コロナ禍で逞しく出産するお母さん-双子と三つ子がめっちゃ多い!-

2022年6月7日

JICAウガンダ事務所インターン
長崎大学大学院 熱帯医学・グローバルヘルス研究科
増澤真麗

私は大学院で途上国の保健医療について学んでいます。ウガンダにおける保健医療の現状、開発援助の現場を学びたいと考えウガンダ事務所でインターンとして受け入れていただきました。
インターン期間中、ウガンダのスラム地域における地域医療及び母子保健の現状を知るためにアマニファミリーセンターを訪問しました。
アマニファミリーセンターはカンパラのカニョゴガスラムの入り口に施設を構える産院です。アイルランド出身の助産師である ダイアンさんが2016年から無償医療サービスを提供しており、分娩や産前産後の健診のみならず、子供への予防接種や地域住民のためのHIV検査なども実施しています。

また、アマニファミリーセンターは、NINJA(注)で支援するウガンダのスタートアップ企業(M-SCAN)が、携帯型超音波検査装置を使った妊産婦診断サービスの実証実験を実施した施設であったことをきっかけにJICAとの関係が始まりました。

施設は非常にシンプルで、分娩室兼診察室、産後の休憩室、検査室があり、通常分娩を扱っています。施設の中を案内していただきながら、ウガンダでは産後6時間の母子の経過観察が推奨されているものの、訪問したスラムの現状では元気に赤ちゃんを産んだ後早ければお母さん達は2,3時間で家に帰宅するというお話を伺いました。日本では母子の診察・経過観察や授乳指導を受けた後に帰宅することが多いですが、途上国では出産件数も多い上、施設の収容人数・スタッフの数など医療資源も限られているため、自宅にすぐに帰ってもらわざるを得ないケースが多いのが現状です。また、お母さん達にも、なるべく早く帰宅したいという気持ちがあり、話をしてくださったスタッフの方も自分の出産時も2時間で帰宅したことを教えてくれました。「出産時に汚れた服を片付けなければならないし、家で待っているほかの子供たちがいるから帰ってご飯を作ってあげないといけないでしょう」と当たり前のことのように話をしてくれました。
アマニファミリーセンターがあるスラムにはウガンダ各地から多様な民族の人が定住しており、スラムの中では売春、不特定多数との性交渉、アルコール、若年層の妊娠など様々な課題が山積しています。加えて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響から、若年層の妊娠も3倍近増えているとダイアンさんは教えてくださいました。
ダイアンさんにこの他のCOVID-19影響について伺ったところ、ロックダウン 中の公共交通機関の利用が制限されていたため、医療従事者が職場にたどり着くことができないケースや、病院に辿り着けず道の脇で出産したお母さんがいたというお話を伺いました。COVID-19の感染による直接的な影響(死亡者数等)については検査を受けていない人が多いため測ることができないものの、医療サービス提供の面で様々な影響が出ていたことを知ることができました。

訪問日は、妊産婦と子供に対するワクチン接種を行う曜日であり、子供を抱えたお母さん達が大勢訪れていました。予防接種だけではなく、その前に地域の保健ボランティア(VHT;Village Health Team)が健康教育を行っており、訪問時には家庭内暴力について話していました。ヘルスセンターに来るお母さん達は、主にスラムの住民ですが、時には遠方から話を聞きつけてやってくるお母さんもいるようです。私たちが帰る頃には部屋に入りきらないほど、大勢のお母さんと子供たちで診療所は溢れかえっていました。
今回の施設訪問での会話や光景は、途上国の医療現場の課題を垣間見える一方、逞しく子供を出産してゆくお母さん達の姿が印象的でした。また、ダイアンさんのように現場の課題解決のために、手を尽くして医療サービスを提供するスタッフの姿は非常に鮮明に記憶に残るものでした。

(注)ポストコロナ時代の革新的なビジネスモデル・テクノロジーを生み出すスタートアップ支援を目的として、アフリカ19カ国を対象と行っているビジネスプランコンテスト

問診している様子

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お母さんの必ず出身地を聞くようにしているとのこと。スタッフの経験上、ウガンダの西部、中部出身の人では出産時の出血量が多い傾向にあるようです。背景としては、分娩を誘発・促進するために伝統療法(ハーブや木の根)を煎じて飲む文化があるようです。ウガンダにおける伝統医療についても知る機会となりました。 また、子どもができない親による新生児の誘拐や子どもが元気に生まれたにもかかわらず後に突然死したりいなくなるケースでは出産した親がヘルスセンターに責任を求めてくることもあるので、生まれてきたこと(死産だったこと)をきちんと証明できるように記録を残しているとの説明でした。

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双子の赤ちゃん

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ウガンダ(アフリカ)では双子、三つ子と双生児が生まれることは珍しくありません。日本では非常に稀だと伝えると、非常に驚かれました。中には双子と三つ子を交互に出産していくようなお母さんを見たことがあるとのことでした。

アマニファミリーセンター

【画像】アマニという名前はスワヒリ語で平和を意味します。途上国では病院で治療を受けたり出産したりすることに対し恐れを感じている住民が少なくないことから、お母さんたちが安心して施設で医療を受けてほしいという気持ちから名付けたそうです。