嵐のただ中で ― 戦時下のウクライナでJICAと共に歩む


2025.09.29
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- ウクライナ事務所 (NS)Aliona Tkach portrait
戦時下の最も暗い時にも、希望は訪れます。JICAは、ウクライナの復旧、復興、そして未来への信頼を支えています。それは単なる援助ではなく、パートナーシップ、使命感、そして揺るがぬ決意です。【写真:筆者アリオナ・トゥカチェ】
キーウ市街の破壊されたビルとレスキュー隊
戦争がどのようなものなのかは、間近で見て初めて実感できるものです。
JICAウクライナ事務所の一員として、私は一夜にして辺りが瓦礫と化した場所に立ち、電気のない中で治療を続ける病院を訪れ、素手で生存者を救い出すしかなかった市長たちの話を聞きました。
それでも、私の心に最も強く残っているのは破壊の光景ではなく、人々の揺るぎない決意です。ウクライナの人々は諦めません。そして、JICAはウクライナに寄り添っています。
電力復旧から重機による瓦礫撤去まで、JICAの支援はコミュニティが立ち直り、生き抜き、再建するための助けとなっています。緊急支援として始まった活動は、今や長期的な命綱へと変わりました。私自身、その一端を担えることを誇りに思います。
JICAはロシアのミサイルが送電網を破壊したとき、変圧器や修理用重機を届け、送電を回復させました。
爆撃で建物が崩れ落ちたとき、ブルドーザーやバックホーローダー、防護装備を送り、緊急作業員が安全に瓦礫を撤去できるようにしました。
キーウ市内で瓦礫を撤去する重機
家族が避難を余儀なくされ、学校が閉鎖されたとき、プレハブ住宅を提供し、遠隔教育を可能にし、一歩ずつより良い未来に向けた計画を進めました。
デジタル・ラーニング・センターに供与されたラップトップ
日本はJICAを通して被害の大きいハルキウ、ドニプロ、ヘルソン、ミコライウなどの地域に、数多くの重機や設備を供給してきました。また地雷探知機・除去機も供与しています。それらは単なる機材ではなく、人々の尊厳を回復し、日常生活を取り戻すための道具なのです。
大型地雷除去機
戦時下の電力は、単なる便利さではなく、生き延びるためのものです。病院は手術のために、子どもたちは勉強のために、街は水、暖房、そして最低限の治安を維持するために電力を必要とします。
JICAの電力支援は、より戦略的なものへと進化し続け、ウクライナの最も差し迫った電力ニーズに対応しています。ミサイル攻撃で破壊された変圧器、インフラを復旧するための特殊車両、暖房の維持に不可欠なガスタービンやヒートポンプの提供などです。資機材の提供にとどまらず、技術的知見の共有や長期的な助言も行い、ウクライナが将来に向けて、より強靱で持続可能な電力ネットワークを構築できるよう支援しています。
電力施設の分散に役立つ小型発電機
この数年、ウクライナはこうした支援と現場の粘り強さによって、冬季の大規模な電力施設への攻撃を耐え抜いてきました。しかし状況は依然として深刻で、特に前線地域では常に変電所が攻撃を受けています。
迅速に対応するため、JICAとエネルギー省は予算をリアルタイムで再分配することに合意しました。具体的には、非緊急の項目から、変圧器や緊急修理用重機など最も切迫したニーズへシフトさせる措置です。JICAは、現地のエネルギー企業と継続的な対話を重ねながら、1円たりとも無駄にせず、最も必要とされているところに届くよう努めています。
JICAは刻々と変わるニーズを踏まえ、協力分野を拡大しています。例えば、バリアフリーを考慮した学校や病院の再建、女性の職業訓練、瓦礫リサイクルシステムの導入、ヒートポンプによるエネルギー効率化、そして地方自治体が復興を主導する人材育成などです。
キーウ州ボロディアンカの瓦礫処理ラインと重機
これらは「人々の力を引き出しつつ、より強く、より良い形での再建」が目的です。今日を生き抜くためだけでなく、明日自らの力でより良い復興を主導できるようにするための支援です。
これこそが、日本の価値観に深く根差している点であり、JICAの活動を特別なものにしている理由です。冷静に、着実に、敬意をもって。私たちはインフラだけでなく、人々の自信をも再建します。
私は単なるプロジェクトオフィサーとしてではなく、「目撃者」としてこの話を書いています。私は、この戦争の最悪の日々を見てきました。そして、日本の連帯が最も暗い所に光をもたらすのを目の当たりにしました。
日本の若いみなさん、国際協力は遠い世界の話のように感じるかもしれません。しかし、ここウクライナでは、それはとても身近な現実です。
幼稚園の中庭を片付ける掘削機。ミサイルの脅威に怯えて暮らす老夫婦の家に電気を届ける変圧器。停電中に子どもの手術を終えるための発電機。これらが国際協力の具体的な姿です。
ヒートポンプを提供したキーウ州ボリスピルの幼稚園の園児から歓待を受けるJICA川村理事
JICAで働くということは、単なる仕事ではありません。もっと大きな何かの一部となることです。それは「魂のこもった奉仕」です。
戦争は、本当に大切なものを明らかにします。そして、私たち自身の本質を映し出します。JICAを通して、日本はウクライナに「寛大さ」だけでなく「友情」を示してきました。この歴史の中で生きる者として断言できます。ウクライナの人々はこのことを決して忘れません。
そして、もしあなたが「自分の仕事は本当に世の中を変えられるのだろうか」と思っているなら、 ぜひ自分の目で確かめてください。
ウクライナは再建の途上にあります。そして日本は寄り添い続けます。
キーウ事務所スタッフ集合写真
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