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セビリアの約束

#17 パートナーシップで目標を達成しよう
SDGs

2025.07.18

サムネイル
上級審議役 平田 仁

セビリアで開催された国連開発資金会合(FfD4)は、ODAが削減される中、毎年4兆ドルの開発資金ギャップをあらゆる方法で埋め、あと5年に迫ったSDGsを実現するポジティブなエネルギーに包まれていました。

国連開発資金会合(Finance for Development:FfD4)

6月30日~7月3日、スペインのセビリアにて、途上国の開発に必要な資金調達について議論する国連開発資金会合(FfD4)が、開催されました。開催国スペインの国王、首相をはじめ50か国以上の代表、国連事務総長、世界銀行総裁、ADB総裁等の国際機関トップ、企業、市民団体代表、合計1万5,000人が集まりました。日本からは外務政務官を長とする政府代表団と共にみずほ銀行はじめ民間企業の代表者が参加し、JICAからは私も参加しました。

平田上級審 会場での様子

アメリカが参加しない今回のFfD4の雰囲気は停滞したものになるのではないかと危惧していましたが、FfD4は、困難な時だからこそ、like mindedなパートナー(同じ志を持つ仲間)と一緒に新たな解決策を進め開発資金とアウトカムを拡大(scale)しようというポジティブな熱気に包まれたものでした。

今回、FfD4で合意された成果文書「セビリアの約束」は、近年のパンデミックやそれに伴う財政危機、債務問題、気候変動 、貧困等の問題の深刻化や、SDGs達成に必要な資金と実際の投融資のギャップは年間4兆ドル(約590兆 円 (*1))という絶望的な状況とそれに伴うSDGs達成の遅さといった状況を踏まえて作成されたことが特徴です。

パンデミック後の食料やエネルギー価格の高騰の影響をより強く受けた途上国は、貧困が拡大、これに伴いSDGs実現に必要な資金需要が拡大しました。加えて、インフレ、金利上昇の影響を受けて、途上国の債務問題が深刻になっています。途上国政府予算に占める債務返済の割合が上昇し、インフラ投資や経済発展に必要な資金が不足する状況に、途上国は危機感を強めています。

FfD4の直前、経済協力開発機構(OECD)は、2024 年のOECDの開発委員会メンバー国のODAが前年比で9%減少見込みであると発表しました。財政基盤が弱く、政府の支出をODAに頼っている国にとって、この減少の影響は極めて大きな問題です。

グローバルサウスが危機感を強める原因の一つには、国の経済発展が進む前に、先進国も取り組む高齢化のような社会課題に直面している点もあります。コスタリカやメキシコ等のラテンアメリカの高齢化のスピードは、日本と同等かそれ以上に早くなると予想され、高齢化が迫る中で、どのように経済発展と高齢化対策とを両立させ、資金を確保していくのか、熱い議論が展開されていました。

FfD4の参加者と

イノベーションとパートナーシップ

より複雑化し難しい課題を前にして、今回のFfD4は以下の3つの対応を示しました。

(1)あらゆる資金を動員し革新的な資金動員方法を広げる。
SDGs資金ギャップは4兆ドル(約590兆円 )ですが、世界の金融資産は約500 兆ドルあり、その1%を社会課題解決のために回せたら、資金ギャップは解消します。社会課題の解決と経済的な利益の両立を目指す「インパクト投資」の拡大や、公的資金と民間資金を組み合わせる資金の調達方法が議論されました。民間金融機関の参加者が存在感を示したのは、こうした背景があります。
また、途上国の財政予算が限られる中で、公的開発金融機関の役割が大きく注目されました。公的開発金融機関のガバナンスを改善する上で、こうした金融機関が債券を発行しマーケットからのエンゲージメントを受けることの重要性も指摘されました。

(2) 限られた資金を効果的に使い、より良い結果(アウトカム)を出す。
データを活用し実績に基づき政策を策定し、限られた資金でより効果的にアウトカムを導くことも議論されました。また成果に基づき資金が支払われる成果連動型ファイナンス(Outcome Based Finance)の事例も注目されていました。

(3) パートナーシップを組んで改善を止めない。
途上国と先進国の両方が様々なテーマにプラットフォームを立ち上げ、好事例の共有と改善策の議論をする姿が目立ちました。途上国がリードをとり、より効果的な方法を探る姿勢が、今回の会議がポジティブな雰囲気で終わったことに繋がったと思います。

セビリアの約束の実現

グローバルサウスは、危機感を背景に、自ら新たな改革を進める意欲を高め、ヨーロッパ諸国、インパクト投資家、民間金融機関もこの新しい動きに敏感に反応していることが印象的でした。

日本も、ODA資金を介して、民間資金を動員することや相手国の資本市場を拡大することに貢献しようとしています。4月にJICA法が改正され、JICAは民間事業への投融資に加えて、相手機関や企業の債券購入や債務保証、成果連動型借款等を行うことができるようになりました。会議の参加者からは、JICAが民間資金動員と、現地の国内資金動員の両方に貢献し、アウトカムに着目した活動を広げる動きを大いに歓迎されました。まさに開発資金に関する大きな変革のタイミングで、日本は準備をすることができました。民間企業含め様々なパートナーとの共創を拡大し、具体的なアウトカムを示しセビリアの約束を果たしていきたいと思います。

  • *1 : 1ドル=145円

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