「女子サッカー×平和構築」-サッカーが秘める可能性-TICAD CUP 2022(女子サッカートーナメント戦)開催

2022年9月30日

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初勝利を収めた後の難民・ホストコミュニティチーム

2022年8月19日から21日、JICAウガンダ事務所、ウガンダサッカー連盟(FUFA)、ウガンダサッカープレミアリーグ所属のソルティーロブライトスターズ、認定NPO法人テラ・ルネッサンスの共催でTICAD CUP 2022(女子サッカートーナメント戦)を開催しました。150万人以上の難民を受け入れるウガンダにおいて難民とホストコミュニティの混成チームを含めた女子サッカートーナメントを行うことで、ウガンダ社会における女性のスポーツ分野での活躍の難しさや難民の現状、彼らの夢についての理解促進を図ると共に、同分野におけるJICAの取組みやアプローチを発信し、TICAD8及びJICA事業への認知度を高めることを目的としてイベントを実施しました。本イベントは一般公開ではありませんでしたが、選手、招待客を含む170名以上が参加し、10社以上のメディアで報道される等大きな注目を集め、日本がTICADを通じて目指すアフリカ自身が主導する平和構築及びジェンダー主流化の取組みを、スポーツを通じて多くのパートナーを巻き込みながら力強く後押ししていくイベントとなりました。

終了のホイッスルが吹かれるまで-最後まで諦めない心-

イベントにはFUFAが招待した5チームに加え、5月28日に行われたアジュマニ県のパギリニヤ難民居住区で行ったサッカー教室で形成した難民とホストコミュニティの混成チーム1チーム(パギリニヤ・ヤングレディ・スポーツクラブ)が参加。結成されたばかりの混成チームはユニフォームも無くこれまで裸足でサッカーをしていましたが、イベントの趣旨に賛同した公益社団法人日本女子プロサッカーリーグ(WEリーグ)からユニフォームが、株式会社モリヤマスポーツからスパイクが無償で提供されました。本混成チームはFUFA選出の強豪相手に慣れないサッカーシューズを履いての試合だったため苦戦し初日のグループ戦で敗退してしまいましたが、翌日の5位決定戦では相手に先駆け、チーム初となる得点を挙げることに成功しました。途中同点に追いつかれるも終了間際に決勝点を挙げチーム初勝利を収めました。誰もが同点で終わるかと思った中、最後までボールを追う姿勢を見せ、勝利を決定づけたゴールは関係者に大きな感動を与えました。混成チームの選手は試合後、「最後まで諦めないことの重要性を学んだ」と話していました。困難に直面しながらも、「最後まで諦めない心」という自分の持つ強さに気付いた瞬間だったのはないでしょうか。

相互理解促進のきっかけを

このイベントは難民とホストコミュニティ、一般ウガンダ人高校生との間の相互理解促進を目的の一つとしており、選手は同じ施設内に宿泊することでも交流を深めました。また、サッカーの試合に加え、参加者が劇を披露するソーシャルイベントや円借款で建設したナイル川源流橋への訪問を行い、全参加者同士が交流するきっかけを設けました。ソーシャルイベントではWEリーグで活躍する日本の女子プロサッカー選手から『サッカーと私』というテーマでビデオメッセージを頂き、参加者にも同じテーマで劇を披露してもらいました。国は違えど、サッカーを楽しむ気持ち、サッカーを通して得るものには多くの共通点があり、「サッカーは国境を超える」ことを再認識した時間でした。

南スーダンからの難民と南スーダン政府関係者の交流

隣国、南スーダンではJICA事業として「スポーツを通じた平和促進プロジェクト」を実施しています。同じ「スポーツ×平和構築」をテーマにしている仲間としてお互いの経験や取り組みを学び合うことを目的に、JICA南スーダン事務所の協力の下、南スーダンの青年・スポーツ省から次官を含む三名がTICAD CUPにオブザーバーとして参加しました。イベント期間中及び実施後にJICA及びウガンダ政府関係機関に対して南スーダンが培ってきた「スポーツ×平和構築」に関する知見を共有し意見交換を行う機会を持った他、イベント最終日には、南スーダン政府関係者と難民・ホストコミュニティ混成チームの間で歓談する場を設け、青年・スポーツ省次官からはスポーツが人生の中で果たす役割を含めた激励の言葉と、国外に逃れた国民が早く母国に戻れるよう政治プロセスが進行中である旨が述べられました。なお、南スーダンからの難民と南スーダン政府関係者の交流実施にあたっては細心の配慮が求められたため、事前に難民・ホストコミュニティ混成チームの代表者、ウガンダで難民問題を主管する首相府難民局、UNHCR、そして南スーダン政府関係者に情報共有・相談した上で実施されました。

JICA海外協力隊による日本文化紹介

イベント期間中に在ウガンダ日本国大使館協力の下、JICA海外協力隊による日本文化紹介が行われました。開会式で隊員によって披露された空手は大いに盛り上がり、開会式後にウガンダ教育・スポーツ省のスポーツ担当副大臣に空手を指導する場面も見られました。また、日本文化紹介ブースを設営し、法被・浴衣の試着、福笑い、箸を使用した豆つかみ等、参加者が日本文化に触れ楽しむ機会を提供した他、閉会式では浴衣や空手着といった日本の伝統的な衣装で参加賞を手渡すなどイベントに彩を添えました。

「スポーツ×平和構築」の灯を絶やさないために

地元誌の記事掲載、テレビニュースでの紹介など地元メディアでも大きく取り上げられ、開会式には共催関係者の他、在ウガンダ日本大使、首相府難民局、教育・スポーツ省(スポーツ担当副大臣、スポーツ担当局長)、UNHCR 及び UN Women の国代表、南スーダン国青年・スポーツ省次官が参加するなど、「スポーツ×平和構築」が注目されている昨今の潮流を背景に本イベントは大きな注目を集めました。
しかし、長期的な視点から「スポーツを通じた社会包摂と平和の促進」を促すためには、継続した支援が必要です。今回のイベントで灯った「スポーツ×平和構築」の火を絶やさぬよう、外部機関やJICA他事務所と連携の上、「スポーツと平和の祭典」とされるオリンピックの聖火リレーのように皆で協力しながら未来に繋げていければと願います。

イベントの様子や写真は随時JICAウガンダフェイスブックとツイッターでも更新しています。

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トロフィーを掲げて喜びを爆発させる優勝チーム

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在ウ日本大使、教育スポーツ省スポーツ担当副大臣、スポーツ担当局長と歓談する内山事務所長

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日本の伝統衣装を着て優勝賞品を渡すJICA海外協力隊

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日頃の練習の成果を競う選手

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浴衣を試着する難民・ホストコミュニティチームの選手

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難民・ホストコミュニティ混成チームと言葉を交わす在ウ日本大使と内山事務所長

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