jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

アフリカ食料システムフォーラム2024に参加して

#1 貧困をなくそう
SDGs
#2 飢餓をゼロに
SDGs
#5 ジェンダー平等を実現しよう
SDGs

2024.12.24

サムネイル
経済開発部 農業・農村開発第二グループ 参事役 鈴木 文彦

2024年9月、ルワンダで開催されたアフリカ食料システムフォーラムに参加しました。食料システムとは、食料の生産、加工、流通、消費、廃棄に至る全過程とその社会的・環境的影響を含むもので、近年、農業政策や国際開発で頻繁に使われています。フォーラムでの議論、JICAの関連する取り組みを紹介します。

1.アフリカ食料システムフォーラム2024

2024年9月、ルワンダの首都キガリで開催されたアフリカ食料システムフォーラムに参加しました。5日間の日程で、世界各国から約5,000人が参加。私は初日・2日目の一部プログラムのみ参加しました。2024年のテーマは「Innovate, Accelerate and Scale: Delivering food systems transformation in a digital and climate era(革新、加速、拡大:デジタルと気候変動の時代にフードシステムの変革を実現する)」。多岐に渡るトピックについて、全体セッション、サイドイベントに加え、アフリカ各国の国別ピッチや協議、TEDx Talks等、様々な形態で、活発な議論が行われました。イベントにはアフリカの政府関係者、民間企業、援助関係者が数多く参加しており、意見交換、ネットワーキングの良い機会にもなっています。

フォーラム会場のキガリコンベンションセンター(フォーラム報告書より)

筆者が登壇したサイドイベント

2.食料システム(Food Systems)とは

フォーラムのタイトルにもなっている“食料システム”の概念は、2021年の国連食料システムサミット[1] を契機に、農業政策や国際開発において頻繁に用いられています。食料システムとは、食料の生産、加工、流通、消費、廃棄に至る全過程とその社会的・環境的影響を意味しています。生産から消費までの経済活動を主眼とするフードバリューチェーンよりも、より広く社会的影響も重視した概念と言えます。飢餓や栄養不良、気候変動、環境劣化など現代の複合的な課題に対応するためには、食料システム全体の改善が必要であり、特に課題の深刻度が高いアフリカでは、“持続的で強靭な食料システム“が求められています。

RCP4.5:温室効果ガス放出量が2050年にピークを迎えるシナリオ,
RCP 8.5 右:温室効果ガス放出量が2100年まで増え続けるシナリオ. (C.ファウラー博士プレゼンより, 2024 )

[1] 概要: 国連食料システムサミットの概要(2021年9月):農林水産省
[2] 2024年世界食糧賞受賞者 キャリー・ファウラー博士特別シンポジウム:作物遺伝資源多様性保全に捧げたキャリアおよび適応作物と土壌のための新ミッション | 国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

3.アフリカ食料システムフォーラム2024の振り返り

フォーラム主催者がまとめた報告書(11月にWeb上で公開)[3]では、フォーラムの成果として、①気候変動に対応する農業技術の導入、②若者と女性のリーダーシップの促進、③域内貿易の活性化、そして④小規模農家と中小企業への投資の拡大、に関する取り組み強化の必要性が確認されました。また、⑤土壌健康の改善やデジタル技術の活用、⑥具体的な政策提言とパートナーシップの重要性も再確認されています。

食料システムは非常に広い概念ですが、報告書で挙げられたポイントは、既に多くの関係者が取り組んでいるものばかりです。ただ、システム全体を考えることで、より相互の関係性を意識すべきもの(生産と加工や流通、あるいは生産と環境的影響(気候変動)、生産と社会的影響(ジェンダー)など)や、取り組みを強化すべきものが、より明確になってきています。私が登壇したサイドイベント「Scaling Investments for Rice Self-Sufficiency(コメ自給にむけた投資拡大)」では、コメを主食とする国の多い西アフリカにおいて、持続的に市場で選ばれるコメ生産を可能とするために必要な活動について議論しました。その中で、JICAからは生産者のリスク軽減のため、水供給の安定、農業保険、質の高い稲種子の供給、またコメを買い付ける側の資金繰りについて、その重要性とJICAの取り組みを紹介しました。

[3] https://agrf.org/wp-content/uploads/2024/11/AFS-Forum-2024-3_Report-spreads.pdf

4.持続的で強靭な食料システムの強化にむけて

報告書で挙げられたポイントについて、JICAも様々な取り組みを実施しています。農業分野における気候変動対策については、多くの農業関連事業で実施されており、アフリカ地域では85%のJICAの農業関連事業で実施されています。具体的には、効率的な灌漑水管理、気候変動影響下でも栽培可能な品種の導入、干ばつ・洪水の影響を軽減する営農計画・営農方法の指導などです。また、2024年10月に「農業・農村開発協力における気候変動対策の取組戦略」を作成・公開しました[4]。本戦略書では、気候変動の影響評価ツールの整備、気候変動適応策と緩和策の推進、取組状況のモニタリング・発信等6つの柱が書かれ、本戦略に沿って、より一層農業分野の気候変動対策に力を入れていきます。

[4] https://www.jica.go.jp/information/press/2024/20241106_31.html

タンザニアの天水稲作ほ場。畔(あぜ)を作ることでほ場の保水力が高まり、 干ばつ時にも収量減の可能性が減る。(タンザニア、2018)

報告書で挙げられたポイントの一つである女性のリーダーシップについては、多くの農業案件で取り組んでおり、タンザニアの稲作事業はその好事例と言われています[5]。調査を通じ農作業の6割以上を女性が担っている事を把握し、2001年開始の事業から稲作研修参加者の半数を女性にし、またジェンダーに関する追加研修プログラムを実施しました。男性と女性が共に参加し、また家計簿や財務管理のトレーニングを行うことで、夫と妻が一緒に話し合って家計を決める、あるいは一緒に仕事を行い、その結果、米の生産と地域社会の両方にポジティブな影響を与えています。

[5] https://agrf.org/wp-content/uploads/2024/11/AFS-Forum-2024-3_Report-spreads.pdf

ジェンダー研修の様子(写真提供:田中由美子氏)

このフォーラムのみならず、農業セクターの会議では、食料システムの強化に向けた鍵は実施(Implementation)と言われています。食料システム全体を把握・分析し、各要素間の関係性、あるいは社会的影響・環境的影響を意識したり、取り組みを強化すべき分野を明確にしつつ、JICAのこれまでの支援経験に必要な修正を加え、政府や他援助機関等とも協力して、“持続的で強靭な食料システムの強化”という難しい課題解決にむけて、具体的な事業実施を通じて貢献していきたいと思います。

\SNSでシェア!/

  • X (Twitter)
  • linkedIn