所長あいさつ

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内戦と混乱から立ち上がり、目覚ましい発展を遂げるカンボジアは今、新しい時代を迎えています。国づくりは、1991年の和平合意後の「復興」から、「開発」のステージへと移りました。そして、東南アジア諸国連合(ASEAN)が共同体としての統合を目指すなか、カンボジアも、自国の成長のみならず、地域の中で一定の役割を担っていくことが求められています。

そのために必要になるのは、産業の成長基盤の強化です。カンボジア政府は2015年3月にその後10年間の「産業発展政策」を打ち出しました。政府の皆さんにお会いすると、多くの方に「この政策の実施に力を貸して欲しい。産業振興を最重要課題の一つとして考えている」と言われました。これにこたえ、JICAはカンボジアの産業の育成を目指す動きを支えていきたいと思います。

中でも産業の担い手となる人材の育成が重要であり、特に教育の充実が緊急の課題となっています。経済統合によりASEAN内の人的移動の自由度が高まれば、技術労働者などが流出し、国内に空洞化が起きないとも限りません。しかし、どんなに人の移動が活性化しても、自国に多様な産業が根付いていれば、それを下支えする人材は育ち、残ります。豊富な人材を持つことは、カンボジアが経済成長の柱の一つとする外資導入も促すものです。当地への進出が続く日系企業にとっても有意義なこととなります。

また、カンボジア政府が取り組んでいる行政改革を支援することも必要であると認識しています。中央・地方双方の行政のマネージメント能力を高め、ガバナンスを改善することは、同国の健全かつ持続性のある発展を支える極めて重要な要素であると考えます。

地域全体に目配りをする一方で、私は、カンボジア国内の社会基盤を整備し、地域格差を縮小する取り組みもますます重要になってくる、と考えます。2015年4月6日に開通したメコン河の「つばさばし」は、南部経済回廊の一部としてメコン経済圏をつなぐ大動脈ですが、同時に、カンボジア国内をつなぐ大切な役割を担っています。地域経済の活性化、地方行政の整備など、カンボジアの隅々までが豊かになることを目指し、協力を続けたいと思います。

日本の国際協力の歴史の中で、カンボジアは特別な位置を占めます。2015年に50周年を迎えた青年海外協力隊事業で、協力隊員が最初に派遣された国の一つでもありました。カンボジアの人々から、日本に寄せられる深い信頼と実績を礎にしながら、「対等なパートナー」としての新しい関係を築いていきたいと考えています。

カンボジア事務所長
安達 一