日本・ペルー外交関係樹立150周年と日系社会について

#17 パートナーシップで目標を達成しよう
SDGs

2023.09.05

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ペルー事務所 所長 西村 貴志

天空の都市マチュピチュや、ナスカの地上絵等の古代文明、近年では美食の国として日本で知られている南米の国ペルーは、実は、日本とは深くて長い関係があります。1873年(明治6年)8月21日に日本とペルーが外交関係を締結し、今年はちょうど150周年を迎えます。ペルーは日本が南米で最初に外交関係を結んだ国であり、ペルーにとっても日本がアジアで最初に外交関係を樹立した国となります。2023年8月21日、日本ペルー外交関係樹立150周年の記念式典が開かれ、ペルー外務省ヘルバシ大臣、ペルー駐箚日本国特命全権大使である片山大使をはじめ、JICAからは宮崎理事が参列しました。

ペルーの日系社会はJICAの重要なパートナー

 外交関係樹立後、1899年4月3日には、移民船の佐倉丸が790人の移民者を乗せて、ペルーのカヤオ港に到着しました。それ以降も多くの方が移住し、様々な苦難を乗り越えながらもペルー社会に溶け込んでこられました。今ではペルーの日系人の方々は約20万人で、ブラジル、アメリカについで3番目の規模を誇り、日本とペルーを結ぶ重要な懸け橋となっています。

 現在、ペルーの日系人の方々は病院や高齢者介護施設の運営などをされており、病院については非日系ペルー人の方も多く利用されています。また、その他小・中学校などへの支援や様々な文化的イベントも実施され、こうした取り組みを通じてペルーの社会経済の発展や日本文化の普及に大きく貢献されてきました。これらは、我が国のペルーに対する援助重点分野の一つである「経済社会インフラの整備と格差是正」に合致する取り組みでもあり、これらの機関に海外協力隊員を派遣したり、助成金での施設整備等の支援をおこなうことで、ともに課題解決に向けて取り組んできています。長年の貢献により培ってこられたペルー社会の日系人や日系社会に対する信頼は、私たちJICAがペルーで業務を遂行する上での重要な基盤でもあり、また、日系社会はJICAがペルーにおいて事業を行う上での重要なパートナーであるといえます。

日系社会の発展にむけてのJICAの協力

 ペルーの日系社会は大変よく組織化され、活発に活動されていますが、もちろん、一概に日系人といっても、ペルーに渡った時期やその後の日本、日系社会との関係も様々であり、日系社会や団体に所属されていない方も当然ながらいらっしゃいます。これらの方々にも、日本の情報を得たり、日本を知る機会を通じて日本に関心を持っていただくことができればと思っています。例えば、JICAには若手世代向けに日系社会次世代育成研修という事業があり、各研修生が日本で自身のルーツを探る学習をしたり、日本の文化や科学技術を学んだり、同世代の日本の学生と交流したりしますが、同研修に参加し帰国した方々は、より日本を好きになり、将来やりたいことが見つかるなど、目をキラキラさせて帰ってこられ、日本を知るには非常に良い機会です。ただ、現状では人数枠が限られており、元々、日本に関心が高い方等の参加が多い状況です。今後、まだ関心があまり高くない方を対象にした取り組みの必要性を感じています。

 また、ペルーの(特にリマの)日系社会は、うまく世代交代を行っているように感じますが、一般的には、近年、世代交代が進むことによっても、日本に関心が希薄な方がさらに増えてきているといわれています。実際のペルーの若者がどう感じているのか知りたく、ある日系の若手の方に伺ってみました。その方によると、若手世代はペルー以外の他国に関心が向いている人も多いのですが、日本が必ずしも関心の対象にならない場合もあり、それは日本語習得の困難さや、日本での生活(学業、就職等)の難しさがその要因として指摘されました。これらはあくまで個人のご意見で、若者全体を代表するものではありませんが、やはり、日本語習得支援が重要であることを再認識し、また、ペルーの日系社会がもっと世界と繋がっていくことで、より日系社会の魅力を増していける可能性があるのではと感じました。

日系社会の若手世代について

 ペルーでは、日系青少年が中心となり、「Lidercambio(リデルカンビオ)」という国際交流イベントが行われています。これは、絶えず変化する世界をリードするためのリーダーシップ向上・価値観の強化を目的としているもので、こうした若者が中心となり、国を超えた日系社会の連携を強化しようとする動きは、大変頼もしく、将来的に日系社会のグローバル化を進めていくものと期待します。JICA事業でも、日本語学習指導法に関する国際セミナーを通じて、国を超えた中南米地域内の横の日系社会ネットワークを強化する取り組み(第三国研修)を今年から開始します。また、ペルーからの本邦技術研修員による、本邦在住日系人の支援(日系サポーター)等、日本の多文化共生推進を支援する取り組みも始めています。これらの事業が日本に関心を持った若手人材の増加の一助になればと期待していますし、さらにこれに限らず新たな展開なども、継続して検討していきたいと思います。

 日系社会の現状、課題は国によっても様々で、ここで述べたのは、日系社会のほんの一側面にすぎません。日系社会は日本とペルーとの懸け橋でもあり、ペルーの開発の重要なパートナーでもあります。外交関係樹立150周年を迎え、JICAは今後も共に様々なチャレンジをしていきたいと思います。

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