jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

聖なる光輝く島・スリランカがもたらしてくれた恵み

2024.12.23

サムネイル
スリランカ事務所 助川 聖佳

今年の4月に入構し、9月下旬より3か月間、スリランカ事務所にて研修中の1年目職員が、現地でさまざまな現場に足を運んで感じたことを、ありのままに表現しました。国際協力の世界に足を踏み入れたばかりの新人の目線から綴った文章を、ぜひご一読ください!

スリランカの大統領公邸に詰めかける大勢の人々。2022年、未曽有の経済危機に陥った原因が当時のゴタバヤ政権の失政にあるとして、政権の退陣を求めるデモが頻発しました。抗議活動は日を追うごとに勢いを増し、ついには、大統領が国外に脱出するという結末を迎えます。その後、大統領の座を受け継いだウィクラマシンハ氏は、IMF(国際通貨基金)からの支援を取り付け、経済の立て直しにおいて一定の成果を上げました。しかし、増税や電気代等の値上げを伴う政策は、国民の生活に追い打ちをかけたと有権者に捉えられ、今年9月に行われた大統領選挙では、左派政党のディサナヤケ氏が当選しました。古い政治体質の刷新を掲げ、経済再建の途上において生活苦を強いられた国民の救済を打ち出す新大統領は、この国をどのような方向へと導くのか―。私がスリランカの地を踏んだのは、激動の数年間を経て、この国が重大な局面を迎えているというまさにそのときでした。スリランカの行く先を左右する重要な時期に、当地にて働けるという好機を活かし、この国のあゆみとゆくえに考えを巡らせたい。そう願って、私はスリランカにやってまいりました。

(2022年7月、ゴタバヤ大統領の退陣を求めて大統領公邸に詰めかける大勢の人々)

2022年7月、ゴタバヤ大統領の退陣を求めて大統領公邸に詰めかける大勢の人々

本ブログは、読者の皆さんに対して、開発課題に思いを馳せるきっかけをお届けしたり、国際協力に取り組むうえで職員一人ひとりや組織が心にかけていることは何か、その一端を感じていただいたりすることを目的としています。いまこの記事を執筆している私自身は、今年の4月に入構したばかりの最若手です。これからお読みいただく拙文は、この場所で、何かひとつでも成し遂げた者が書き上げた文章ではありませんが、新前の視点から、思いの丈を綴らせていただきたいと思います。

「激動のスリランカのいまをこの目で見たい」という目的のほかにも、JICA職員が対峙する「現場」とは一体何なのか、その輪郭を掴みたいという思いを胸に、私はスリランカを目指しました。これまでに、JICA海外協力隊員が活動している草の根の現場から、スリランカ政府高官との協議への同席に至るまで、ありとあらゆる場所に足を運びました。なかでも私の心に深く刻まれたのは、キャンディ(スリランカ中部の都市)にて環境・日本語教育の協力隊員として活躍している皆さんの、キラッと光るふるまいです。配属先の市役所の職員や現地住民の方々と腹を割って話し合い、本当の意味での信頼関係を築くために、勉強し始めてまもないシンハラ語を駆使して現場に飛び込んでいる勇姿に接するたび、襟を正す思いがしました。加えて、折り紙や人形劇等のツールを使って、幼稚園児たちにごみ分別について学んでもらうための工夫を凝らしていたことも、印象に残っています。JICAは、技術協力、有償資金協力、無償資金協力、ボランティア派遣事業、民間連携事業、草の根技術協力事業等のさまざまな協力形態を持つ組織ですが、その一つひとつを実際に動かしているのは、実に多様な関係者の皆さんです。プロジェクトの実働部隊として、持てる知見を総動員して尽力されているコンサルタント・専門家の皆さんや、高い技術力をもって現地の発展に貢献されている企業の方々、事業の実施機関である先方政府、我々と同じく現地の課題にアプローチする開発パートナー。このような国際協力の担い手が一堂に会する場に居合わせた際に、それぞれの熱意が交錯することによる波動の高まりや、全関係者が各々の持ち場で課題に向き合っていることを肌で感じました。このことを心に留めつつ、それぞれの立場の視点を持ちながら事業を前に進めていくことが、現場の最前線を支えるJICA職員の責務であると実地で学びました。

(キャンディ市内の幼稚園を訪問し、ごみ分別の大切さを伝える環境教育隊員の活動現場)

キャンディ市内の幼稚園を訪問し、ごみ分別の大切さを伝える環境教育隊員の活動現場

(高齢化対策における連携について、世界銀行をはじめとするパートナーと協議する様子)

高齢化対策における連携について、世界銀行をはじめとするパートナーと協議する様子

冒頭で言及したスリランカの現在地に話を戻すと、2023年の貧困率は25.9%(世界銀行)で、最も弱い立場に置かれた人が苦境に立たされているという現実が、いまもなお目の前にあります。二度とこのような事態に陥らないように、国民が選んだリーダーや新政権と手を携えて、未曽有の危機からの立ち上がりを全力で支援すること。これこそJICAが果たすべき役割であり、一番のフロントに拠点を構えるスリランカ事務所の一丁目一番地でもあります。新米の私は、自分の仕事が国の立て直しに直結するということの意味を体得できていませんが、いまはただ、一つひとつの仕事を丹念に積み上げていきたいと考えています。

(現地企業との共催で実現した「乳がんスクリーニングイベント」にて撮影した1枚)

現地企業との共催で実現した「乳がんスクリーニングイベント」にて撮影した1枚

この原稿を執筆しているいま、日本やJICAを信頼して協働してくれている現地スタッフとスリランカに貢献したい一心で尽力する日本人所員、その両者がともに汗を流す在外事務所もまた、ひとつの現場であることに思いを致し、私にとっての「現場」に根を下ろしています。さまざまな現場でご一緒した、キラッと光るふるまいで周囲を魅了する関係者の皆さんのように、私も自分の持ち場で一隅を照らせるようになりたい。そして、いつかまた絶対にスリランカに戻ってきたい。そう願って、当地にいられることの幸せを噛み締めています。

\SNSでシェア!/

  • X (Twitter)
  • linkedIn