jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

2024年に政府開発援助(ODA)は70周年を迎えました。その前年にはODAの指針となる開発協力大綱も改定され、すべての人々が恐怖と欠乏から免れ、尊厳を持って生きる権利が保障される社会づくりを進めるという「人間の安全保障」がすべての事業に通底する理念として位置づけられました。また、大綱では、インドネシアのようなパートナー国はもちろん、日本や世界のさまざまな関係者と、共に新しい解決策や価値を生み出す「共創」の推進が謳われています。

今、世界は、紛争、気候変動、感染症など複数の脅威が複雑に絡み合い相互に影響し合い、人間一人一人のいのちとくらし、そして尊厳が脅かされています。このような危機を克服して平和で安定した豊かな地域や国際社会を作り上げていくことが、日本にとってもインドネシアにとっても、自国の平和と安定、そして繁栄に不可欠です。一国では解決できない課題に対して両国はもとより各国の多様な関係者が協力して取り組んでいく必要があります。

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インドネシアとは第2次世界大戦中の1942~45年に日本軍が占領していたという歴史があります。1958年に平和条約と賠償協定を締結し外交関係を開設し、戦後賠償、そしてODAを通じてインドネシアの経済と社会の発展と、両国の友好関係の強化を推進してきました。そして現在では、民主主義等の基本的価値や原則を共有する「包括的・戦略的パートナー」として、共通の関心を有する分野での協力を進めながら、地域とグローバルな課題への対応も強化していくこととしています。

インドネシアは、広大な国土・経済水域と人口、そして豊かな天然資源を有する大国です。近年はコロナ禍下を除き約5%の安定した経済成長率を維持しており、2045年の先進国入りを目指しています。日本にとっては重要なエネルギー供給国であり、近年では、その人口規模と購買力から日本企業の有望な市場にもなっております。また、日本では少子高齢化が進む中、介護、農業、建設などの分野の労働力の供給国としての魅力も増しています。

一方、インドネシアは、依然、経済格差、特に都市部での公共交通機関や廃棄物管理・下水処理の整備の遅れや森林・泥炭地開発による環境問題、気候変動による災害の甚大化、教育の質といった課題を抱え、豊富な資源の持続的な管理と有効活用(食料安全保障、エネルギー安全保障、産業下流化・高付加価値産業の開発)、インフラ整備、人材育成等を通じ更なる経済成長と貧困削減を目指しています。

今後も、JICAは、戦後、先達が時間をかけて築いてきた関係を礎に、インドネシアから見た日本の強みを生かして、インフラ整備、人材育成、防災、ブルーエコノミー、グリーントランスフォーメーションなどの分野で取り組みを強化するとともに、両国の民間企業や自治体、大学、NGOsなど幅広い関係者が知恵やリソースを持ち寄り、新たな解決策を提案・実施できるよう取り組んでまいります。また、グローバルな課題の解決に向けた国際協調を強化すべく、インドネシアのOECD加盟に向けた支援やASEANの取り組みへの協力を実施してまいります。皆様方のご理解とご協力、そしてこれらの取り組みへのご参画をお願い致します。

インドネシア事務所長
竹田 幸子