所長あいさつ

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2021年1月からJICAエチオピア事務所長を務めております、森原と申します。

アフリカでの駐在は、2002年から2005年のウガンダ以来、これで2回目になります。ウガンダ駐在中に、ケニア、タンザニア、エチオピアなど、周辺国を訪れる機会が多くありました。当時20代後半、初めての海外駐在で「アフリカの水」を飲んで以来、アフリカが持つ力強さとダイナミズム、人々の明るさ・優しさと心の豊かさに魅了され、アフリカの地に戻ることを切望してきました。15年以上の時を経て、今回、その思いが実現したことを大変嬉しく思っています。

エチオピアは、東部アフリカのいわゆる「アフリカの角」の中心に位置する国で、ケニア、ソマリア、ジブチ、エリトリア、スーダン、南スーダンに囲まれた内陸国です。日本の3倍の国土面積に1億人を超える人口を抱える大国で、独特の暦(エチオピア暦)、宗教(エチオピア正教会、エチオピアで独自に発展したキリスト教の教会)やサブサハラアフリカ諸国で唯一独自の文字を持つなど、とても豊かな文化を持っています。歴史的にも、アフリカ最古の独立国として古くから栄え、欧米列強による植民地化を免れ独立を守り抜きました。そのため、19世紀末から始まったアフリカの統一と解放を目指す「汎アフリカ主義」の広まりに重要な役割を果たし、「アフリカの星」と呼ばれたこともある、誇り高い国です。

また、80以上の民族を抱え、海抜マイナス100メートル以下の低地から4500メートル以上の高地まで多様な地理的条件・植生を有するなど、多様性も大きな特徴の一つです。日本ではあまり知られていませんが、巨大な岩をくり抜いて作られた「岩窟教会」や石碑群、人類最古の化石の出土地帯等、長い独自の歴史や豊かな自然環境を反映した9つの世界遺産も持っています(サブサハラアフリカでは、南アフリカの10か所に次ぐ2位)。日本との間では1930年に修好通商条約を締結、1956年に第二次世界大戦後初の国賓として皇帝・ハイレ・セラシエ1世が訪日するなど、古くから良好な関係を保っています。

経済面では、一人当たりの所得は850ドル(世界銀行、2019年)と未だに低所得国に分類されますが、近年目覚ましい成長を遂げており、過去10年の経済成長率は平均約10%、実質GDPは過去20年で約5倍になっています。主要産業は農業で、GDPの35%、雇用の70%以上を占めていますが、エチオピア政府は農業から工業中心の経済への構造転換を図り、2025年までに中所得国の仲間入りをすることを目指して、経済改革に取り組んでいるところです。未だに課題は残されているものの、教育・保健・水など、基礎的社会サービスへのアクセスや質も向上しています。その結果、政府が定める絶対的貧困ラインを下回る所得水準の人口割合は、1995年の45.5%から2020年の19.0%へと25年で大幅に減少しており(世界銀行)、政府は国連が定めたSDGs(持続可能な開発目標)にも謳われている「誰一人取り残さない」成長を実現すべく、更なる努力を続けています。

JICAは、そうしたエチオピア政府の取り組みを後押しすべく、日本政府の国別開発協力方針に沿って、1)農業・農村開発、2)産業振興、3)インフラ開発、4)教育・保健、の4分野において様々な協力を実施しています。中でも、コメの生産性向上、小規模農家の所得向上、工業化に向けた産業政策、中小零細企業・起業家支援、地熱発電、理数科教育など、日本自身の経験や強みが活かせる協力を重視しています。それらの協力を組み合わせて実施することで、各分野における課題の解決のみならず、雇用創出、貧困層の所得向上、輸出・輸入代替促進による貿易赤字の削減、気候変動への適応力の強化など、エチオピア政府が重視するより上位の政策目標にも貢献しています。

また、JICAエチオピア事務所は、エチオピアに対する協力だけでなく、首都アディスアベバに本部があるアフリカ連合(AU:Africa Union)との連携を強化する役割も担っています。AUはアフリカ55か国・地域(注)が加盟する世界最大級の地域機関で、アフリカ全体の発展に大きな役割を果たしており、日本政府が推進するアフリカ開発会議(TICAD:Tokyo International Conference on African Development)の共催者でもあります。JICAは、感染症対策、高等教育、インフラ開発などの分野において、AUが推進するイニシアティブを後押しする協力を実施しています。今後も、AUとの対話や協力を通じて、JICAのアフリカ大陸全体に対する協力方針の形成・実施にもしっかり役割を果たしていきたいと考えています。

私は、2021年1月という、とてもチャレンジングなタイミングでエチオピアに着任しました。

今、世界では新型コロナウイルスが猛威を振るっており、先進国、途上国を問わず、これまでとは大きく異なる生活・仕事のあり方を模索している最中です。また、エチオピア政府も今後10年間を見据えた新しい開発計画を策定したばかりであり、更なる国の発展・安定に向けて大胆な政治・経済改革を推進しようとしています。AUも、2021年1月からアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)の運用を開始し、大陸レベルでの統合強化に向けて大きな一歩を踏み出したところです。このように、我々を取り巻く環境が急速に、そしてまた大きく変わっていく状況の中で、エチオピアのため、アフリカのため、日本のためにJICAとして何ができるかを全力で考え、行動していきたいと思います。

皆様のご支援・ご協力を賜れれば幸いです。

JICAエチオピア事務所長
森原 克樹

(注)我が国未承認の「サハラ・アラブ民主共和国」含む。