所長あいさつ

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この度JICAカンボジア事務所に所長として着任いたしました亀井温子(かめいはるこ)です。

皆さんは、カンボジアと言えば何を思い浮かべるでしょうか?

長く続いた内戦、国際連合カンボジア暫定統治機構(UNCTAC)への日本の協力とPKO派遣、世界遺産のアンコール・ワット、あるいはカボチャの語源になった国。色々ありますが、多くの方はまず、アンコール・ワットを思い浮かべるのではないでしょうか。

アンコール・ワットは、東南アジアで最大級の石造伽藍であるとともに、世界でも屈指の大寺院です。アンコール・ワットを建造したアンコール王朝は、9世紀(802年)に興り、14世紀にタイに成立したアユタヤ王朝の攻略により15世紀(1431年)に都城が陥落しましたが、最盛期の12世紀から13世紀にかけては、その領土は現在の東南アジア地域の広い範囲(現在のラオス、タイ、マレー半島からベトナム、中国まで)におよび、当時の東南アジアの政治、経済、宗教、文化の中心は、アンコールの地、カンボジアにありました。

2021年の元旦、そのアンコール・ワットと周辺の遺跡群を初めて訪れました。

そこで、南アジア地域で長く仕事をしてきた私自身にとって、馴染み深い神々の姿を発見しました。ヴィシュヌ神をはじめとするヒンドゥーの神々です。そして、マハーバーラタ、ラーマーヤナの物語や、周辺国のチャンパ、シャムとの闘いを描くレリーフの数々。アンコール・ワットは何百年を経てもなお、活き活きと、南アジア、東南アジア、東アジアをも含む「アジア」の中で、カンボジアが歩んできた地政学的な立ち位置と歴史を伝えていました。

現在のカンボジアは、アジアの新興国として域内の経済成長を牽引しているタイとベトナムに挟まれ、かつ、ASEAN諸国を円に囲むほぼその中心に位置します。すなわち、陸路にあっては、ASEAN諸国をつなぐ南部経済回廊の重要な結節点であり、同時にインド太平洋上のシーレーンにも面した要所です。カンボジアは現在にあっても、「アジア」において地政学的に重要な場所に位置する国であり、日本にとって大切なパートナーであると言えるでしょう。

そのカンボジアにおいて日本は、米国、中国、欧州をも凌いで、もっとも信頼できる国の第一位にあげられています(2019年外務省海外における対日世論調査)。このカンボジアの人々からの日本に対する信頼は、これまでカンボジアと日本をつなぎ活躍した多くの人々によって築かれてきた大切な資産です。この信頼を大切に、さらにカンボジアとの絆を深めていくためにJICAができることは何か、このことを常に考えながら、業務に当たって参りたいと思います。

カンボジアのSDGs達成のための開発支援は、JICAだけでは実現することができません。この地で長く活動を続けてきたNGOや学識者、諸団体の皆さま、カンボジアの経済活動を牽引する日本企業、民間の皆さま、そして何よりもカンボジアの政府、学識者、企業、民間の皆さまとともに、持続的な成長に向けた取り組みを進めて参りたいと思います。

どうぞ宜しくお願い申し上げます。

JICAカンボジア事務所 所長
亀井 温子