キルギス人と日本人は兄弟?
2026.02.06
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- キルギス共和国事務所、松本太樹
「キルギス」と聞いて何を思い浮かべますか?「何も浮かばない」という方も多いでしょう。私が「キルギスで働いている」と日本の友人に伝えると、少し沈黙したあと「どこにあるんだっけ?」と聞かれることがほとんどです。
キルギスは1991年、旧ソ連から独立した国です。人口約720万人、面積は日本の半分。カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、中国に囲まれた内陸国で、標高3,000m超の山々と、琵琶湖の約9倍のイシククル湖をもつ自然豊かな国です(「中央アジアのスイス」と呼ばれることも)。かつてシルクロードの要衝として栄え、今も遊牧文化が残っています。
首都ビシュケクは、ソ連時代の石造りの建物や英雄像が残る一方、高層マンションやテーマパークの建設ラッシュで人口も増加中。歴史と近代化が交錯する都市です。また、キルギスは60以上の民族が共に暮らす多民族国家。キルギス人が約70%、ウズベク人約15%、ロシア人約6%。ほかにドゥンガン人、ウイグル人、タタール人、カザフ人、タジク人、朝鮮人(高麗人)、ドイツ系、トルコ系など。地方では異文化が交差する光景に国の奥深さを感じます。
キルギスでは、AI画像かと疑うほどの様々な絶景があなたを待っています。人も自然も時がゆったり流れています。おすすめシーズンは5月下旬から8月くらいです。アウトドア好きの方は観光でも是非お越しください!
キルギス遊牧民の伝統的な移動式住居(ボズ・ウイ(Боз үй))
ソンクル湖の夕焼け
魚を愛した兄は東へ行き日本人に、肉を愛した弟はこの地に残りキルギス人になった――そんな逸話が2025年大阪万博のパビリオンでも紹介されました。根拠は定かでないものの、現地でも親しまれているエピソードです。キルギスを訪れた日本人は、現地の顔立ちが日本人そっくりで驚きます。私も街で現地人に間違われ道を尋ねられたことが何度もありました。キルギス人は年長者や客人への礼節を重んじ、家族や仲間を大切にします。こうした価値観は、外見だけでなく日本人にも通じるもの。これこそが「兄弟」と呼ばれる由縁かもしれません。街を歩くと、地理的な距離を感じさせない、不思議な安心感に包まれます。
キルギスはロシア、中国、中央アジア諸国に囲まれています。この地理的条件が国際協力の特徴であり難しさの原因でもあります。経済はロシアへの出稼ぎ送金(注1) に依存し、軍事面でもロシアとのつながりが深い (注2)です。一方、中国は道路やエネルギー、工場などインフラ整備に多額投資し、キルギスは中国への債務も抱えています。JICAが協力する際もこうした関係性を踏まえる必要があります。
もちろん、文化の違いもあります。都市部では開発が進む一方、遊牧文化の名残で地方では外部の技術や制度に抵抗がある場合があります。農業分野では、定住農耕文化がなかったことやソ連崩壊による土地分割の影響で農地が小規模かつ分散しています。水路や灌漑設備も老朽化し、機材・肥料・金融アクセス不足が深刻です。
キルギス政府は外部依存を減らし、自国主導の持続可能な成長を目指し、鉱物資源や製造業、金融・物流、再生可能エネルギー、農業・観光の競争力強化を重点分野とし、インフラ整備やデジタル化、教育改革にも取り組んでいます。JICAキルギス事務所はこうした政策を踏まえ、政府との対話を通じ協力を進めています。活動の様子はInstagram (@jicakyrgyzrepublic)で紹介していますので、ぜひご覧ください。
[農業・村落開発/民間セクター開発]
キルギスの町・タムチのスリッパ作りの様子
羊毛を使ったスリッパ作りに従事する女性たち。一村一品プロジェクトでは、地域資源を活かしながら石鹸、オイル、フィギュア、お菓子などの特産品を育てることで雇用創出と地域の活性化に貢献しています。筆者もスリッパ作りを体験しましたが、なかなかの重労働でした。スリッパは冬でも暖かく、愛用しています。
「灌漑用水路の運用及び維持のための機材整備計画(無償資金協力事業)」で供与されたショベルカー(日立製)。
整然と並ぶショベルカー
「チュイ州市場志向型生乳生産プロジェクト(技術協力)」では、農家に対して乳生産の衛生管理や正しい家畜飼育の方法を教えながら、講師育成にも取り組みました。
チュイ州市場志向型生乳生産プロジェクト
「タラス タラズ道路ウルマラル川橋梁架け替え計画(無償資金協力)」で建設された橋。キルギスと日本の友好の証として「桜橋」の愛称がつけられました。
ウルマラル橋(桜橋)
40名前後のJICA海外協力隊が、教員、理学療法、作業療法、栄養、美容師、IT、卓球など様々な分野で活躍しています。
協力隊の川合隊員と子どもたち
料理隊員
キルギスの伝統楽器「コムズ」を演奏する日本人(上)と、和太鼓を演奏するキルギス人(下)。お互いの文化を理解し、尊重することが国際協力の基本です。
キルギス外交80周年記念イベントの様子
キルギス共和国日本人材開発センター(KRJC)盆フェスティバル
着任から一年半。キルギスを訪れた日本人は例外なくこの国のファンになって帰ります。雄大な自然と人々のやさしさに心を打たれるからです。ソ連から独立してまだ34年、国としては若い存在。大国に囲まれた厳しい環境で、キルギスは自ら未来を切り開こうとしています。その力強い歩みを私たちは日々肌で感じています。JICAはキルギスの良き兄弟としてより多くの人にこの国を知ってもらえるよう、今ある魅力を守りながらも、愛される国として共に発展することを願っています。この記事を読んで、キルギスという名前が少しでも心に残り、興味を持っていただければ幸いです。
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