jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

JICAウズベキスタン事務所長の坂井です。

この国に一度もいらっしゃったことのない日本の皆様にとって、ウズベキスタン(と、その周り)は、頭の中の世界地図ではっきりと思い描くのがもしかすると難しい国かもしれません。また少しの興味を持って頂いている方には、東西文明が交差するシルクロードの歴史、砂漠とオアシスのイメージと共に想起される「異国」という語感がぴったりの国、かもしれません。

【画像】

5月の半ばに実際に首都タシケントの近代的な空港に降り立ち街に出ると、思い描かれているイメージはきっと良い意味で覆され、驚かれると思います。昼日向こそやや日差しが熱いものの、朝夕は日本の春・秋の最高の一週間をややカラっとさせたような爽やかさ。東南アジアや南アジアの雑然とした人や渋滞とはかけ離れた、整然としてクリーンな街並み。クレジットカードとスマホのアプリ一つあればどこに行くにも便利で困らない地下鉄・バス網や使いやすいタクシー。夜10時・11時でも戸外に子供の声が響き、女性が独り歩きしても不安を感じない治安。新鮮な野菜と、香草の香り豊かな食事。地下鉄内でお年寄りを見ればすぐに席を譲る文化。若干(そこだけは何故か)気性の荒い車の運転マナーさえ気を付ければ、東南アジアに比べても、日本人の過ごし易さでは劣らない国です。

政策や経済のパフォーマンスに目を向けると、近年は6%超のGDP成長率を安定して続けており、現在約3千8百万人の人口が2050年には5千万を超え、かつこのうち生産年齢人口が多くを占める、生産力と内需の拡大が今後中期に渡って続いていく見込みの国です。91年の独立以来、漸進的な市場経済化を進めてきましたが、特に2017年の二重為替制度の廃止以降、民間企業の技術と資本を活用した成長を志向して改革を進めています。例えば2025年の世銀の「公的セクターでのDXが最も進んだ国」ランキングでは世界ベスト9位(197か国中)に選ばれ、同じく世銀が2020年まで実施していたDoing Business Indexの「開業のし易さ」ランキングでは8位(190か国中)にランクされています。こうした行政のパフォーマンスは、この国の官僚の勤勉さに支えられています。私自身はこれまで駐在含め東南アジア中心に仕事してきましたが、それらとの比較でも、現政体としては独立後30余年という比較的若い国であるこの国の、大統領の方針に沿った改革のスピードとコミットの確かさは、頭一つ抜けていると感じます。従来よりエネルギーは基本的に自給、課題である水の確保についても近年キルギス・タジキスタンとの間の協定合意を再開するに至っており、また特定の国に偏らずバランスのとれた外交を行っているこの国は、現在安定した成長軌道を進んでいると考えています。

ウズベキスタンにとって、日本は中立的で信頼できるパートナーです。その信頼は、第2次大戦後の抑留者の方々の勤勉と規律の記憶に源を発しており、また戦後目覚ましい発展を遂げてきた日本から技術や社会・経済のノウハウを得たいとの期待も大きなものがあります。ウズベキスタンは従来は資源エネルギーや海外の出稼ぎ先からの送金が経済を支えていましたが、現在は、産業の高度化に向けての取り組みが進められており、生産性と付加価値の向上を主たる成長源泉とする経済モデルに転換が図られています。タシケントを走る自家用車の大半が国内でCKD生産されたものであることからもわかるように、この国は現時点で既に一定の産業基盤を有していますが、その土壌に日本の企業やアカデミアがもつ人材や技術・資本が加わることで、ウズベキスタンと日本、双方の成長につながっていくと考えています。JICAはウズベキスタンにおいて、製造業や農業の高度化、エネルギー利用の効率化、物流の強化、保健医療や教育の強化、地方部でのバランスの取れた発展(付加価値と雇用の創出)を支える、数多くの技術協力/資金協力事業を展開しています。こうした事業を一つの手段として、日本の皆さまと共に、我々の先人が築いてきた日本への期待と信頼を、より一層大きく揺るぎのないものにしていくべく、取り組んでまいります。

2026年7月
JICAウズベキスタン事務所長 坂井 完