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日本ASEAN友好協力50周年 〜JICA-DSPより得た学びを母国の発展に生かす〜

日本とASEANは、1973年に友好協力関係を結んで以来、強固なパートナーシップを築いてきました。成長を続ける ASEAN地域では、多くの才能ある若いリーダーが台頭し、世代交代が進んでいます。このような背景を踏まえ、ASEAN出身の3人のJICA奨学生が、ASEAN地域のさらなる成長と日本との協力関係について対談を行いました。

First Interviewee

氏名: Nuraini Binti Muhammad Naim(ヌライニさん)
出身国と所属先:マレーシア保健省
留学先:京都大学大学院情報学研究科
JICAコース:SDGsグローバルリーダープログラム
学位:博士課程
JICA奨学金の期間:2022年10月4日〜2025年9月30日

Second Interviewee

氏名: Louie Hitosis(ルイさん)
出身国と所属先:フィリピン開発銀行
留学先:神戸大学大学院国際協力研究科(GSICS)
JICAコース:人材育成奨学計画(JDS)
学位:修士課程
JICA奨学金の期間:2021年10月29日〜2023年10月10日

Third Interviewee

氏名: Seng Tynei(タイネイさん)
出身国と所属先:カンボジア商業省
留学先:同志社大学大学院ビジネス研究科
JICAコース:アジア地域投資促進・産業振興
学位:修士課程
JICA奨学金の期間:2022年9月11日〜2024年9月30日

ASEAN と日本の友好協力関係が 50 周年を迎えました。 ASEAN と聞いて最初に思い浮かぶことは何ですか?

タイネイ:ASEANは、1967年8月8日にタイのバンコクで設立されました。2023年現在、ASEANは10ヶ国で構成されており、私の母国であるカンボジアは1999年、10番目に加盟しました。現在、東ティモールの参加が検討されており、加盟国は間もなく11ヶ国となるでしょう。ASEANの3つの柱である「政治・安全保障共同体」、「経済共同体」、「社会文化共同体」が設立の背景を表しています。平和、自由、繁栄を目指した連携を通じて友好協力関係を結ぶことが、東南アジアの国々の意思なのです。

ルイ:子どもの頃は、ASEANといえば協力とパートナーシップでした。地域の経済発展を共通の目的として、それを実現するために近隣の国々が互いに助け合うというものです。しかし、日本に来てからは、文化や伝統の面でASEANが多様であることを明確に認識するようになりました。

ヌライニ:そうですね。ASEANの国々はどこか似たところもありますが、文化的には非常に多様です。また、同じ歴史的背景を共有し、似たような目標を持っています。今、私たちは西洋世界に追いつくために共に前進しています。私にとってASEANは兄弟愛です。

ASEAN 諸国と日本のパートナーシップは、 1973 年以来、真に協力的なパートナーシップを築き、目覚ましい発展を遂げてきました。この点について、日本で学ぶ ASEAN 諸国の学生としてどのように感じていますか?

ヌライニ:私は東京でのネットワーキングセッションから戻ってきたばかりですが、日本の民間企業の代表者とお会いし、医療のデジタル化についてアイデアや経験を共有することができました。非常に面白い経験でした。

ルイ:日本で学んでいるフィリピン出身のJICA奨学生として、文化交流や学術協力を推進するプログラムに参加できて非常に嬉しく思っています。研究活動と日本人や他の奨学生との交流を通じて、ASEAN各国の共通点と相違点について理解を深めることができました。また、日本のベストプラクティスやイノベーションについて学ぶ機会があったので、フィリピンに持ち帰って母国の発展に貢献したいと思っています。自分自身の能力を高めて視野を広げながら、新しいことを経験して学べるのは本当に名誉なことです。

タイネイ:日本人がいかに熱心に学び、周囲と協力しながら働くことで国の発展に貢献しているかについて、JICA奨学生としてたくさんの学びを得ることができました。

皆さんの出身国と日本が直面する課題には、どのような共通点がありますか?

ヌライニ:私は医療分野出身なので、医療システムに注目しています。マレーシアと日本の医療システムは大きく異なりますが、似たような問題があることに気づきました。日本の医療機関はマレーシアほど混雑していないかもしれませんが、両国とも医療サービスを分散させるための革新的なアプローチを積極的に探しています。両国がこの分野で知識や経験を共有する機会はたくさんあるはずですが、それらの多くは言語の違いによって共有されないままです。公開されている文書や報告書を読んで理解することも困難です。

ルイ:フィリピンと日本は、経済、社会、安全保障に影響を与える大きな課題を3つ共有していると思います。両国とも環太平洋火山帯に位置しているため、自然災害の影響を受けやすくなっています。日本は壊滅的な地震と津波を経験していますし、フィリピンは頻繁に強力な台風の被害を受けています。
また、海面上昇、激しい嵐、降水量の変化など、気候変動の影響にも直面しており、食料の確保、水の安全保障、インフラに悪影響が及ぶ可能性があります。
さらに、両国は所得格差、雇用創出、貿易不均衡などの経済的課題に直面しています。日本は労働力の減少や出生率の低下を解決しようとしていますし、フィリピンは経済の多様化と貧困の削減に取り組んでいます。

タイネイ:カンボジアと日本では、女性の就労率が低いことが非常に似ていると思います。カンボジアの農村部に住む女性は、貧困が原因であまり教育を受けられず、失業状態にある女性も少なくありません。主婦であること、出産すること、家族の世話をすることに役割が限定されています。

ASEANと日本の関係について話し合うヌライニさん(左)、ルイさん(中央)、タイネイさん(右)。

ASEANと日本の関係について話し合うヌライニさん(左)、ルイさん(中央)、タイネイさん(右)。

こうした課題に取り組むために、将来、皆さんの出身国や他の ASEAN 諸国、そしてグローバルな規模で、どのような活動を始めたいですか?その活動に対して、日本にどのような支援を望みますか?

ヌライニ:コミュニケーション技術は進歩していますが、データの相互運用性とポータビリティは、特に医療サービスにおいて依然として大きな課題です。データのプライバシー、機密性、倫理、セキュリティなど、さまざまな問題があります。私は、医療サービスが万国共通でボーダーレスなものになる日を思い描いています。野心的なビジョンではありますが、もしかしたら日本がこの領域を主導できるかもしれません。

ルイ:私は将来、特に中小企業や農業・農村の持続可能な開発に焦点を当てた活動を立ち上げたいと考えています。これらは、社会的公正と環境の持続可能性を確保しながら経済発展を実現するからです。また、日本がフィリピンに対して、これからも技術支援や知識の共有を継続してくれることを願っています。

タイネイ:カンボジアに帰国したら、持続可能な経済成長のための投資とデジタルイノベーションの推進に重点的に取り組みたいと考えています。情報発信を通じた能力強化と人材開発のためのスキル向上が必要となるので、例えば、ビジネスの始め方を教えるセミナーを開催してもよいでしょう。また、カンボジアの人々が奨学金を使って日本で学ぶ機会が増えることを願っています。
ASEANと日本は長年のビジネスパートナーですが、まだ海外直接投資を増やす余地があります。将来的には、日本とカンボジアの間で貿易協定や投資がさらに進むと考えています。

ASEAN と日本の関係は、ダイナミックで絶えず進化しています。皆さんの国と日本の協力関係は今後どうなっていくと思いますか?

ルイ:日本の近代化は、日本の過去の指導者や国民に根付いた愛国心、気配り、規律、献身、根気によってようやく達成されたものです。日本人は自国のアイデンティティ、文化、自然、価値観を守りながら、他の国の良い習慣を取り入れ、改善しています。フィリピンも他の文化を歓迎する精神を持っていますが、規律ある心を保って、国として腐敗を抑制し発展を目指す必要があります。
また、日本には効率的な交通システムがあり、簡単に金融機関にアクセスできますが、残念ながらフィリピンはそうではありません。交通インフラの開発や金融包摂に対して、支援が受けられることを望みます。

ASEANと日本の関係は、地域の安定、経済成長、持続可能な開発の促進という共通の利益に向けて、今後さらに強化されると思います。また、貿易、投資、技術移転、人的交流などの分野で、より緊密な協力が行われると予想しています。ASEANと日本のパートナーシップが、両者だけでなく、さらに広く利益をもたらすと確信しています。

タイネイ:日本とASEANは自由貿易協定を結んでいます。それに加えて、文化、言語、宗教などの分野でも協力しています。しかし、私は最も重要なのは教育だと思います。日本人は非常に良い教育を受けています。日本に暮らしながら日本の近代化と開発を学ぶことは素晴らしい経験です。日本が教育分野でASEAN全体に対する支援をさらに拡大することを望んでいます。

ヌライニ:現在、日本とマレーシアのパートナーシップは、ビジネスベンチャーを除けば、学術および科学分野での知識共有に重点が置かれています。エンターテインメント分野でも協力できるとよいでしょう。クリエイティブメディアは、両国が文化やライフスタイルを共有し、絆を深めるためのコミュニケーションメディアになります。

JICA 奨学金への応募を希望している ASEAN 諸国の研究者に対して、アドバイスはありますか?

ヌライニ:多くの人が言語の壁を理由に日本に来ることをためらい、英語圏であるイギリスやオーストラリアなどを選ぼうとしているのではないでしょうか。しかし、怖がらないでほしいと思います。日本人は英語を理解できます。たしかに、英会話のスキルにあまり自信がない日本人もいますが、技術が進歩しており、さまざまな翻訳ツールを使うこともできます。ぜひ日本に来て、日本語を学び、新しい文化に浸り、素晴らしい時間を過ごしてください。

ルイ: JICA奨学金に応募する際には、興味のある研究テーマを明確にし、JICAの開発の柱に沿った形で示す必要があります。同時に、学術協力、文化交流、業務経験の機会を積極的に求めることをおすすめします。そして最も重要なのは、日本社会に溶け込み、視野を広げることが大いに役立つということです。

タイネイ:日本で何をしたいのか、事前にはっきりさせる必要があります。私は政策立案者や業界の専門家と交流したいと思っていました。そして実際に交流が叶い、貴重な経験ができました。日本は多くのことを学べる素晴らしい場所です。だからこそ、気を引き締めてこの機会を最大限に活用してください。