所長あいさつ

東ティモールは、ポルトガルによる植民地統治の終焉から、インドネシアによる実効支配の時代を経て2002年5月に独立した、今世紀最初に誕生した新しい国です。

約130万人の国民は都市部だけでなく、地方の山間部にも多く居住しています。
岩手県とほぼ同じ大きさ(1.5万平方キロメートル)の国土は山岳地帯が多く、周囲を海に囲まれ、年中温暖な気候で自然豊かな環境です。他方急峻な地形や浸食に弱い地質により土砂崩れ等の災害も多く、困難を抱えています。

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独立から20年を経て、治安は改善され、東ティモールは紛争からの復興、基礎的な国の仕組みづくりの時代から、経済成長と生活安定を国民に行き渡らせる発展期に入りつつあります。近海で採掘される石油・天然ガス依存からの脱却を目指し、国内産業を多様化し雇用創出を図ることや基礎的な社会経済インフラの整備も引き続き行っていく必要があります。また昨今のコロナ禍の影響を踏まえ、生計向上や国内資源である農林水産業の一層の活用が課題とされています。さらに2021年4月にはサイクロンによる豪雨で大きな洪水が発生しており、今後気候変動の影響が予測される中、これらへの対応も課題となっています。

JICAは、実質的な独立を決めた1999年の国民投票が行われた直後から、継続的に東ティモールの支援を行ってきました。独立に先立つ騒乱により疲弊したインフラの修復や、知見の共有を通じた人材育成、我が国NGOとの連携を通じた住民の生活や保健衛生の改善などの活動を行いました。最近では、首都ディリのフェリーターミナルの整備や道路、橋梁の建設、唯一の国立大学である東ティモール国立大学工学部棟の建設などインフラ整備に加え、国産米の増産と流通改善、山間部の住民の持続的な生活を支援する天然資源管理、東ティモール国立大学工学部に対する本邦の大学による支援など、人材・組織育成に力を入れています。

コロナ禍やウクライナ情勢など、不透明な状況が世界では続きますが、東ティモールでは近年安定的に選挙も行われるようになり、民主的な国として歩みを進めています。ASEANへの加盟も見えてきた中、今後もこれらの活動を通じ、東ティモールの発展に貢献できるよう取り組むとともに、東ティモールと日本の方々との交流・架け橋となるべく尽力して参ります。

本ウェブサイトでは、東ティモールにおけるJICA事業について紹介しておりますので、発展期の東ティモールの開発についてともに考え、行動するきっかけとして頂けましたら幸いです。

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2023年3月
JICA東ティモール事務所長
伊藤 民平