地域との共生を目指して:能登半島地震に際して考えたこと

#10 人や国の不平等をなくそう
SDGs
#11 住み続けられるまちづくりを
SDGs
#17 パートナーシップで目標を達成しよう
SDGs

2024.07.05

サムネイル
北陸センター 所長 富田 洋行

 今年元日の能登半島地震の発災以降、困難な状況の中で日常を取り戻そうと奮闘している地域住民や自治体職員の皆様、対口支援やボランティアなどで復旧・復興の支援に参加されてきている全ての方々に、敬意を表します。

1.はじめに 期待値と現実:

 1月1日以降、「石川県にあるJICAの拠点として被災地支援をしなければ。でも何ができるのだろう?」ということが、今でも頭の中を回っています。時間の経過とともにその「何が」は変化し続けていますが、それは日本の地方・地域において「JICAがどのような存在なのか」「JICA自身がどのように存在したいと思っているのか」ということと深く結びついています。
 発災直後の状況把握が終ってすぐ、正月休み明けの4日からは、JICAとして「何をすべきか」という議論が始まりました。JICAの中でも、中越地震(2004年)、東日本大震災(2011年)、熊本地震(2016年)など、日本国内の災害に際して被災地支援を行った経験が語り継がれており、この度の能登半島地震に際しても同様な支援実施を期待する声が上がりました。また、JICAの海外事業(海外協力隊や国際緊急援助隊、平和構築支援など)を知る人々からも、海外での事業経験を日本の被災地でも活用してほしい、という声が寄せられました。
 その一方で、JICAに対する実際の支援要請は、いち早く支援に乗り出した民間企業や非営利法人から、国際緊急援助隊事務局に対して機材貸与があったのと、被災地ボランティアに入る海外協力隊経験者に対して経費支援があったのみで、県や被災市町からJICAへのアプローチはありませんでした。また、JICAは政府開発援助(ODA)の実施機関であり国内発災時に自治体や被災者に対して支援を提供することを組織として求められているわけではなく、支援に向けての働きかけをどのように行ったらよいのか、迷うことばかりでした。

2.緊急期対応を振り返って:

 悶々としつつも日々情報収集とできることの整理を進め、1月11日には、JICA内部での承認も得て緊急支援期から復旧・復興期のJICA支援の方向性案が固まり、JICA北陸センターは具体的な動きの準備が整いました。JICAの支援の方向性を検討するにあたっては、①「JICA組織として」被災地支援に職員等が参加できるようにすること、②地元の団体や自治体と協働し早く「JICAの果たすべき役割」を作ること、③JICA事業の地域リソース復興への中長期コミットメントを打ち出すことの3点が重要なことであると考えました。

JOCA/佛子園とJICAの避難所支援ベースでの会議(4月、能登町)

 JICA内で支援の方向性が決まった後、それを緊急支援、復旧・復興支援対応を行う自治体等にどのように説明して受け入れてもらうかが次の課題でした。ここでの決め手は、1月の田中理事長の石川県来訪でした。理事長訪問に際して自治体や被災地支援に入っている団体からは「JICAからの要員派遣」や「避難所支援での協働」について期待感が示されました。この結果として、①被災地へのJICA職員派遣(1月19日~4月19日)と海外協力隊OVのボランティア参加側面支援(1月9日~3月15日)と、②石川県庁へのJICA職員派遣・被災外国人支援(2月6日~継続中)が実現し、能登半島地震支援での「JICAの役割」を決めることができました。

3.復興と地域との共生に向けて:

 比較的早い時期での組織決定と、具体的な被災地支援・県庁へのJICA職員の派遣は、JICAへの信頼醸成に大きく貢献したと思います。石川県や基礎自治体、市民団体等の中でJICAに対して一定の期待値が生まれ、「里山里海を活用した生業の持続可能な復興」や「経済活動の再生に欠かせない技能実習生等の外国人の社会・経済活動参加推進」の分野でJICAが一定の役割を期待されるようになってきました。

石川県庁・JICA共催で実施した被災外国人のための支援制度説明会後、支援金申請を行う技能実習生(4月、志賀町)

 これらの地域からの期待に応えるために、中長期に石川県及び被災した基礎自治体に、国際協力推進員を配置すべく現在それぞれと協議を進めています。復興過程がどのようなプロセスを経て地域が再生していくのか、まだまだ議論は続く段階ではありますが、この段階からJICAの参加が期待されるようになったことは、緊急期に迅速に支援活動に関わっていけたためであると思います。国際協力推進員の配置にとどまらず、JICA北陸センター自体が復興のプロセスと共に歩んでいくために、私自身もセンター要員もこれまでどおりフットワーク軽く、自治体、市民団体、民間企業、大学等の関係者と直接的な対話に努めて行こうと考えています。
 新しい開発協力大綱では、「共創」、「連帯」、「環流」など、日本国内の様々な組織・個人とODA事業主体者との関係の強化を期待している内容が謳われています。これらを具体化するために、能登半島地震の対応を通して思うことは、まずJICAとその職員等が、日本国内の地域に主体性を持って「存在する」ことが大切であるということでした。途上国におけるJICAの事業は、プロジェクトオーナーである相手国政府を支援することであり、プロジェクト目標達成によって終了します。しかしながら日本国内では事情が異なります。日本の国内では、JICAは「地域にとってどのような存在でありたいのか」を考え、地域の一員として社会・経済に果たす役割を構築していくことが望ましいのであろうと思います。

桜が美しい能登線の廃駅「波並」駅(4月)

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