jica 独立行政法人 国際協力機構 jica 独立行政法人 国際協力機構

ウズベキスタンのすべての人にリハビリテーションサービスを届けるために

#3 すべての人に健康と福祉を
SDGs

2025.10.07

サムネイル
ウズベキスタン事務所 村上穰嗣

ウズベキスタンではリハビリテーションを必要としている国民が年間100万人いると推定されている中、リハビリテーションを受けられる人数は年間で3万人弱です。本ブログでは、当課題を解決するためのJICAの取り組みを紹介します。

リハビリテーション制度の現状・課題

日本では、リハビリテーション制度が確立しており、三つの段階に応じてサービスが提供されています。

しかし、ウズベキスタンでは、公的サービスとしてのリハビリ制度が整備されておらず、「急性期→回復期→生活期」といった一気通貫のサービス提供体制がありません。そのため、本来なら社会復帰できるはずの患者が、適切な支援を受けられずに取り残されているのが現状です。たとえば、脳卒中発症後、30日間程度の入院期間中にリハビリが実施されることはほとんどありません。退院時には外来での治療継続を指示されるものの、多くの患者は家族による介護のみ、というのが実態です。

さらに、長期的なリハビリを受けるためには、基本的に障害者認定を受ける必要があり、その認定には少なくとも120日間の障害期間が求められます。これにより、治療を受けることができない「空白の期間」が生じてしまっています。

一方、日本では、基本的に理学療法士がケガや病気などで身体に障害のある人や障害の発生が予測される人に対して、基本動作能力の回復・維持や障害の悪化予防を目的に、運動療法や物理療法(温熱、電気などの物理的手段を用いた治療)を提供しています。これにより、患者が自立した日常生活を送れるよう支援する体制が整っています。しかし、ウズベキスタンには理学療法士の資格が存在せず、既存の看護師などの養成課程においても、専門的にリハビリの知識や技術を習得する教育機関が存在していません。

JOCV(JICA海外協力隊)の取り組み

上記のリハビリ分野の課題解決を支援すべく、JICAは2025年9月までに理学療法士13名、障害児・者支援1名、福祉用具1名 の計15名の海外協力隊を派遣し、今後も、ウズベキスタン政府の要望に応じて継続的な派遣を予定しています。

2025年まで約2年間活動した理学療法士の佐藤加奈さんは、アンディジャン市に新設されたデイケアセンターの開所式に参加した際、ウズベキスタンのミルジヨエフ大統領と面会する機会を得ました。佐藤さんはJICAボランティアとして脳卒中患者のリハビリやケアの指導などを行っていることを、ウズベク語で説明しました。大統領からは、「日本とウズベキスタンの関係を深める活動に感謝する。ウズベキスタンの社会福祉向上のため、このような活動を続けてほしい」との言葉があり、協力隊の活動やリハビリ分野の改善に強い期待が示されました。

国別研修にて課題の理解・解決法を考える

JICAは、ウズベキスタンでの活動に加え、関係者を日本に招いて日本の優れたリハビリを伝えることで現地の課題解決を支援しています。2025年度の国別研修「中央アジア 脳卒中リハビリテーション」では、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン の4カ国から政府関係者や医師、看護師など16名が来日しました。

中央アジア地域では、死因の多くが非感染性疾患によるものあり、特に脳心血管病による死亡率が高くなっています。適切な治療により命を救われた場合でも、脳卒中は脳の損傷により身体機能に障害が残ることや、廃用症候群といわれる長期間の臥床による筋力低下や関節の可動域制限などの症状を引き起こすこともあります。そのため、脳卒中の患者にとって、適時・適切なリハビリテーションは早期離床や社会復帰に影響し、生活の質に直結する重要な介入となっています。

ウズベキスタンの研修員たちは、リハビリテーションの重要性を理解しつつも、母国では未だ適切な提供体制が整っていないという共通の課題を感じていました。そこで本研修では、脳卒中の重症度評価や介助方法、治療などの具体的な内容を盛り込み、実習を多く取り入れることで、より実践的なリハビリテーション技術の習得を目指しました。研修中、研修員たちは積極的にリハビリの方法、装具・器具の使い方などについて質問するなど、日本のリハビリから多くを学ぼうとする姿が印象的でした。また、ウズベキスタンのリハビリ制度の改善に向けて、JICAとの協力をより強化したいという声も寄せられました。JICAは、引き続き、ウズベキスタンのすべての人にリハビリテーションサービスが届くよう、継続的な支援を行っていきます。

杏林大学見学の様子

埼玉県総合リハビリテーションセンター見学の様子

介助技術について実習する様子(杏林大学にて)

作業療法器具を使用している様子(埼玉県総合リハビリテーションセンターにて)

参加者全員集合写真

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