JICA開発大学院連携プログラムを終えて:インドネシアの農業貿易政策における落としどころを探る

インドネシア外務省外交官養成学校の校長を努めるLintang Paramitasari Parnohadiningrat Wibawaさん(以下、リンタンさん)は、2017〜2019年にSDGsグローバルリーダープログラムに参加し、政策研究大学院大学(GRIPS)の博士課程に留学しました。リンタンさんに、GRIPSでの研究や日本での経験についてお聞きしました。

プロフィール
氏名:Lintang Paramitasari Parnohadiningrat Wibawa(リンタンさん)
出身国:インドネシア
所属先: インドネシア外務省外交官養成学校 校長
JICAコース: SDGsグローバルリーダー(2017〜2019年)
GRIPS Global Governance Program(G-Cube)博士課程
研究分野/研究テーマ:貿易政策、貿易協定

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GRIPSを知ったきっかけ

リンタンさんは、2003年からインドネシア外務省で公務員として働いています。貿易と投資に関する政策分野で働いていた当時、日本で博士号を取得しようと決意しました。

GRIPSのことは、外務省で働く卒業生から教わりました。「GRIPSが提供するプログラムを調べてみたところ、GRIPS Global Governance Program(G-Cubeプログラム)であれば、公共政策と外交政策の専門家としての能力を伸ばせると思いました」

リンタンさんの研究テーマは、自由貿易協定の活用について。特に、インドネシアにとって初の二国間貿易協定となった日本との経済連携協定について研究を行いました。

日本に留学した理由

リンタンさんが留学先として日本を選んだのはなぜでしょうか。「外務省で外交官として働いている夫が、ちょうど日本に赴任するところだったのです。日本で博士号を取るために奨学金を探そうと決めました」。日本の農業・貿易政策について新たな知見を得られたことが、日本滞在中の最も豊かな経験の1つだったとリンタンさんは振り返ります。

「日本への留学は、物事の仕組みや開発の捉え方について異なる視点を得る機会になります。これらは他の先進国で学んだとしてもなかなか得られないものです。日本が独自の農業政策を実施している理由を、今ではだいぶ理解できていると思います」

GRIPSの教授との出会いが転機に

JICAに出会う前、リンタンさんは他の奨学金で日本に留学していました。「JICAの前理事長である北岡伸一先生はG-Cubeプログラムの教授でもあり、GRIPSの学生にJICA奨学金のことを説明してくださいました。北岡先生のお話からJICAのプログラムを知ったのです」。2017〜2019年に奨学金を取得し、SDGsグローバルリーダープログラムに参加しました。

JICAのプログラムがキャリアを変えた

「インドネシア外務省の内部規則では、博士号を取得して帰国すると、自動的に昇進できることになっています。この規則は、インドネシアの他の省庁にはないだろうと思います。というのも、研究に関しては私よりもはるかに成功している友人が何人かいるのですが、外務省とはルールが異なるため、友人たちは元の省庁に戻っても昇進できませんでした。しかし私は、帰国したら外務省から昇進のオファーを受けたのです」とリンタンさんは説明します。

JICAのプログラムで博士課程を終えた後、リンタンさんは外交官および公務員として昇格が認められました。これによって管理職に立候補する機会が得られ、外交官養成学校の校長のポジションを勧められたのです。「研究内容とは関係がありませんでしたが、教育や学生の参加を促し、インドネシアの若い外交官に対して日本の知識を共有するなど、多くのことを実践できたと思います」

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日本での学びをインドネシアに持ち帰る

リンタンさんは、日本の開発モデルから多くの学びを得ました。そして、他の国々も日本の開発モデルから学ぶことができると考えています。例えば、日本は東南アジアに地域内サプライチェーンを確立した最初の国です。日本で学んだことで、グローバリゼーションとリージョナリゼーションがどうしたら効果的に機能するのか理解しやすくなったといいます。日本への留学は、物事の見方や考え方、問題を解決する方法などに関して、新たな視点をもたらしました。

「博士課程の研究における非常に重要な発見の1つは、日本の貿易政策で原産地規則が非常に大きな役割を果たしていることでした。原産地規則とは、他の国の製品を輸入するにあたって関税を割引する前に、その国が輸出している製品が実際にその国で製造されていることを確認しなければならないことを定めるものです」とリンタンさんは解説します。

「現在、インドネシアは他の国々と貿易協定の交渉を行っています。日本で得た知見を共有してほしいと同僚に頼まれることも多いんです」

SDGs推進におけるJICAの役割

リンタンさんは、若い才能のエンパワメントのためにも、持続可能な開発目標(SDGs)がJICAの使命の中心にあり続けるべきだと考えています。「今、SDGsの達成は多くの国々にとって重要です。ですから、JICAはSDGsの達成に向けた取り組みを継続すべきですし、その取り組みは将来にわたって持続可能であるべきだと思います」と話します。

「日本とインドネシアは、近隣国としても開発パートナーとしても、共通の課題に直面しており、私たちが住む地域の安定と繁栄のために協力する余地があります。JICAの役割は重要です」とリンタンさんは続けます。

JICAへの信頼

リンタンさんは、JICAの奨学金はインドネシアの学生にとって素晴らしい機会であり、このプログラムがインドネシアと日本の関係を強化するのに役立つと考えています。

「JICA留学プログラムの卒業生として、JICAが学生たちをサポートしてくれると常に信頼しています。人々を巻き込むための最良の方法は、人々をつなぐことだと思いますが、JICAはまさにその役割を担っています。私は外務省の後輩の1人に、JICAの奨学金に応募するように勧めました。彼女は非常に優秀ですし、JICAの取り組みが優れていることを外務省に示すためにも良い方法だと思っています」