所長あいさつ

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「莫大な資源を持つ大国の、人々の貧しさをどうやって無くすのか?」
一見矛盾したこのテーマが、コンゴでの私たちJICAの挑戦です。

2つの「コンゴ」をご存じでしょうか。アフリカ大陸の中心、コンゴ盆地に茂る世界で2番目に大きな熱帯林。その「緑の海」を貫いて約4700キロメートルを流れる大河コンゴ川の両側に、コンゴ民主共和国とコンゴ共和国があります。

かつてザイールという名だったコンゴ民主共和国は「天然資源の宝庫」。約8千万人が生活する、日本の6倍、西欧と同じくらい広い国土。その3分の2を占める森林にはゴリラ、オカピ、ボノボなど貴重な動植物が多数生息しています。一方、豊富な鉱物資源に恵まれ、銅、金、ダイヤモンドなどに加え、リチウム電池製造に不可欠なコバルトやスマートフォンに使われるタンタルなどのレアメタルの世界最大の埋蔵量を抱えています。

しかし国民の所得は450ドル/人、国連の人間開発指標は176位の最貧国。鉱業収入が政府に十分入らず、国と地方の行政の予算が圧倒的に不足する一方、大統領選挙が2年遅れるなどガバナンスの問題は深刻。資源確保や部族対立をめぐる紛争で人道危機が続き、1990年代の「第一次、第二次コンゴ大戦」以来の紛争で540万人以上が死亡。2018年には難民81万人が国外に逃れ、国内避難民450万人が故郷を追われ、1300万人が食料危機に瀕しています。「感染症の宝庫」でもあり、エボラ出血熱やコレラなどの伝染病が頻繁に流行。世界最大規模の国連PKOと、あらゆる援助機関、NGOが全国で活動し、性暴力と闘うムクウェゲ医師のノーベル平和賞受賞も記憶に新しいところです。

一方のコンゴ共和国は、面積が日本の約9割で人口は約500万人。産油国であり森林、水産資源にも恵まれ、国民の所得は1710ドル/人。1997年から2002年にかけて内戦を経験し、その後もプール州での内紛が続いていましたが、2018年には反政府勢力の武装解除が進み、現在は平和が保たれています。石油に依存した経済の多様化、それを支える政府の能力強化などが課題です。

日本とコンゴとの協力は1980年代まで遡り、2007年6月のJICA事務所開設から本格化しました。コンゴ民主共和国では「平和の定着と経済社会発展への支援」を基本方針に、インフラ整備、職業訓練、保健医療、森林保全・気候変動対策、警察改革を支援しています。インフラ分野では、コンゴ川にかかる長さ520mの吊り橋「マタディ橋」や首都キンシャサの「コンゴ日本大通り」で築かれた日本の技術への信頼を基に、人口1200万人の首都の都市交通整備などに取り組みます。職業訓練では、二大都市の訓練校建設と講師育成に続き、開発が遅れる地方の技術者育成を目指します。保健医療では、人材を育てる学校建設や制度強化とともに、エボラなど感染症の対策や研究を強化します。2018年のエボラ流行では2度の緊急援助を行い、2019年には感染症の研究所を建設します。森林分野では、世界第2位の熱帯林のCO2吸収による気候変動対策推進と、地元住民の生活向上を同時に目指す支援を行います。警察分野では、内戦中の1997年に武装勢力、軍人や市民を集めて作られた国家警察に対し、2004年以来2万人以上の警察官の研修を行い、開発の前提である治安改善に貢献しています。コンゴ共和国では「基礎生活環境の改善と経済基盤の整備」を基本方針に、同国初の零細漁業センターを2018年に建設し水産物の品質向上を図るなど、水産や森林の分野で事業を進めています。

このような事業の効果を上げ、いかに多くの人々の貧困を無くし生活を良くしていくかが私たちのチャレンジです。私は、過去25年間に渡りアフリカ29か国で働き、コンゴを含む3か国に9年間駐在し、35か国が加盟する「アフリカのきれいな街プラットフォーム」設立に携わるなどの経験を積んできました。このような経験と人的ネットワークを最大限に活かし、他の援助国、機関と協力して事業の効果を大きくするとともに、日本の企業、教育研究機関、自治体、市民の皆様にコンゴに来て頂き、日本と2つのコンゴの友好・経済関係が発展するよう日々尽力して参ります。

コンゴには情に厚く真面目な人が多く、この国々で働くと、豊かな自然と文化に加えて「人々の魅力」を語る方が少なくありません。巨大な可能性と無数の課題があるこの国々に関心を持って下さる方、一緒に働いて下さる方を心から歓迎します。ぜひ当事務所のFacebook、Twitter、YouTubeをご覧ください!

コンゴ民主共和国事務所長
柴田 和直