所長あいさつ

ブラジルは近年、グローバルサウスの主要国として国際政治経済においてそのプレゼンスは益々大きくなってきています。多様性を持った2億人を超える人口と、世界5位の広大な国土に恵まれ、世界有数の経済規模とともに、G20の一員として益々大きな役割を担うと目されます。日本はブラジルからトウモロコシ、鉄鉱石、鶏肉、コーヒー、アルミニウム、大豆等を輸入しており、資源・食料安全保障の観点からもブラジルは日本にとって世界で最も重要な国であり、同国で活動することに喜びと大きな責任を感じています。

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ブラジルの発展には多くの日本人、日系移住者が関わっていますが、1908年、「笠戸丸」が神戸港を出発し、サントス港に到着して以降、およそ25万人の日本人がブラジルに移民として来られました。農業分野をはじめとして、ガバナンス、医療、教育分野で活躍され、ブラジルの社会、経済、行政で大きな功績を上げており、ブラジルの発展に大きく貢献したことにより、日本や日本人に対する強い信頼感が築かれていますが、そのレガシーを受け継ぎ、今後のブラジル及び日系社会の発展に寄与したいと考えています。

日本とブラジルとの関係は、1895年の「修好通商航海条約」に遡りますが、経済協力は、1959年の専門家派遣に始まり、セラード農業開発事業を始めとする多数の農業分野への協力、ウジミナス製鉄所やアマゾン・アルミ精錬所等の資源開発プロジェクトへの出融資、チエテ川の洪水対策事業やサンパウロ州、パラナ州等の上下水道整備、ゴイアス州農村電化等の環境保全や都市環境改善等のインフラ整備の資金協力、アマゾン地域等の環境保全、保健分野や職業訓練、地域警察活動等への技術協力を実施しています。

また、日本が有する知識や経験を国内の関係機関と協力して行う研修事業では、これまでブラジルから1万2千名以上が日本で研修を受けています。さらに近年は、ブラジル向けの経済社会の発展への寄与にとどまらず、中南米やアフリカ諸国への三角協力を通じたパートナーシップ協力も推進しています。

新興国としてのプレゼンスの拡大を進めるブラジルも、経済発展に伴う開発課題が多く存在します。都市化に伴う交通渋滞、廃棄物問題、水・衛生施設の不足や格差拡大も一因とする治安悪化、近年の気候変動の影響も受け多発する自然災害、感染症被害の拡大等、多くの課題を抱えています。特に、気候変動・環境の対策は早期のアクションが必要です。1992年にリオデジャネイロで開催された地球サミットでは、「環境と開発に関するリオ宣言」「気候変動枠組み条約」「生物多様性条約」等の条約や宣言が出され、世界が一丸となって環境や気候変動に取り組む起点となりました。しかし、早くも30年以上が経過し、気象、地球環境や社会・経済も大きく変化しています。2025年ベレンで開催予定のCOP30では、改めて今後の「環境と持続的な開発や社会」や「気候変動への対応」が検討されることとなりますが、持続的かつ強靭な社会を構築するために日伯、その他パートナーとの連携・共創をしっかりと考え、地球規模の課題に対する協力を推進したいと考えています。

2024年3月
ブラジル事務所長 宮崎 明博(みやざき あきひろ)