お知らせ・トピックス

【実施報告】「2022年度教師海外研修(教育行政コース)オンライン報告会」Tokkatsu日本×エジプト 未来を創る教育の挑戦に学ぶ

2023年1月31日

1月25日(水曜日)に、2022年度 JICA教師海外研修(教育行政コース)オンライン報告会を開催しました。
本海外研修では、全国の校長、教頭職や教育委員会の指導主事15名が2022年12月23日(金曜日)から12月30日(金曜日)にエジプト・アラブ共和国(以下、「エジプト」)を訪問しました。
エジプトでは、JICAが協力している「日本式教育の現場」をはじめとする学校や教育関係の施設を主に訪問しました。

昨年8月の研修参加者募集から昨年12月の海外研修、今年1月の事後研修まで、忙しい業務の合間を縫って駆け抜けてきた参加者のみなさん。
エジプトでのさまざまな気づきを発表する今回のオンライン報告会は、まさに集大成の場となりました。
オンライン報告会の様子について、インターンシップ生の大谷がレポートします!

基調講演:エジプトの日本式教育TOKKATSUの現状と可能性

子どもの目を引くカラフルな掲示物

報告会前半では、基調講演として、國學院大學教授・元文部科学省初等中等教育局視学官の杉田洋氏にご講演いただきました。

エジプトの小学校、中学校で日本式の「特活(特別活動)」—授業以外の掃除や日直、学級会といった特活を“Tokkatsu”として導入したことにより、エジプトの教育現場では何が変わったのでしょうか。

じつは、児童、教員ともに大きな変化があったそうです。
まず子どもの変化として、「他人の意見を尊重するようになった」「日直当番を通して自信をつけた」ということが起きたそうです。
そして、子どもたちだけではなく、教員の行動にも変化がありました。
エジプトの一般的な学校は学力重視で試験直前の暗記学習が中心。以前は教員による高圧的な指導も行われることがあったといいます。
それが、“Tokkatsu”の導入により、子どもたちの興味・関心を引くような教材研究を先生たちが熱心にするようになりました。「教員が児童の声に耳を傾けるようになった」「児童参加型の授業が増えた」といったポジティブな報告も続々と上がってきたといいます。
“Tokkatsu”を通じ、教室の中で意思決定や合意形成の場を経験した子どもたちは、「他人の意見に耳を傾ける」「集団の中で役割を全うする」という意識を高め、協調性や規律、道徳心を培うことができるようになりました。

このように、“Tokkatsu”を通じた子どもたちの意識の変化によって、徐々にエジプトの教育の方向性も教科学習偏重から「人づくり」の方向にシフトしてきているようです。

研修参加者による報告発表

役割が一目で分かる掃除の分担表

掃除に取り組む子どもたち

報告会後半では、教師海外研修でエジプトを訪問した参加者が、視察訪問からの気づきや学び、そこから考える国際理解教育や開発教育の意義や価値について発表を行いました。

日本から学んで進化を続けるエジプトの教育ですが、日本式教育を導入したエジプトの姿から、逆に研修参加者が学ぶことも多くあったといいます。

例えば、エジプトの公民館。子どもが体験や遊びを通じて他者と協働し、自ら学ぶ場をつくるため、日本の公民館を参考にして開設されました。一方、日本では公民館が減少しているという現状があります。人とのつながりが希薄になっている現代だからこそ、子どもたちの3rd place(いわば「第三の居場所」)として日本でも公民館を活用できないかといった提案も出されました。

また、エジプトの学校で導入された日直や掃除、学級会。“Tokkatsu”が生徒、先生ともに良い影響を与えていることを目の当たりにした参加者たちは「特活の意義についてはあまり意識せずに指導していたけれど、子どもたちの人間関係の形成や社会参画に大いに役に立っているのだと、誇りを持って教壇に立ちたい」との前向きな言葉がありました。

まさに日本とエジプトの「学び合い」となったこの研修。この研修を教育行政にどう活かしていくかについては、ワークショップやオンライン交流会の開催、JICA海外協力隊員とのコラボ授業やエジプトスタディツアーの実施など、さまざまなアイデアが飛び交いました。
研修を終えた15人の参加者たちは、各地域の学校教育関係者と共に、さらなる国際理解教育/開発教育の推進を目指していきます。

あとがき

私の小学校、中学校時代を振り返ってみると、日直の日は、いつもよりもちょっぴり姿勢が伸びるような責任感と、皆の先頭に立って仕事を全うする誇らしさがあったことを思い出しました。海を越えて広がりつつある日本式教育“Tokkatsu”が、エジプトの未来を担う子どもたちの人格形成、ひいてはエジプトの繁栄につながることを信じてやみません。

また、このような「教師海外研修(教育行政コース)」のほかにも、JICA地球ひろばでは教員研修「国際理解教育/開発教育指導者研修」を行っています。
2月5日(日曜日)には、公開セミナー【多様化する世界の中で生きる力を育む】を開催し、本研修の参加者が授業実践例を紹介するほか、俳優・人権活動家のサヘル・ローズ氏にご講演いただきます。
オンラインで参加可能ですので、ご関心のある方はぜひご参加ください!

(JICA広報部地球ひろば推進課 インターンシップ:大谷 理香)

ニュース