ボツワナの経済多角化を目指して
2025.04.25
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- ボツワナ支所 支所長 殿川広康
2025年2月に開催されたカズングラ橋マラソンにJICAボツワナ関係者21名で参加しました。カズングラ橋及び国境施設を巡るJICA協力についてご紹介します。
2025年2月22日(土)、ザンビアとの国境の街、カズングラをスタート地点とするカズングラ橋マラソンが開催され、JICAボツワナから海外協力隊員を中心に21名の関係者が参加しました。5キロ、10キロ、21キロのコースに分かれ、朝6時から順次スタート。参加者はカズングラからボツワナ側の国境施設を横目にした後、カズングラ橋を渡ってザンビア側へ。折り返し地点まで走り、ゴールを目指しました。
早朝のカズングラ橋の上からは、チョベ川・ザンベジ川、そして川の両側に位置するザンビア・ナミビア・ジンバブエ・ボツワナの4ヶ国が一望でき、その雄大な景色を楽しみながら、各自のペースでレースを満喫しました。
このマラソン大会の舞台となったカズングラ橋及びボツワナ側・ザンビア側の国境施設は、アフリカ南部を縦断する「南北回廊(南アフリカの主要港であるダーバンからジンバブエないしボツワナを経由してザンビアの首都ルサカへと続く回廊)」に位置する交通の要所です。ボツワナからザンビアに向かう場合、以前はボツワナ側の国境施設で出国手続きを行った後、フェリーによってザンベジ川を渡り、ザンビア側の国境施設で入国手続きを行っていたため、通行に多くの時間を要していました。こうした課題を解決するため、両国政府とアフリカ開発銀行、JICAが協力し、橋と国境施設が建設されました。
カズングラ橋を快走する海外協力隊員
各距離を完走したJICAボツワナ関係者
建設のきっかけは、約25年前にJICAが行った調査です。その後、南部アフリカ開発共同体(SADC)が詳細調査を行い、2021年にカズングラ橋と両国の国境施設が完成しました。以前はフェリー待ちで平均30時間かかっていた国境通過が大幅に短縮され、交通量も増加。国境施設には「ワンストップボーダーポスト(OSBP)」が導入され、入国先の施設で一括して手続きが可能になりました。
しかし、OSBPの運営経験が乏しかったため、JICAは2025年3月まで技術協力を実施。両国合同の運営体制整備やマニュアルの作成、関係職員の研修などを支援し、関係各機関の能力強化を図ってきました。この成果はボツワナ国内の他の国境でも応用され始めています。
カズングラを訪問時に乗車したタクシーの運転手さんは、カズングラ橋を指しながら、「あの施設のお陰でザンビアとの行き来が本当に楽になったのだ」と熱く語ってくれたのが印象的でした。マラソン大会の応援には、ボツワナから参加した協力隊員の同期隊員がザンビアから駆けつけてくれ、訓練所以来の再会を懐かしんでいました。こうしたつながりも、JICAの協力がなければできなかったかもしれません。
カズングラ橋開通以前、浮桟橋で渡河していた時の様子
かつて使われていた桟橋から望むカズングラ橋
ボツワナ側旅客ターミナル施設。この施設一か所でザンビア出国(右側)とボツワナ入国手続き(左側)が可能に
ボツワナは、1966年の独立当初、世界で最も貧しい国の一つでしたが、翌年に発見されたダイヤモンド鉱床により経済成長を遂げ、現在では一人当たりGNIが8,340ドル(2023年世銀)に達する高中所得国です。しかし、人工ダイヤモンドとの競争や世界的なダイヤモンド需要の低迷により、近年のボツワナの経済状況は厳しさが増しており、ダイヤモンド依存から脱却することは喫緊の課題になっています。
四方を陸に囲まれた内陸国であり、人口248万人(2023年世銀)と国内市場の狭小なボツワナにとっては、輸出産業の育成が経済多角化の鍵です。貿易円滑化のための協力に加え、有望産業育成や中小企業支援のような協力も必要であり、JICAは今後も対ボツワナ協力を継続していきます。これまでの取り組みと今後のJICAの協力が、ボツワナおよび南部アフリカ地域の持続可能な発展につながることを願っています。
カズングラ合同国境運営委員会で協議するボツワナ・ザンビア両国政府職員とJICA専門家
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