所長あいさつ

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太平洋とインド洋にまたがる海洋国家であるインドネシアは、日本にとって、南アジア、中東、アフリカへとつながる海上交通の要衝に位置します。成長著しい「東南アジア諸国連合(ASEAN)」の中でも、人口・国土・経済のそれぞれで約4割を占める巨大国家であり、ASEANで唯一のG20メンバー国であるなど、大きな存在感を示しています。

インドネシアは独立以来、時代とともに発展を続けてきました。多民族からなる「国民国家」を形成した時代、長期政権の下で開発を推し進めた時代、そして1997年以降の経済危機とその後の民主化を進めた時代、これらの時代を通じてJICAは数多くの事業を展開してきました。60年間で派遣した専門家は1万5千人を超え、支援した円借款プロジェクトは500件余り、日本で学んだ研修員や留学生は4万人余りに達します。

このような長年の協力の蓄積により、インドネシアと日本の絆はとても太いものになっています。BBCの世論調査では、インドネシアにおいて「世界に良い影響を与えている国」の一位は日本であり、それはこの数年間、揺らぐことがありません。1974年の大規模な反日デモを契機に、先人たちが努力を続けてきた賜物です。そして日々の生活や仕事において、日本人であることを誇らしく感じる彼らの言葉や態度に接するたびに、この信頼を次の世代に受け継がなければならないと思いを新たにします。

インドネシアは今、さらに成長を加速できるか、中所得国として停滞するのかの岐路に立たされています。自国内に2億5千万人の巨大マーケットを持ち、また二つの大洋に面する恵まれた環境の下で、産業が発展する大きなポテンシャルは疑う余地がありません。しかしその一方で、道路・港湾などインフラ整備の遅れは人口の集中するジャワ島でさえ深刻で、成長の大きな足枷になっています。イノベーションを生み出す産業人材の育成も急務です。これらの問題の解決のためには、インドネシアに進出する日本企業とともに、官民を挙げて取り組まなければなりません。

インドネシアは、安定した民主主義国家として、国際社会から高い評価を受けています。しかし民主化のプロセスには、例えば汚職の蔓延などの副作用とも呼べる危険性が内包されており、民主主義の質を高める努力を続けていくことが不可欠です。JICAは国軍の一部であった警察を「市民警察」に変革させる支援や、住民に裨益する地方分権化を支援してきました。こういう地道な努力が社会の根底を支える土台作りに役立つと確信します。そして、多くの人々がこれらの成長と安定の果実を享受できるように、格差是正、社会保障の整備、若年労働者の就業促進、ジャワ島外の地域開発などにも取り組む必要があります。

日本とインドネシアの両国には、海洋国家や防災国家といった共通点も多く、知恵の交流は双方にとって大きな財産となります。事業の現場で働く専門家、ボランティア、開発コンサルタント、プロジェクト受注企業の方々と力を合わせ、さらには日本の中小企業や地方自治体などの知恵もお借りしながら、日本だからこそできる仕事を通じて、両国の信頼関係の強化に貢献していく所存です。

インドネシア事務所長
安藤 直樹