JICAを介して繋がる、広がる ―ザンビアと日本の新たなビジネスの架け橋―



2025.08.07
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- ザンビア事務所 泉 恵太
JICAがサポートしてきたザンビアの中小企業が大阪・関西万博出展を実現!JICAは両国を繋ぐ架け橋として、ザンビア政府とタッグを組み、カイゼン を通じた企業支援や両国のビジネス交流の取り組みを紹介します。
2024年11月、JICAザンビア事務所に嬉しいニュースが届きました。JICAがザンビアの中小企業開発省と共同で実施している製造業の中小企業向け「ビジネス・エンパワメント・プログラム」に参加している家具製造会社のMupapa Wood社が、大阪・関西万博のザンビアブースに自社製品を出展することが決まったのです。同社創業者でCEOのChande氏に聞くと「エンパワメント・プログラムを通じてカイゼンや経営ノウハウを学び、生産性や品質面ですぐに成果が現れた。自社製品の評価が高まったことで結果的に万博への出展にも繋がった。JICAを通じて世界と繋がることができた」と笑顔で語ってくれました。今後は日本を含む海外市場で自社製品を出せるよう競争力を高めたいと語る同氏の熱量溢れる語り口に私もエネルギーをもらったような気持ちになりました。
大阪・関西万博ザンビアブースに展示されているMupapa Wood社のソファセット
Mupapa Wood社ショールームで自社製品を説明するChande氏
ザンビア経済は銅を中心とした鉱業に依存しており、製造業は産業多角化に向けた政府の重点産業の一つです。また、雇用吸収力が比較的高い製造業は若者の雇用の受け皿としての役割も期待されます。そのため、前述のエンパワメント・プログラムは、製造業、特に成長の潜在力がある中小企業を対象に、研修やワークショップを通じて企業の経営能力を強化し、成長を後押ししてきました。2024年4月のプログラム開始以来、対象企業30社全体で100名以上の新規雇用を創出し、約100万クワチャ(約600万円)を超える増収を実現するなど、具体的な成果を上げています。
このプログラムの中で特に評判が高かったのが、Kaizen Institute of Zambia(KiZ)によるカイゼン・トレーニングです。KiZは2014年にJICAの協力を契機に設立されたカイゼンに特化したコンサルティング・サービスを提供している公共団体で、JICAはKiZの立上げやスタッフの育成にも協力してきました。エンパワメント・プログラムでは、JICAが橋渡しをする形でKiZのカイゼン・トレーニングを盛り込み、参加企業への支援を充実化させました。これによりKiZはプログラムを通じて事業範囲を広げることができ、またJICAは協力成果の拡大に繋げることができました。今回のトレーニングを通じてKiZと中小企業開発省の関係も強化され、同省管轄の産業団地でカイゼン・プログラムの導入が計画されるなど、新たな連携も生まれつつあります。参加企業、KiZ、JICA、中小企業開発省にとって、いずれもメリットのある取り組みで、JICAが単なるパートナーの枠に留まらず、様々な関係者を繋ぎ、更なる展開を促す触媒のような役割を果たしたといえます。
カイゼン・トレーニングの様子
エンパワメント・プログラムでは本邦スタディツアーも実施。写真は東京都内の製粉会社を訪問したときの様子。
JICAのザンビアにおける民間セクター開発の取り組みには、ザンビアと日本のビジネス交流の促進も含まれます。ザンビア政府は海外からの投資誘致に力を入れていますが、日系企業の進出はまだ限られているのが現状です。そこで、私たちはJICAの現地ネットワークを活用して日本・ザンビア双方のビジネス関係者を繋げ、協業の可能性を探る機会を提供できないかという考えから、2024年10月、農産物・農産加工をテーマにした日系企業向けビジネススタディツアーを企画・実施しました。このツアーには日系企業5社から7名に参加いただき、農家サイトの視察や異業種交流会などを行い、参加企業のみなさまから、現地ネットワークを活かした視察先のアレンジやマッチング機会の提供について高い評価をいただきました。中には、現地パートナー企業を見つけて事業化に向けた準備を進めている企業もあり、今後のビジネス展開が期待されます。
このツアーはザンビア事務所として初めての試みで、試行錯誤しながら準備を進めましたが、JICAが当地で有する関係者とのネットワークが強みの一つであることを再認識するとともに、そのネットワークを活用することで、両国のビジネス交流に繋げられることを確認できた貴重な機会となりました。引き続き、25年度も同様のツアーを企画し、ザンビアと日本のビジネス交流を働きかけていきたいと考えています。
ビジネスツアーの異業種交流会で熱心に意見交換する日ザ双方の参加者
ザンビアの人口は現在約2,000万人ですが、国連の見通しでは2050年頃には4,000万人を超えると予測されています。経済規模が拡大を続けることに加え、南部アフリカ地域、アフリカ全体が一つの経済圏として結びつきを強めようとしている中で、周辺8か国と接するザンビアは南部アフリカ地域の産業の中心地として発展する可能性も秘めています。私たちは、これまで培ってきた協力経験やネットワークを最大限に活用し、ザンビアと日本、世界を繋ぐ架け橋としての役割を果たしながらザンビアの民間セクターの発展を後押ししていきます。
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