5月25日は「アフリカの日」・・・ご存じでしたか?

2024.05.24

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アフリカ部計画・TICAD推進課 シニアアドバイザー 吉澤 啓

1.「アフリカ統一機構」(OAU)設立とその時代

 「5月25日」をネット検索すると、「食堂車の日」「広辞苑記念日」「主婦休みの日」「ホゴネコ(保護猫)の日」などなど、様々な記念日の名前が並んでいますが、Wikipediaでは「アフリカの日」が堂々のトップに挙げられています。読者の皆さん、ご存じでしたか?

 1963年5月25日、アフリカ30カ国による「アフリカ統一機構」(OAU、現在のアフリカ連合(AU)の前身)の設立決定がなされたことを記念して、5月25日は「アフリカの日」とされています。OAUの正式名称は、Organization of African Unity、すなわち、アフリカ「統一」のための組織だったのですが、皆さんご存じの通り、アフリカは現在54か国[1]に分かれており、どの国がどこにあるのか、多くの日本人にとっては地図の上で探すのも大変です。

 世界史や地理の教科書などでは、「旧宗主国が現地の事情を無視して国境線を勝手に引いたから」と説明されていますが、一方で、国境線の見直しを始めると無用な争いを避けるため、アフリカ各国はOAUの発足と同時に、植民地時代から継承した国境線の不可侵を決定しています。

2.OAUからAUへ、アフリカ「統一」から「地域統合」へ

写真提供:今村健志朗/JICA

 それ以降、植民地からの更なる独立・解放では、アフリカは大きな成果を上げましたが、国境線を変えないまま「統一」を進めるという理想へのチャレンジには、20世紀中にはほとんど進展がありませんでした。例えば、1990年代には隣国同士であっても空路で直接に往来するのは難しいことが多く、数日かけてバスを乗り継いでようやくたどり着くか、飛行機で一旦欧州に出て乗り換えてから次の国に行かざるを得ないこともしばしばでした。

 その1990年代、世界中がグローバリゼーションに沸いている最中、アフリカは、貧困や内戦、エイズの蔓延に苛まれ、マージナライゼーション(周縁化)とも揶揄される時代でした。 このような厳しい状況の下、南アフリカのムベキ副大統領(当時)を中心に「アフリカン・ルネッサンス」(アフリカの再生)が提唱され、2001年の「アフリカ開発のための新パートナーシップ」(NEPAD)の採択とともに、2002年には「アフリカ統一機構」(OAU)の「アフリカ連合」(AU)への改組が決定されました。これらによって、「地域統合」(Regional Integration)への新たなスタートが切られたのです。

3.アフリカ「地域統合」とJICAの協力

 その後、AUは2003年に包括的アフリカ農業開発計画(CAADP)を、2012年にアフリカ・インフラ開発計画(PIDA)を採択し、2018年にはアフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)設立協定にアフリカ44か国が署名するなど、アフリカ大陸全体を一つの経済圏に統合するための努力を行い、それが着実に実を結びつつあります。

 JICAは、2003年のTICAD Ⅲ(第3回アフリカ開発会議)でNEPAD支援がメインテーマに取り上げられたことを受けて、2008年のTICAD IVでコメ増産イニシアティブ、2013年のTICAD Vで回廊開発イニシアティブを打ち出すなど、AUの開発計画推進を支援しています[2]。さらに、2022年末にはAfCFTA事務局との協力合意書に署名し、現在その具体化を進めています。運輸・物流インフラの整備、通関等手続きの簡素化・迅速化などでも引き続き協力しています。

2022年12月AfCFTA事務局と業務連携協定を締結した際の様子

4.アフリカ地域統合のポテンシャルと日本

 アフリカ大陸を一つの国としてみると、その人口規模は中国・インドを上回りつつあり[3]、経済規模もインドの9割、日本の7割に達しています[4]。すなわち、アフリカが1つにまとまれば、すでにインドに比肩する経済圏であり、日本にとっても見過ごせない存在なのです。

 さらに、2050年には世界の4人に1人がアフリカ人になると予測されています。世界銀行によれば[5]、AfCFTAの実施により、2035年までにアフリカのGDPは7%増加し、1790万人分の雇用創出、4000万人の貧困削減が期待されています。

 このように、アフリカの地域統合が深化し1つの巨大マーケットとして統合されれば、アフリカ市場へのアクセスが容易となり、投資の機会が大きく拡大します。これは、人口減少社会の日本にとっては大きなチャンスです。このアフリカのポテンシャルをみすみす見逃しては、日本の将来にとって取り返しのつかない禍根を残すことになるでしょう。来年8月には横浜で第9回アフリカ開発会議(TICAD9)が開催されます。第1回TICAD開催から今年で31年。これまで積み上げてきた実績とアフリカとの信頼をテコに、アフリカの地域統合への協力を進め、アフリカと共に成長することが、日本とアフリカの将来のために必要なのだ、と痛切に感じています。

[1] アフリカ連合の加盟国は55か国。
[2]
AU大陸アジェンダと JICAの協力概要  (JICAウェブサイト)
[3] 国連の中位推計 によれば、2024年7月現在で、アフリカ14.9億人、中国14.2億人、インド14.4億人
[4]
World Bank Open Data に基づく2022年時点のGDPは、アフリカ2.96兆ドル、インド3.42兆ドル、日本4.26兆ドル。
[5]
Free Trade Deal Boosts Africa's Economic Development

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