所長あいさつ

2020年6月にJICAバングラデシュ事務所長としてダッカに着任いたしました。

皆さんはバングラデシュについてどのようなイメージをお持ちでしょうか。高い人口密度と、貧困、飢餓、サイクロン被害、洪水といったイメージを思い浮かべる方も多いかもしれません。

しかし、この国は今、大きく変貌を遂げつつあります。

2011年以降、毎年の経済成長率はずっと6%を超えており、2000年の一人当たり国民所得(GNI)は420ドルだったのが、2019年には1,940ドルに達しました(世銀アトラス方式)。2018年に国連の定める最貧国(LDC:Least Developed Countries)からの卒業基準を満たしたため、2024年には最貧国から卒業予定です。国内の貧困率も2000年の48.9%から、2018年には21.8%と半減以下になり、初等教育の就学率やジェンダー平等、乳幼児死亡率なども大きく改善しました。

バングラデシュは、北と西はインド、南東ではミャンマーに接しており、まさに南アジアと東南アジア双方を結ぶ結節点といえます。経済規模は、既にベトナムよりも大きく、国の信用格付はベトナムやブラジルと同程度です。主要輸出産業である既製服製造のみならず、大きな国内市場を視野に、製薬、バイク製造、建設分野などでも日本企業の進出が続き、現在300近い本邦企業が活動しています。ダッカ市内では、活気あふれる街の中で、JICAが支援する都市鉄道(MRT)の高架建設が進んでおり、まもなく同国初の地下鉄建設も始まります。バングラデシュはまさに中所得国に向けて飛び立たんとしているところです。

JICAのバングラデシュとの長年にわたる良好な関係は、1973年のボランティア3名の派遣に遡ります。その後、JICAは、技術協力、円借款、無償資金協力、ボランティア事業、NGOとの連携等を通じて、多くの地域で協力を行ってきました。円借款事業では、電力、運輸分野での大型の経済・社会インフラ整備や、防災、地方・農村開発など幅広い分野を対象に、累計で2兆円を超える金額を供与し、無償資金協力も5,000億円近い金額を供与してきています。2019年度は2,758億円の借款を供与し、JICAにとって世界で3番目に大きい供与相手国となりました。また技術協力では、同国のほとんどの開発分野において、累計で約4,500人の専門家を派遣し、また14,000人近くを対象に研修を行い、人材育成を行ってきています。さらに青年海外協力隊事業で派遣されたボランティアは累計で1,265人にのぼり、さまざまな分野で活躍してきました。例えば同国のポリオ根絶には協力隊員たちが大きく貢献しました。更に、民間企業と連携したJICAの「海外投融資」での支援件数も増えてきています。

バングラデシュ人は穏やかで情に厚い方が多く、何よりも親日的です。バングラデシュの人々は、独立から間もない1972年2月に、日本が多くの国に先駆けて同国を承認し、両国間の深い友好関係が始まったことをよく私たちに話してくれます。また、日本は、長くバングラデシュにおける最大の二国間援助供与国であり、その協力は、当地の人々から大変高く評価されています。

世界では新型コロナウイルスの感染拡大が続いていますが、バングラデシュも、困難な状況の中、全力で感染拡大を抑え、経済を維持しようと戦っています。私たちJICAバングラデシュ事務所は、これまでの長い協力を礎として築かれた信頼を活かし、バングラデシュと日本を結ぶ懸け橋として、当国の持続的発展と人々の生活向上を現場でしっかり支援してまいります。ダッカ都市交通開発の計画作りに従事していたJICA関係者の日本人7名の方が、2016年7月テロの犠牲となった悲しい事件を決して忘れず、また、当地の開発に関わってきた数多くの方々の思いを胸に、この国の輝く未来のため、より良い協力を実現していく所存です。ぜひ御支援をいただければ幸いです。

2020年7月
JICAバングラデシュ事務所長
早川 友歩