地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS(注)「ブラジルと日本の薬剤耐性を含む真菌感染症診断に関する研究とリファレンス協力体制強化プロジェクト」が終了

2022年9月14日

このプロジェクトは、日本医療研究開発機構(AMED)と連携し、ブラジル国カンピーナス州立大学及び千葉大学を実施機関として、サンパウロ州カンピーナス都市圏における薬剤耐性真菌症の疫学情報の把握、薬剤耐性遺伝子検出法の確立、研究機関・医療機関・行政機関の研究協力体制を構築することにより、ブラジルと日本での薬剤耐性を含む真菌感染症診断の研究協力体制とリファレンス協力体制の確立を図ることを目的として2017年9月より実施してきました。

2020年2月下旬、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がブラジル国内で確認されてから感染者数は急増し、常に世界上位に位置づけられていました。そんな中、ブラジルの要請に応え、新型コロナ対策支援としてカンピーナス州立大学に勤務する医師や医療従事者が衛生的かつ安全に施術を行うために必要な資機材を供与しました。また、同協力枠組みを活用し、診療技術を強化するためにブラジルの医療機関と国際臨床研究チーム「AMC19」を発足し、症例報告等の知見や考察を共有し議論するための国際臨床カンファレンスが行われました。

更に本プロジェクト活動で協力関係にある栄研化学株式会社による産官学連携により、「ブラジルにおける新型コロナウイルス感染症(COVID-19)検査拡大のためのパートナーシップ(PACT Brazil)」を発足させ、栄研化学が開発したLAMP法(LAMP法は栄研化学が独自開発した遺伝子増幅技術の一つ)を用いた新型コロナウイルス検出試薬“Loopamp™ SARS-CoV-2 Detection Kit”の性能評価試験を実施しました。

以上のとおり、この協力では、本来の目的である薬剤耐性真菌症の疫学情報の把握と薬剤耐性遺伝子検出法の確立、また、研究機関・医療機関・行政機関の研究協力体制とリファレンス協力体制の強化に貢献したことに留まらず、日伯両国における新型コロナウイルス対策強化に寄与しました。プロジェクトは終了を迎えますが、プロジェクトで構築された体制のもと、同分野での両国における今後の活動に期待します。

(注)SATREPSは、環境、カーボンニュートラル、生物資源、防災および感染症といった地球規模課題の解決に向け、課題の解決につながる新たな知見・技術の獲得やイノベーションの創出、さらには開発途上国の自立的な研究開発能力の向上と課題解決に資する持続的活動体制の構築を図ることを目的として、外務省と文部科学省の支援のもと、JST、AMEDとJICAが連携して実施し、日本の優れた科学技術とODAとの連携によって、開発途上国との科学技術協力、科学技術外交を推進するプログラムです。

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環境中から分離した真菌のDNA抽出

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深在性真菌症から採取されたフザリウム属真菌の遺伝子検査(LAMP法)によって出されたデータ結果の検討・分析