活再建を包括的かつタイムリーに後押したことが評価され、2021年12月にはウガンダ国会によりJICAの北部復興支援を中心とした長年の協力を称える決議が採択されました。

ウガンダ北部地域では、今回のようなソマリア以外にもこれまでシエラレオネの地方自治に関連する行政官を招へいしたり、南スーダンの税関職員に対する研修を行ったりするなど、紛争から復興・開発へ歩む際の学びの場としてJICAと共にアフリカ紛争影響国の復興に貢献してきました。JICAはウガンダ北部復興支援の経験を人類共通の財産として、今後も周辺国の平和と安定に向けた支援を行っていきます。

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コミュニティの住民と一緒に記念撮影