所長あいさつ

2023年6月に新しく着任しました。これまでは、南アジア地域というインフラストラクチャーが脆弱な国々を対象に、運輸や電力を中心に国造りの基礎を計画づくりから進めるようなキャリアを積んできたので、ウズベキスタンで体験する全ての出来事が新鮮です。

ウズベキスタンに着任して驚いたことは、地下鉄による公共輸送ネットワークが首都に整備され、広い道路の恩恵で渋滞も相対的に少なく、国内で生産された多種多様なモデルの車が走り、女性が夜道を一人でも歩けるほどに治安に優れ、生活必需品も不自由がなく、美味しい生鮮野菜と果物が清潔感のあるマーケットに溢れていることです。

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一方で、私は、3600万人という中央アジア最大の人口を抱えるウズベキスタンでは、地球規模の気候変動と、水を含む天然資源の不足に備えた持続可能な開発に取り組む膨大なニーズがあるという実感も持っています。ウズベキスタン政府は、2030年までにGDP倍増を掲げています。この実現に向けて、再生可能エネルギーの活用、増加する人口に対応した食料増産と塩害対策の両立、雇用の創出に繋がる新しい産業の育成、保健・教育分野を中心に包摂的で平等な社会サービスの維持など、ウズベキスタン政府の取り組みに対して、JICAが貢献できる分野は無限大にあると感じます。

今、ウズベキスタンは、新しい時代に向けた大きなターニングポイントに立っていると2023年7月の大統領の就任スピーチでは言及されています。新しい時代での経済・社会の発展に向け、ウズベキスタンが大いなるポテンシャルを感じさせる国であることは間違いありません。

ポテンシャルの1つ目は、識字率100%で教育水準の高い人口です。経済社会発展の礎は言うまでもなく人です。2つ目は、比較的バランスの取れた経済構造です。農業から製造業、サービス業への転換がバランス良く進んでいます。特に、物流の制約がありながら、製造業が発展していることは特筆に値します。3つ目は積極的な経済改革が進んでいることです。投資環境の整備度合いを示す世界ランキングは、ここ数年で着実に上昇しています。

そして最後、4つ目のポテンシャル、これは歴史・文化的な魅力です。古くからシルクロードの交易地として栄え、今なお美しく荘厳なイスラム建築で世界中の人々を魅了し続けているサマルカンドに代表されるように、気品ある文化的な土壌は、目に見えない要因として、経済社会発展の上で大きな力を持つものと信じています。

こうした現況を踏まえ、JICAはウズベキスタンにおいて、(1)持続可能な経済成長と産業の多角化・高度化、(2)公平かつ持続可能な社会の構築、(3)ガバナンスの強化、の3つの重点分野を掲げ、資金協力、技術協力、ボランティア事業、民間連携事業等、様々な形態で活動を展開しています。特に、私は、これから数年は、産業人材の育成と雇用創出、省エネルギー社会の実現、医療と教育分野での公共サービスの向上が重要と考えています。

本ウェブサイトでは、ウズベキスタンにおけるJICA事業について紹介しておりますので、是非ご覧頂き、変革期のウズベキスタンの現状や未来、さらにはそこに繋がってくる歴史について、共に考え、行動するきっかけとして頂けましたら幸いです。

日本からは地理的にも遠く、交流も多くない地域ですが、周りを大国に囲まれたこの地域が高い独立性を保ちながらより民主的に経済・社会の発展を遂げていくことは、広く周辺の安定と発展にも寄与すると信じています。ウズベキスタンと日本が「身近な友人」となるべく微力ながら努めていきたいと思っています。

2023年7月
JICAウズベキスタン事務所長 尾藤 好文