jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

ジェンダー平等と女性のエンパワメント~誰もが自分らしく生きられる社会へ~

#5 ジェンダー平等を実現しよう
SDGs

2025.04.10

サムネイル
ガバナンス・平和構築部 ジェンダー平等・貧困削減推進室長 溝江恵子

「持続可能な開発のための2030アジェンダ」では、ジェンダー平等の実現と女性・少女のエンパワメントは全ての目標とターゲットの進展に欠かせないとされるなど重要な開発課題です。JICAの取り組みをご紹介します。

1.女性の経済的エンパワメント~女性による起業・操業強化の支援事例

女性の経済的エンパワメントは、JICAが優先的に取り組む課題の一つです。経済力を持つことにより、女性は人生における選択肢を広げ、尊厳のあるより良い暮らしを送ることが可能になります。ですが、女性は金融やビジネス知識などへのアクセスに制約があることが多く、例えばスタートアップが盛んな米国においても、女性が起業したスタートアップは全体の38%を占めるにもかかわらず、それらの企業が受けた投資は、スタートアップへの投資額のたった2%だったという調査結果があります(注1)。

JICAが世界銀行等との協調融資により実施した「エチオピア・女性起業家支援事業(注2)(以下、WEDP)」では、エチオピアの女性起業家に対して金融アクセス及び研修機会を提供し、女性起業家の経営或いは共同経営する中小零細企業の所得向上と雇用拡大を目指しました。ビジネススキルに関する知識やネットワーキングの機会が限られる女性に対し、体系的に整理されたビジネス知識(財務管理、カスタマーケアなど)に加えて、起業家の積極的、革新的なマインドセットと行動促進にも重点を置いた研修を実施。研修を修了した女性にはWEDPに参加する金融機関へのアクセスを提供しました。そして、マイクロファイナンス機関を中心とするWEDP参加金融機関に対しては、審査やリスク管理に関する能力向上支援を行い、中小零細企業向け融資の促進を図りました。 以上の支援により、研修を受けた女性は約32,700人、融資を受けたのは約24,600人(注3)となりました(2023年5月時点)。WEDPにより融資を受けた女性のうち66%が正規の金融サービスを受けた経験がなかったため、本事業は女性の金融アクセス改善に貢献しました。そして、WEDPにより融資を受けた女性たちは順調に返済を行っており、不良債権率は低いという結果となっています。事業が対象社会にもたらした変化(インパクト)を測定するインパクト評価によると、WEDPの融資を受けていない女性と比較して、WEDP会員の事業の収益は平均で67%、雇用は58%増加しました(注4)。ビジネスの知識や金融機関へのアクセスなどを提供することで、女性たちは本来の力を発揮することができたといえます。

2.ジェンダーに基づく暴力の撤廃に向けて

ジェンダー不平等が最も苛烈な形で表出するのが、ジェンダーに基づく暴力(Gender-Based Violence: GBV)です。GBVは「『女らしさ』や『男らしさ』といった、社会文化的に構築された固定的な性役割や性規範及び不平等な力関係を背景にして振るわれる暴力(注5)」であり、身体的暴力、性暴力に加え、精神的な暴力、経済的な暴力(外で働くことを禁じる、生活費を渡さない等)も含みます。世界の女性の3人に1人は身体的暴力・性暴力を受けたことがあるとされており(注6)、GBVは女性・少女の心身に大きな傷を与え、家族やコミュニティにも負の影響を与えることから、JICAは重大な課題と捉えてGBVの撤廃に取り組んでいます。

パキスタン・パンジャブ州で行っている、GBVの被害当事者への支援体制強化のための協力をご紹介します。パキスタンでは女性に差別的な価値観、慣習が根強く残っており、JICAが実施した調査ではパキスタンで最も多く発生しているGBVは夫による暴力(ドメスティック・バイオレンス)です。パンジャブ州社会福祉局が運営する一時的保護施設(シェルター)の関係者・利用者に調査を行ったところ、利用者女性のうち結婚している人が8割以上、そのうち9割は暴力が背景にある離婚申請のための滞在でした。パキスタンには経済的自立を念頭に中長期的に滞在できる公的施設がなかったことから、JICAではGBV被害当事者が中長期的に滞在して経済的自立や社会復帰を目指す施設である「Transitional Home」を試行的に設置し運営を支援しています。そこでは技術研修に加えて、心理カウンセラーによるカウンセリング、レクリエーション等を提供し、女性たちの心理面の回復と自立に向けた技術習得を支援しています。こうした支援により、就職して社会復帰を果たす女性も出てきました。

Transitional Homeで絞り染めの研修を受ける女性たち1

Transitional Homeでバイクの運転を習う女性

Transitional Homeで絞り染めの研修を受ける女性たち2

Transitional Homeで裁縫を習う女性

3.誰もが自分らしく生きられる社会へ

先人たちの努力によって改善してきた面もありますが、ジェンダー平等の達成にはあと約170年かかるという調査結果(注7)もあります。女性、男性、多様な性的指向・性自認を持つ人々、誰もが自分らしく生きられる社会へ向けて変化を加速していくことを目指すべく、JICAジェンダー平等・貧困削減推進室のスタッフ全員は、事業を実施している専門家・コンサルタントやJICAの関連部署と協力して取り組んでいます。

一方、個人レベルでも、世界でジェンダーにより差別や困難に見舞われている人々の状況を知ろうとすること、ジェンダー平等と女性のエンパワメントに向けた活動を行っている方々への応援や、自分の持つジェンダーバイアスを自覚して修正していくなどはできることだと思います。微力ですが、私も実践していきたいと思います。

国際女性デー(3月8日)のテーマカラーであるミモザの黄色を身につけ、女性のエンパワメントや多様性について仲間と共に改めて考えました

今年3月は国際女性デーや女性史月間として、本ブログを含め、JICA関係者14名からのリレーメッセージを発信しました。様々な国や地域の女性の現状や課題、そして世界の女性へのメッセージを綴りましたので、是非ご覧下さい!

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