AIDS患者及びその他免疫不全患者における新規診断法による真菌症対策プロジェクト

(日)AIDS患者及びその他免疫不全患者における新規診断法による真菌症対策プロジェクト
(英)Project for New Diagnostic Approaches in the Management of Fungal Infections in AIDS and Other Immunocompromised Patients
(葡)Projeto para novas abordagens diagnósticas no manejo das infecções fúngicas em Pacientes com AIDS e outras Doenças Imunossupressoras

  • スキーム:技術協力プロジェクト(SATREPS:地球規模課題対応国際科学技術協力)
  • 実施機関:カンピーナス大学医学部、カンピーナス大学医学部付属病院
  • 日本側協力機関:千葉大学真菌医学研究センター、富山大学、独立行政法人科学技術振興機構
  • 対象地域:サンパウロ州
  • 実施期間:2010年4月1日~2013年3月31日(3年間)

背景

ブラジルでは「エイズ国家プログラム」において、エイズ患者が治療薬へアクセスすることは国民の権利であるとし、患者に対して抗レトロウィルス薬を無償供与するという画期的な政策を1996年に打ち出すなど、包括的な対策を実施している。その結果、ヒト免疫不全ウィルス陽性者数は国際機関による予測数の半数以下に抑制され、HIV/AIDS対策の先駆的な役割を果たしている。しかしながら、真菌感染症をはじめとする日和見感染症による死亡者数の低減、更には患者の生活の質(Quality of Life:QOL)改善は継続的な課題となっている。したがって、エイズ患者の延命とQOL改善への対応のため、原因真菌の同定法や真菌感染症の診断法などの新規検査法の開発、及び薬剤併用療法などの新規治療法開発に資する研究の実施が求められている。

かかる状況を踏まえて、千葉大学真菌医学研究センターとカンピーナス大学医学部は、ブラジルにおける真菌感染症の疫学研究、真菌感染症の迅速診断、遺伝子解析などによる病原真菌の同定に係る真菌感染症研究に取り組み、HIV陽性者を中心とした免疫不全患者の感染管理やQOL向上に資する共同研究を実施することにより、わが国の科学技術力を活用しつつ、ブラジル側との共同研究による技術の開発・応用や新しい知見の獲得を通じて、わが国の科学技術力向上とともに、ブラジルの高度医療を担うカンピーナス大学の研究開発能力向上を図ることを目的として、2010年4月に当プロジェクトを開始した。

実績

プロジェクト目標

千葉大学とカンピーナス大学の共同研究を通じて真菌感染症の診断及び治療に関する研究能力が相互に向上する。

期待される成果

1.より良い抗真菌治療や真菌感染症研究に役立てるため、免疫不全患者におけるブラジルの真菌感染症の現状が疫学的に解明される。
2.プロジェクトで規定された真菌感染症の迅速診断法及び病原性真菌株の同定法について、ブラジルでの実用性が確認される。

活動

1-1. エイズ及び免疫不全患者から採取した新鮮真菌分離株の保存法を確立する。
1-2. エイズ及び免疫不全患者から採取した真菌分離株を形態学的、生理生化学的及び遺伝学的手法を用いて同定する。
1-3. 同定された真菌分離株の遺伝子型を、PCR法を用いて決定する。
1-4. 同定された真菌分離株の薬剤感受性を分析する。
1-5. 真菌特性(真菌株、遺伝子型及び薬剤感受性)と感染源、病巣部位、検査データ及び免疫抑制状態などの患者データとの関連性を明らかにする。
2-1. DNAマイクロアレイを用いた真菌感染症の迅速診断法及び病原性真菌株の同定技術をカンピーナス大学に導入する。
2-2. β-グルカン測定キットによる真菌感染症の迅速診断技術をカンピーナス大学に導入する。
2-3. リアルタイムPCR法及びLAMP法を用いた迅速な真菌感染症の診断法及び病原性真菌株の同定技術をカンピーナス大学に導入する。
2-4. 本プロジェクトで導入された真菌感染症診断のための病原性真菌株同定の普及を推進する。

関連するプロジェクト

調査報告書

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DNAスポッターの説明

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DNAスポッターの説明2

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DNAマイクロアレイ測定法の技術指導

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PCR実験

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PCR実験2

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遺伝子検査(LAMP法)の検査試薬の調整(プライマー)

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研究共同検討会